陰陽師盲愛奇譚

彩月野生

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三章【変わる世界】

五話

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 久方ぶりに己の屋敷に戻った晴明は、ついてきた道満を振り返り、手招いた。
 道満は、困惑しているような素振りでしばらく庭を眺めていたが、晴明に呼びかけられて、やっと座敷にあがった。

 すぐに異様さに気づいたらしく、ぶっきらぼうに問いかける。

「何故、誰も出迎えない? 妻はどうした」
「まあ、それはおいおい話そう」

 道満を尻目に、変わりはないかくまなく部屋中を確認してから、茶でも淹れるかと考えると、そっと戸が開き、男子が入ってきた。

「晴明様、お待ちしておりました」
「ああ。ちょうど良い。茶を頼む。これからは道満殿も一緒に住む為、世話役を頼む」

 道満に目を向けると頷き、音もなく去る。
 式神の様子を見て、問題はなさそうだなと、胸の内で安堵の息を漏らす。

「なるほどな、式神に屋敷を守らせていたのか」
「さよう」
「妙な気配がすると思いきや、式神がわんさかいるな?」
「流石道満殿。式神達は、主を見極める為、座敷に上がるまでは姿を見せぬ。だが、偽物ならば門の前ですぐに追い返す為、間違えるはずも無い」

 その答えに、道満は高笑いをした。

「何かおかしいかな?」
「いやいや。なぜ、私を招き入れたのかと不思議でなあ。奴らは、己を貴様の敵と見なしている筈!」
「敵?」
「そうだ! ハハハッ」 

 これには失笑せざる負えない。
 晴明は声を殺して肩を揺すると、道満は不満を顕にした。

「何を笑う?」
「いやいや道満殿、貴方は勘違いしている」
「何をだ」
「貴方は私の敵になどなれぬ」
「――っ、そ、それは……貴様! 己をいまだに馬鹿にしておるのか!!」

 顔を赤くして激高した道満は、邪気を放ち、部屋中に強い風が吹き荒れる。
 あやうく屋敷が壊れかねないと、晴明は速やかに九字を切り、結界を張った。

 道満はいつも躍起になるので困ったものである。
 真面目に対応するのもつまらないので、少し意地悪をしてやろうと思いつく。

「ああ、確かに! お前は昔から私には要らぬ敵対心を持ち、全く無意味な挑戦や悪巧みばかりしていたからなあ~、いい加減、飽き飽きだ」

 口元を吊り上げて見つめれば、たちまち道満は術を行使して、晴明に突っ込んできた。

「貴様あっ晴明!!」
「破!」
「ぐあっ」

 腹に晴明の放った力を食らった道満は、床に転がり気を失う。
 気概は大したものだが、やはり力比べでは奴は劣る。

 晴明は気を落ち着けて、道満を抱え上げた。
 思うよりも軽い身体に頬が緩む。

 戸が開かれ、茶を持ってきた式神は、特に驚く様子もなく、静かに茶を置いて去った。

 晴明は道満を抱えて、寝室へと向かった。
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