勘違い側近は王の愛に気づかない

彩月野生

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羞恥の晩餐会

 鉄の扉から姿を見せた男に、幻をみているのかと我が目を疑う。
 歪んだ笑みを浮かべた男は、大股に歩み寄ると、ルシードの首を掴みあげた。
 熱くて無骨な手のひらに力が込められていく。
 あまりの強さに呼吸が苦しくなり、死の恐怖に心臓が爆音を奏でるが、最愛の王の手にかかるなら本望だと、歪な悦びに浸る。

 ――ああ……陛下……私は、幸せです……!

 滲む視界で王が肩を揺らす。
 突然解放されて床に放り投げられ、剥き出しの肌が硬い石床に叩きつけられる。
 全身が打楽器になったかのように震えて痺れた。
 ルシードは呻く事しかできず、王の前に跪く時間を与えられない。

「来い、皆が待っている」
「……み、皆が」

 意味がわからないまま、王に引きずられ、連れて行かれたのは食堂であった。
 それもただの食堂ではない。
 来賓者をもてなす大食堂である。
 王はルシードを片腕に抱えたまま、衛兵を睨みけて扉を蹴り開けた。
 けたたましい音が響いて、ざわついた声が聞こえた。
 王が声を無視して、ルシードを傍らに放り投げて厳しい口調で命令する。

「立て! 皆様に酒を振る舞え!」
「……っ」

 ルシードは、王が何をお望みなのかを理解して、背筋が震えあがった。
 真っ裸のこの男は、王の奴隷であると、他国に知らしめる為であると。
 ざわめく客人達が、口々に王を非難する声を上げているのが聞こえてきた。
 ルシードの胸中には、王を愚弄する虫どもへの怒りが湧き上がり、爆ぜそうになっていた。

 ――敬愛する王を咎めるのは赦さん!

 煮えたぎる感情のままに立ち上がり、客人達に向かって吠える。

「私は陛下直属の奴隷ルシードと申します! 本日は上質な酒と料理をお楽しみ下さい!」

 奴隷の分際で仰々しく言い放ってしまうが、これくらいしなければ王を侮辱された怒りは収まらない。
 早速酒瓶を手に持ち、客人一人一人に盃に注いで回るが、目のやり場に困ると文句を言う者、楽しそうに話かける者、にやにやしながらじっくりと裸体を観察する者など、反応は様々であったが、気にする理由などない。

 堂々と、王の奴隷だと見せつけてやれば良いのだ。

 ほろ酔いの客人達は、少しはこの場の空気になれてきた様子で、王に気さくに語りかける。

「流石、王の奴隷は美しいですな!」
「し、しかし、まさかかつての側近のルシード様とは……」
「いやいや! 美味い酒と料理と美しいお身体を拝見できて、何とも贅沢な時間ですな!」

 どれもこれも丸々太った豚にしか見えぬが、王の面子を保てたのであれば、悪い気はしない。

「ルシード、来い」
「はっ」

 王に呼び付けられ、喜んで走り寄ると、自身の男根がぶるぶる揺れるが、気しないようにして跪く。
 いきなり胸元を蹴られて仰向けにされると、痛みに動揺する暇もなく、全身に酒をぶっかけられて、そのニオイが充満する。
 咳込む間に顔を踏みつけられ、命令された。

「飲め!」
「……う、ぐ」

 床をびちゃびちゃに汚した酒を、這いつくばって舐めろとおっしゃられているのだ。
 王の望みとならば、とさながら残飯を漁る犬のように、顔を床に押し付けてベロベロと舐め始めた。
 舌に広がる濃い味は、もはや何が原材料なのかも認識できず、ひたすら鼻呼吸をしながら舐める。
 高くかかげた尻を強く平手打ちされて、痛みに呻くが舌遣いはやめない。
 食堂は静まり返り、ルシードが酒を舐める水音と呼吸音、王がルシードの尻を叩く乾いた音が響いていた。

 王がようやく尻叩きを止めた瞬間、下半身に衝撃を受けて、思わず床から顔を離して絶叫する。

「いたい!! あづいいいっ」

 尻穴に何かを突っ込まれたのだ。
 しかも腹の中に液体が溜まっていく。
 酒を尻穴から飲まされている事実に、ルシードは目を見開いて叫び続けた。

「ああああああっ!!」
「うるさい奴隷だ……しかも浅ましくもイクとはな!」

 グチュグチュ……!

「あぎぃいいっ」

 尻穴に酒瓶を突っ込まれたまま、腹が酒でパンパンの状態で、後ろから睾丸とペニスを、靴先で小突かれる痛みと快感に泣き叫ぶ。

 ――いたいいっぎもぢいいいっ!!

 腰が痙攣してまたもや絶頂すると、精液を飛び散らし、床の酒と混じり合う。

「またイッたか! はしたない奴だ!」
「……も、しわけ…あり、ませ……」

 うつ伏せで酒と精液の中に倒れ込み、喘ぎながら謝るも、王は苛立ちのままに声を荒げる。

「もういい! 下がれ!」
「…は、はひ」

 王に去れと言われたのだから、早々に出ていかなければ。
 ルシードは尻穴に酒瓶を突き刺したまま、床を這いつくばりながら、食堂から出て行った。
 衛兵達の唖然とした顔と軽蔑の眼差しに、羞恥心が蘇り、唇を噛みしめると、こらえきれない涙が溢れてきた。

 ルシードの魂に屈辱が刻まれていく。

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