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四章【焦がれを抱きて】
四話
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異空間から戻った英心は、永響と泰正の様子を晴明に話した。
但し、最後に見た光景については隠して。
向かいあう英心と晴明から少し離れた場所に、道満が腕を組み、壁に背を預けている。
状況を聞いた晴明は、頭を振ってため息混じりに答えた。
「なるほど。永響の泰正殿への執着は相当なものだ。これはまずい」
「と、いうと?」
「実は、師匠から秘密裏に文が届いてな、帝が鬼憑きの者達を、永響の元へ送り込もうとしているようだ」
「なっ!? わ、私はどうすれば! はやく泰正を助け出さなければ!」
「焦るな」
注意を促すのは道満である。
彼は一歩前に進み出ると、淡々と語り始めた。
「己が知る帝は、お前達が知る帝とは違う。永響が目の前で泰正を拒絶する様を見なければ、納得しないだろうよ」
「目の前で……?」
「英心殿、泰正殿の心を信じよ。あくまでも姿を隠して成り行きを見守り、危なくなれば、我らが助けに参る」
「……っ」
――本当に、何もせずに、大丈夫なのか!?
瞳を伏せて唇を噛み締めていると、晴明に再び声をかけられて、顔をあげる。
「千景の元には、結縁にいってもらった」
「結縁を?」
「うん。それと、蓮と佐々斬殿にも状況を話し、いざとなれば協力してもらう」
「しかし、佐々斬は……」
口ごもる英心に、晴明が顔を振って笑う。
どうやら話し合ったようだ。
――ならば、これは全て帝のご乱心なのだな。
この後、晴明と話し込み、この先について共に思案した。
事の発端は、泰正に取り憑いた鬼神が招いた、件の異空間に裂け目ができた数年前の出来事。
あの時、帝はなんらかの形で永響と接触し、彼の気を引くために、鬼に憑かれた民を捕まえて家畜同然に扱い、閉じ込めていた。
帝は、いつか晴明に永響が接触するのを待っていたが、泰正が思わぬ事態となり、泰正を利用して、帝に永響がなびくよう仕向けようと考えたが、永響の心は初めから泰正へ向けられていた。
――永響が帝を愛せば、丸く収まるやもしれぬが……。
気を紛らわせる為に、縁側で月を肴に酒を飲む英心は、嫌な予感に苛まれ、酒の味などまるで分からなかった。
その頃、官人陰陽師達は、忠行の指導の元、異空間に渡るために巨大な鏡を用意していた。
傍には狐の面を被っている天照一族の主
緋那と、その式神である紅沙が見守っている。
忠行は、二人に目配せをして、官人陰陽師達に向き直り、声を張り上げた。
「帝も異空間に参られる。何としてでも、我らで帝をお守りするのじゃ!」
「ははっ」
「し、しかし、本当に大事ないのか」 「得体の知れぬ者じゃ。何をしでかすか分からぬぞ!」
忠行は、混乱する彼らを見据えてため息をつく。
――確かに、彼の者は都に負をもたらす可能性は高い。また、あのような嵐が都に起これば、今度こそ魑魅魍魎が溢れかえってしまう。
そうならない為に、密かに様々な陰陽師達と手を組んではいるが、晴明も長く異空間にいた為に、その心身は万全とはいえぬ。
「忠行、大丈夫じゃ」
「緋那様」
「忠行様、私達はこちらで結界を張り、お守り致します」
「うむ」
三人は頷きあい、意思を確かめた。
「用意はできたかの」
「み、帝!」
「贄を連れて参ったぞえ」
いつの間にか帝が戸口から顔をだして、扇子で己を仰ぎながら、笑みを浮かべている。
その後ろには、鬼憑きの者達が虚ろな目つきで佇んでいた。
但し、最後に見た光景については隠して。
向かいあう英心と晴明から少し離れた場所に、道満が腕を組み、壁に背を預けている。
状況を聞いた晴明は、頭を振ってため息混じりに答えた。
「なるほど。永響の泰正殿への執着は相当なものだ。これはまずい」
「と、いうと?」
「実は、師匠から秘密裏に文が届いてな、帝が鬼憑きの者達を、永響の元へ送り込もうとしているようだ」
「なっ!? わ、私はどうすれば! はやく泰正を助け出さなければ!」
「焦るな」
注意を促すのは道満である。
彼は一歩前に進み出ると、淡々と語り始めた。
「己が知る帝は、お前達が知る帝とは違う。永響が目の前で泰正を拒絶する様を見なければ、納得しないだろうよ」
「目の前で……?」
「英心殿、泰正殿の心を信じよ。あくまでも姿を隠して成り行きを見守り、危なくなれば、我らが助けに参る」
「……っ」
――本当に、何もせずに、大丈夫なのか!?
瞳を伏せて唇を噛み締めていると、晴明に再び声をかけられて、顔をあげる。
「千景の元には、結縁にいってもらった」
「結縁を?」
「うん。それと、蓮と佐々斬殿にも状況を話し、いざとなれば協力してもらう」
「しかし、佐々斬は……」
口ごもる英心に、晴明が顔を振って笑う。
どうやら話し合ったようだ。
――ならば、これは全て帝のご乱心なのだな。
この後、晴明と話し込み、この先について共に思案した。
事の発端は、泰正に取り憑いた鬼神が招いた、件の異空間に裂け目ができた数年前の出来事。
あの時、帝はなんらかの形で永響と接触し、彼の気を引くために、鬼に憑かれた民を捕まえて家畜同然に扱い、閉じ込めていた。
帝は、いつか晴明に永響が接触するのを待っていたが、泰正が思わぬ事態となり、泰正を利用して、帝に永響がなびくよう仕向けようと考えたが、永響の心は初めから泰正へ向けられていた。
――永響が帝を愛せば、丸く収まるやもしれぬが……。
気を紛らわせる為に、縁側で月を肴に酒を飲む英心は、嫌な予感に苛まれ、酒の味などまるで分からなかった。
その頃、官人陰陽師達は、忠行の指導の元、異空間に渡るために巨大な鏡を用意していた。
傍には狐の面を被っている天照一族の主
緋那と、その式神である紅沙が見守っている。
忠行は、二人に目配せをして、官人陰陽師達に向き直り、声を張り上げた。
「帝も異空間に参られる。何としてでも、我らで帝をお守りするのじゃ!」
「ははっ」
「し、しかし、本当に大事ないのか」 「得体の知れぬ者じゃ。何をしでかすか分からぬぞ!」
忠行は、混乱する彼らを見据えてため息をつく。
――確かに、彼の者は都に負をもたらす可能性は高い。また、あのような嵐が都に起これば、今度こそ魑魅魍魎が溢れかえってしまう。
そうならない為に、密かに様々な陰陽師達と手を組んではいるが、晴明も長く異空間にいた為に、その心身は万全とはいえぬ。
「忠行、大丈夫じゃ」
「緋那様」
「忠行様、私達はこちらで結界を張り、お守り致します」
「うむ」
三人は頷きあい、意思を確かめた。
「用意はできたかの」
「み、帝!」
「贄を連れて参ったぞえ」
いつの間にか帝が戸口から顔をだして、扇子で己を仰ぎながら、笑みを浮かべている。
その後ろには、鬼憑きの者達が虚ろな目つきで佇んでいた。
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