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Chapter12: 星の数ほど
しおりを挟むエリファスとセシルは、ゴブリンキングの巣がある森の最深部へと足を踏み入れた。周囲の木々が腐り始め、空気は異臭を放ち、ゴブリンの咆哮が低く響き渡る。
「…来たぞ。セシル、準備はいいか?」
エリファスは、背中の大剣を抜き、巨大な刃先を地面に突き立てた。バルク体型の全身の筋肉が隆起し、戦闘態勢に入る。
セシルは一歩後ろに下がり、優雅に微笑んだ。
「もちろんです、エリファス。派手に行くのが好きだと言ったでしょう?」
セシルは両手を広げ、濃い青の瞳を閉じた。そして、彼の足元から、地水火風雷光闇、全属性の魔方陣が同時に、かつ完璧な比率で展開された。七色が重なり合うその魔方陣は、この世のものとは思えないほど美しく、そして恐ろしいほどの魔力を放っていた。
「パルフェ・ノヴァ」
セシルの両手の掌に、七色の魔力が収束し、小さな光球となる。次の瞬間、その光球は巨大な虹色の奔流へと変わり、ゴブリンの群れが蠢く森の奥へと解き放たれた。
虹色の奔流は、森を薙ぎ払い、ゴブリンの群れを一瞬で蒸発させた。地、水、火、風、雷、光、闇、全ての魔法属性が相互に作用し、単一属性の魔法では到達し得ない圧倒的な制圧力を発揮した。森全体が、一瞬の間に浄化されたかのように静まり返る。
「…な…」
エリファスは、思わず声を失った。一人の魔法師が放ったとは思えない、世界を塗り替えるほどの破壊力だ。ゴブリンキングは、その魔力の中心で、跡形もなく消滅していた。
「ふう。これで一掃ですね。王の気配も消えました」
セシルは、何事もなかったかのように微笑み、魔法を解いた。彼のドレスシャツは乱れ一つなく、呼吸も穏やかだ。まるで、ただの挨拶をしただけのように。
エリファスは、その規格外の実力を目の当たりにし、昨夜の情事が、この男の持つ世界の理をも超越した力のほんの一側面でしかないことを悟った。
「…君は、本当にAランク冒険者なのか? 賢者どころか、神に等しいのではないか」
セシルの力は、エリファスが持つ戦闘スキルとは次元が違う。この男が、自分の快楽のために、報酬なしで命を賭けているという事実が、さらにエリファスの独占欲を刺激した。
「しかし、これでは討伐証明が…」
ゴブリンの討伐証明は耳を切り落とし持ち帰る事である。セシルはゴブリンを蒸発させてしまったのだ。
「ふふ。そのあたりは抜かりありませんよ」
セシルは微笑むとパチンと指を鳴らす。突如セシル達の足元にボトボトと大量のゴブリンの耳が落ちてきた。
「なっ!?」
「パルフェ・ノヴァを放つと同時に全てのゴブリンの片耳に結界魔法を貼り、風魔法で切り落としました。その後直ぐに無限収納に収納したんです」
エリファスは、足元に積み重なったゴブリンの耳の山を呆然と見下ろした。完璧な殲滅力と、その後の完璧な証拠収集。この賢者の思考と能力は、常人の理解を遥かに超えている。
「…君は、本当に全てが完璧だな。そして、その完璧さで、自分の体を賭けている。理解できん」
エリファスは、その狂気的な矛盾に、逆にセシルという存在への執着を強めた。
「俺にとっては、全てを賭けるに足る快楽なんですよ。ね、エリファス」
セシルは、獲物を前にした子供のような無邪気な笑みを浮かべた。その青い瞳の奥で、再び妖しく光るものが、エリファスを射抜いた。
「さあ、帰りましょう。俺、もう待ちきれません」
セシルは、タイトなレザーパンツの股間を指でなぞり、エリファスの征服欲をあからさまに刺激した。
「ふっ…わかった。ギルドに報告終了次第、直ぐに宿を取ろう」
「ご随意に。昨夜に続き、貴方の種で俺の体が完全に満たされるのが待ち遠しいです」
エリファスは、その言葉に耐えきれず、セシルの肩を強く抱き寄せた。
「お前は、俺の最高の獲物だ」
彼はセシルの耳元で囁き、そのまま転移魔法でギルドへ戻るセシルを、ただ力強く見つめていた。その日の夜、エリファスはセシルを抱き潰すことを、心に固く誓った。
ギルドでの報告は、セシルの完璧な討伐証明のおかげで滞りなく完了した。職員たちは、ゴブリンキング討伐という大依頼が、こんなにも早く、しかも無傷で完遂された事実に驚きを隠せなかった。
エリファスは、報告を終えたセシルを半ば強引に抱きかかえ、街の高級宿の最上階を借りた。
セシルは抵抗しなかった。むしろ、エリファスの荒々しい行動を、濃い青の瞳で楽しんでいるようだった。
エリファスは、セシルの細い体躯に覆いかぶさると、胸元を大きく開いたシャツの襟を、一気に引き裂いた。純白の布が、ビリッという音と共にセシルの身体から剥がれ落ちる。
「……乱暴ですね」
セシルは息を飲むが、その瞳は期待の色に満ちていた。
「乱暴でなければ、君を満たせぬだろう。俺が飽きるまで、君の報酬は俺の種だと言ったな。この契約、今夜も継続だ」
エリファスは、自らの服も一気に脱ぎ捨てる。バルク体型の肉体が露わになり、その股間にぶら下がる巨根が、セシルの青い瞳に映った。勃起したそれのサイズは、昨日口内で味わった記憶を、セシルの喉奥に鮮明に蘇らせた。
「ええ。お待ちしていました、支配者様」
セシルは、挑戦的な笑みを浮かべ、自らタイトレザーパンツのファスナーに手をかけた。
「…自分で脱ぐな。それは俺の役目だ」
エリファスは低く唸ると、セシルの手を押しのけ、ファスナーをゆっくりと下ろした。タイトな革が、セシルの細い腰を滑り落ちる。セシルの股間は、昨夜の精液が洗い流された後も、エリファスの再度の侵入を待つかのように、熱を持っていた。
「綺麗だな。…まるで、俺の種を待つための、宝石箱だ」
エリファスは、セシルの艶かしい肢体を愛でるように撫で、その膝を力ずくで開かせた。
「昨日の続きだ。二度と立ち上がれないほど、俺の存在を焼き付けてやる」
その夜、エリファスの独占欲と、セシルの「生」への渇望が、宿の最上階で再び激しく燃え上がった。巨根がセシルの奥深くまで侵入し、絶叫と喘ぎが、静かな夜の街に溶けていった。エリファスの粘り強い遅漏体質と、セシルの巨根を求める嗜好が、彼らの夜を永遠に続くものへと変えていった。
翌朝、エリファスが目覚めるとセシルは身支度をしていた。
「セシル、何をしている? 俺はお前を」
「エリファス、誰が誰を支配するって?」
セシルのその言葉は、まるで夜明けの澄んだ空気の中で響く、冷たくも美しい響きだった。
エリファスは、その黒い瞳を大きく見開いた。一晩中、自分の規格外の力と種で、この美貌の賢者を完全に支配下に置いたつもりでいた。全身の関節を軋ませ、意識を奪うほどの快楽を与え続けたのは、紛れもなく自分だ。しかし、今、この男の瞳に宿っているのは、征服された者の瞳ではなく、最高の獲物を手に入れた狩人のそれだった。
「……貴様、誰に口をきいている」
エリファスの声は低く、喉の奥で唸るようだった。怒りというよりも、自らの支配の構図が揺らぎ始めていることへの苛立ちが、その声に滲む。セシルは優雅に微笑んだまま、エリファスの太い腕に頬を寄せた。
「…俺の体は俺のものですよ、エリファス」
セシルの生暖かい視線が、エリファスの背中をゾクリと冷やす。
「昨夜は本当に最高でした。貴方のような巨根の持ち主は、この世界でも本当に希少です。三度目の絶頂で、俺は『生』を実感する渇望を完全に満たされましたよ」
セシルはそう言い、昨夜の快感を物語るように艶めかしく濃い青の瞳を細めた。
「けれど、渇望は一時的なものです。一度満たされれば、また新しい『刺激』を探さなければならない。貴方の種は素晴らしい。けれど、この世には星の数ほどの男が居る。なのに何故ひとりから種をもらい続けなきゃならない?そんなの、勿体ないでしょう?」
その言葉は、まるで最高級の美術品を、一度飾ったら終わりだと断じるかのような、冷徹な美しさに満ちていた。セシルにとって、エリファスの肉体と種は、『生』を実感するための道具でしかない。目的を達成すれば、次の「最高」を探すのは当然の行為だ、と言っているのだ。
「ふざけるなッ!」
エリファスは瞬間的に立ち上がり、寝台が軋む音と共に、セシルの細い手首を力任せに掴んだ。彼の怒りと、裏切られた征服欲が、そのバルク体型から、獣のような威圧感を放つ。
「俺の種で満たされながら、よくそんな口が叩けるな!貴様は、昨夜、俺の支配を望んだ!俺の存在を、体に焼き付けろと言ったはずだ!」
セシルの手首は、エリファスの強大な握力によって、今にも砕けそうに細く見えた。しかし、セシルの表情には、一切の恐怖の色がない。むしろ、その激しい怒りこそが、彼が求めていた『強い男』の姿だった。
「ええ、望みました。そして貴方は、期待以上の快楽をくれました。だから、俺は満たされた。それだけの話です。俺は、貴方の『モノ』になるという契約をしたわけではない」
セシルは優雅に身支度を整え、胸元が開いたドレスシャツとタイトレザーパンツ姿でエリファスを真っ直ぐに見つめた。彼の着替えの動作が、ノーインナーであることを改めて意識させ、エリファスの股間の巨根を熱くさせた。
「貴方は、俺の『趣味』の対象です。最高の相手ではありますが、唯一の相手ではない。貴方の独占欲を満たすために、俺の『生』の実感を諦める必要はないでしょう?」
その徹底した自己中心的な論理、そしてエリファスの最大の弱点である『独占欲』を真正面から突きつける美貌に、エリファスは言葉を失った。
「…貴様は、本当に狂っている。」
「ええ。貴方を満足させた狂人ですよ」
セシルは捕まれた手首を、優雅に、だが力強く引き抜いた。エリファスはその抵抗に一瞬遅れ、セシルから視線を外すことができなかった。
「では、俺は失礼します」
セシルはそう言い残し、優雅な足取りで部屋の扉に向かった。彼の黒革のタイトレザーパンツが、歩くたびに微かに擦れる音だけが、部屋の静寂を切り裂いた。
「待て!」
エリファスが叫び、立ち上がろうとした瞬間、セシルは扉の前でぴたりと立ち止まり、微笑んで振り向いた。
「忘れていました。貴方が『俺が飽きるまで、君の指名同行の依頼主は俺が独占する』と言った時の契約の真意ですが」
セシルは、彼の濃い青の瞳を、挑戦的な輝きで満たした。
「俺が飽きたら、その契約は無効ですよ。昨日、貴方を『最高』だと感じた俺が、今朝『飽きた』と言っている。それが、契約の全てです」
セシルはそう断言すると、扉を開けて出て行った。彼の背後には、彼の『生』の実感だけが残り、エリファスの『支配欲』は、まるで空っぽの部屋に残された家具のように、虚しく取り残された。
エリファスは、荒い息を吐きながら、寝台に崩れ落ちた。彼の胸中には、セシルという名の規格外の賢者を再び屈服させ、その瞳に『自分のモノ』という絶望的なまでの快楽を焼き付けたいという、猛烈な征服欲が渦巻いていた。
『…面白い。最高だ。あの男は、俺が家を捨ててまで求めていた、真の『獲物』だ』
エリファスの黒い瞳に、獰猛な笑みが浮かんだ。彼の冒険者生活は、今日から『虹魔法師セシルの独占』という、新たな、そして最も困難な依頼へと変貌したのだ。
その後、エリファスがギルドを訪れる頃には、セシルはそのギルドから除籍していた。
了
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