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力の代償
魔狼といわれるこの青い獣は、ランヴァルドが昔戦場で戦い打ち倒してから交友があるのだという。
この獣の体液や精液を飲むと、その能力を授かることができるのだ。
「どんな炎でも自在に制御できる力……」
リュカは体の変化はとくに感じず、不信感を持つがランヴァルドはディランに会えばわかると断言するので信じる事に決めた。
ランヴァルドに促されるまま、向かいあう形で馬車に乗り込み、腹に手を当てる。
本当に力を得られたのだろうか。
ユーディアに着けば、明白になるのだが、リュカには果たさなければならない約束があった。
無言でほくそ笑むオークの将軍に、リュカは魔狼と交わった時を思い出す。
ユーディアから離れて10日が経っていた。
その間に何があったのかを、ディランに話さなければならない。
門番の兵士によるとディランは城の地下室から移され、結界が張られた自室にこもりきりだという。
リュカは王の元に顔を出した後、許可をもらいやっとディランと会うことができた。
結界越しだが、ディランは確かにリュカを見ている。
「ディラン、確かめたい事があるんです」
「リュカ?」
明らかに疲労している姿に、胸が痛む。
そっと結界に手を伸ばすとディランが壁際に後ずさる。
リュカは手首に着けた腕輪を見せると笑ってみせた。
それは、ランヴァルドから貰い受けた魔力を防御する腕輪だ。
ディランの力は一時的にしかしのげないらしく、不安は残るがゆっくりと歩み寄る。
「……落ちついてますね」
「苦しくないのか」
「この腕輪の力だけじゃないです」
そっと顔を寄せて――唇を重ねた。
リュカが脳内で"静まれ"
と念じると体が冷えていくのを感じた。
――怖い。
急に肉体が氷の世界に閉じ込められたかのように冷気に包まれる。
唇を放すと足元からぐらつき、全身から力が抜けていく。
ディランが背中を支えてくれなければ立っていられなかった。
「リュカ、大丈夫か」
「だ、大丈夫。それより、何か感じませんか?」
術をうまく発動させたならば、ディランの力は制御できた筈。
リュカの問いかけに、ディランは掌を広げて拳を作り首を傾げる。
「……まさか、炎の魔力がおさまったのか」
「良かった!」
うまくできた。
喜びを素直に口にすると、リュカはディランに抱きつこうとしたが、背後から肩を掴まれて妨害された。
「あっ」
「その前に、話さなければならない事実があるだろうリュカよ」
「貴方は」
リュカを引き寄せて腰に腕を回すオークの将軍を、ディランが驚いた様子で見据える。
――そうだ、伝えなければならない。
「どうした」
「……っ」
頭では分かってはいるのに、リュカはどうしても言葉を吐き出せず、目を伏せて唇を噛みしめた。
「もういい。ディランよ良く聞け」
「何をだ」
リュカは思わずランヴァルドの腕を掴み止めようとするが、遅かった。
「リュカは魔狼の子を宿し産み落とした。そして、これから俺の子を宿してもらう」
息を飲む声はディランのもので、リュカは……やはりその顔を見る勇気は持てなかった。
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