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第四章【聖と闇の舞踏】
第15話〈ぶつかりあう聖なる意思〉
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グラストンベリーへ向かって、歪の教会はつきすすむ。
刀を奪われた夕都は、自らの力のみでマッテオに立ち向かおうとするが、朝火の体力消耗がひどく、傍をはなれるわけにはいかない。
だが、十分に龍主としての力を発揮することはできる。
教会には、数多のレイラインの力が集まるのを魂で感じた。
朝火を片腕でささえながら、もう片方の手を宙にかざせば、あふれるばかりの聖なる力が集まる。淡い光は、マッテオのミカエルの光により相殺されてしまう。
「やっぱり、レイラインの力はあいつに有利か」
「龍主よ、貴方も私の思想には共感するところはある筈だ」
「何だと?」
「……夕都、きくな」
朝火が忠告するが、マッテオの言葉は夕都の魂にひびきわたり、しみこんでいく。
目の前には、黄金が広がる。
受肉し、人々の生活を見守った遠い日々。
皆、自然と共に生きていた。
そこには、自然と人の共生が息づき、天地は近く、心の闇など存在しなかった。
――あの頃に戻りたい。
ふいに浮かんだ想いに目を見開く。
マッテオが肩をすくめて翼をはばたかせると、目前におりたつ。
目を見つめられて、すいこまれるような錯覚を覚えた。
顔を両手で包まれ、その温もりにぼんやりとする。
脳内に甘やかな言葉が響いた。
“あの頃に戻れば、苦痛は消え去るだろう”
「……苦痛?」
“そうだ、人の寿命が伸びれば伸びるほど、人は欲望をいだく。その欲望が争いを生み出し、貴方はずっと苦しんできた。朝火を道連れにして”
「そうだ」
朝火に目をやる。朝火は、姿を変えても、いつも、夕都に付き従って、その命を燃やし尽くしてきた。
今もこうして傍らで心身を疲弊させている。朝火の瞳が夕都を見つめた。
視線を交わすと、朝火は唇をかみしめて頭を振る。
マッテオの言葉をきくな、という意味だろう。
こんなやり取りをしている間にも教会は、空を滑るように行く。
空は朱色に染まり、教会が不気味に浮かび上がる。
その光景をニュースで見守るのは、世界各国の人々。
夕都の脳裏に広がるのは、人々が奇妙な光景を固唾をのみ見つめている姿。
「マッテオ!」
朝火を横たわらせ、全身に力を込めると、両手を振り上げて解き放つ。
当然、そんな真似が通じるはずもなく、薙ぎ払われたが、マッテオはほくそ笑み、刀を使って力を霧散させてしまう。
夕都は歯噛みしてもう一度、力をはなつ。金色の光同士がぶつかりあう。
夕都はマッテオのミカエルの力を、スサノオの力にてどうにか押し返す。
マッテオは、羽をはばたかせ、刀を振り上げてさらに力をそそぐ。
「させるか!!」
夕都は両手をかざして力をめいっぱい解放させた。
すさまじい金色の光が溢れて、かがやきに目をつむる。ミカエルの強き力、夕都の力と意志がぶつかりあう。
甲高い音がなりひびき、めまいがする。
「夕都……」
「朝……火、心配するな」
お互いの声はかすれて小さいが、確かに心は通じた。
手をつなぎ、朝火の感情が力に交わり、増幅する。
夕都は気合をいれた声を発して気力を振り絞った。
火の玉のように教会は空を切り裂く。
轟音がひびきわたり、近隣の住民達は避難しつつも、その異様な光景に神秘的なものを感じている様子だった。
脳裏に浮かぶ人々のさまざまな反応を見つめる夕都は、彼らに危害が及ばぬようつい加減をしてしまう。
その瞬間、マッテオの力に押されて朝火が苦痛に顔を歪めた。
「朝火!」
「油断、するな」
「分かってる!」
「龍主、遠慮は無用だ。彼らは尊き贄となるのだから」
「ぬかせ!」
精一杯の虚勢ではあるが、力は確かに漲るのを感じる。
全身全霊で、力を出し切る……!
龍主、スサノオ、否、ひとりの人間として。
「お前の思想には決して賛同できない!! 人の命を弄ぶ真似は俺が赦さない!!」
「良い目だ」
マッテオは刀を振り回し、金色の力を溢れさせた。
「わっ」
あまりにもすさまじい力に押されたために、夕都は朝火と共に石床に背中からたたきつけられる。
薄く開いた視界に、朝火が石壁まで這いずり、刀を引き抜く姿が見えた。
天井にて力を駆使するマッテオは、笑みを見せて、切っ先を突きつけながら飛び込んでくる。
「夕都に手出しはさせない!」
「素晴らしい忠誠心だ」
刃がぶつかりあった衝撃音が、鼓膜を震わせた。
「朝火!」
素早い身のこなしで朝火はマッテオと剣をかちあわせる。
火花を散らして、風のように二人は刃を交え、教会の中を縦横無尽に駆け巡っていく。
夕都は痺れる身体にどうにか力をこめて、胸中でルーナにかたりかけた。
“ルーナ……きいてくれ、歌のちからを朝火に”
“きこえてるわ夕都、もうすぐグラストンベリーよ、近づいたら、私達の力を解放するわ”
その言葉に、夕都は口もとをほころばせた。
拳をふるわせて、朝火に向かって叫ぶ。
「負けるな朝火!!」
刀を奪われた夕都は、自らの力のみでマッテオに立ち向かおうとするが、朝火の体力消耗がひどく、傍をはなれるわけにはいかない。
だが、十分に龍主としての力を発揮することはできる。
教会には、数多のレイラインの力が集まるのを魂で感じた。
朝火を片腕でささえながら、もう片方の手を宙にかざせば、あふれるばかりの聖なる力が集まる。淡い光は、マッテオのミカエルの光により相殺されてしまう。
「やっぱり、レイラインの力はあいつに有利か」
「龍主よ、貴方も私の思想には共感するところはある筈だ」
「何だと?」
「……夕都、きくな」
朝火が忠告するが、マッテオの言葉は夕都の魂にひびきわたり、しみこんでいく。
目の前には、黄金が広がる。
受肉し、人々の生活を見守った遠い日々。
皆、自然と共に生きていた。
そこには、自然と人の共生が息づき、天地は近く、心の闇など存在しなかった。
――あの頃に戻りたい。
ふいに浮かんだ想いに目を見開く。
マッテオが肩をすくめて翼をはばたかせると、目前におりたつ。
目を見つめられて、すいこまれるような錯覚を覚えた。
顔を両手で包まれ、その温もりにぼんやりとする。
脳内に甘やかな言葉が響いた。
“あの頃に戻れば、苦痛は消え去るだろう”
「……苦痛?」
“そうだ、人の寿命が伸びれば伸びるほど、人は欲望をいだく。その欲望が争いを生み出し、貴方はずっと苦しんできた。朝火を道連れにして”
「そうだ」
朝火に目をやる。朝火は、姿を変えても、いつも、夕都に付き従って、その命を燃やし尽くしてきた。
今もこうして傍らで心身を疲弊させている。朝火の瞳が夕都を見つめた。
視線を交わすと、朝火は唇をかみしめて頭を振る。
マッテオの言葉をきくな、という意味だろう。
こんなやり取りをしている間にも教会は、空を滑るように行く。
空は朱色に染まり、教会が不気味に浮かび上がる。
その光景をニュースで見守るのは、世界各国の人々。
夕都の脳裏に広がるのは、人々が奇妙な光景を固唾をのみ見つめている姿。
「マッテオ!」
朝火を横たわらせ、全身に力を込めると、両手を振り上げて解き放つ。
当然、そんな真似が通じるはずもなく、薙ぎ払われたが、マッテオはほくそ笑み、刀を使って力を霧散させてしまう。
夕都は歯噛みしてもう一度、力をはなつ。金色の光同士がぶつかりあう。
夕都はマッテオのミカエルの力を、スサノオの力にてどうにか押し返す。
マッテオは、羽をはばたかせ、刀を振り上げてさらに力をそそぐ。
「させるか!!」
夕都は両手をかざして力をめいっぱい解放させた。
すさまじい金色の光が溢れて、かがやきに目をつむる。ミカエルの強き力、夕都の力と意志がぶつかりあう。
甲高い音がなりひびき、めまいがする。
「夕都……」
「朝……火、心配するな」
お互いの声はかすれて小さいが、確かに心は通じた。
手をつなぎ、朝火の感情が力に交わり、増幅する。
夕都は気合をいれた声を発して気力を振り絞った。
火の玉のように教会は空を切り裂く。
轟音がひびきわたり、近隣の住民達は避難しつつも、その異様な光景に神秘的なものを感じている様子だった。
脳裏に浮かぶ人々のさまざまな反応を見つめる夕都は、彼らに危害が及ばぬようつい加減をしてしまう。
その瞬間、マッテオの力に押されて朝火が苦痛に顔を歪めた。
「朝火!」
「油断、するな」
「分かってる!」
「龍主、遠慮は無用だ。彼らは尊き贄となるのだから」
「ぬかせ!」
精一杯の虚勢ではあるが、力は確かに漲るのを感じる。
全身全霊で、力を出し切る……!
龍主、スサノオ、否、ひとりの人間として。
「お前の思想には決して賛同できない!! 人の命を弄ぶ真似は俺が赦さない!!」
「良い目だ」
マッテオは刀を振り回し、金色の力を溢れさせた。
「わっ」
あまりにもすさまじい力に押されたために、夕都は朝火と共に石床に背中からたたきつけられる。
薄く開いた視界に、朝火が石壁まで這いずり、刀を引き抜く姿が見えた。
天井にて力を駆使するマッテオは、笑みを見せて、切っ先を突きつけながら飛び込んでくる。
「夕都に手出しはさせない!」
「素晴らしい忠誠心だ」
刃がぶつかりあった衝撃音が、鼓膜を震わせた。
「朝火!」
素早い身のこなしで朝火はマッテオと剣をかちあわせる。
火花を散らして、風のように二人は刃を交え、教会の中を縦横無尽に駆け巡っていく。
夕都は痺れる身体にどうにか力をこめて、胸中でルーナにかたりかけた。
“ルーナ……きいてくれ、歌のちからを朝火に”
“きこえてるわ夕都、もうすぐグラストンベリーよ、近づいたら、私達の力を解放するわ”
その言葉に、夕都は口もとをほころばせた。
拳をふるわせて、朝火に向かって叫ぶ。
「負けるな朝火!!」
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