曲者が、曲者の常識で曲者と人を裁く非常識な少女の物語である 題名変えました

さや

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1章 アンジェラス1は転生する

41話 リックお爺ちゃんご飯

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「ーーさんーーしゃよ」

誰だろう。なんか、睡眠を妨げる声が聞こえる。

「ーーしょくじゃよ」

あと、3時間くらい眠っていたい。

「夕食じゃぞい!!」

「ふへ!?」

ビクッと飛び起きると、フェリックスがいた。

「夕食の準備が整ったぞい。」

「あ、もうそんな時間か……」

完全に深い眠りについていた様だ。
涎までしっかり垂らしている。

口元を拭って、一緒に食卓まで足を運ぶ。

「気持ちよさそうに寝ていたが、どんな夢を見たのじゃ?」

「うーん、過去の夢、かな。」

「きっと良い夢を見ていたのじゃな。」

良くは無いが、悪くも無いから取り敢えず頷いておく。

「まぁ、そうだね。」

「ーーと、着いたぞい。」

食卓の扉を開けると、豪勢な飯が並んでいた。

「すごぉい……」

私が居るから腕を振るってくれたのは分かっているが、それでも凄い。

「そう言ってくれると、料理人も喜ぶぞい。」

「謙遜なしにすごいよ。」

宮殿の料理人と、肩を並べられると思う。

「早く席に着いて食べよ!」

裾を引っ張って、フェリックスが早く食べれる合図をしないかウズウズ待つ。

「頂こうかの。」

「うん!」

「「食材に感謝を」」

言葉を言い終えると同時に、フォークをとってローストビーフ、サイコロステーキ、ドリア等々、食べすぎたら普通は太ってしまいそうな物を皿に取って腹に収めていく。

口いっぱいに頬張り、もぐもぐ食べると幸せな気分になることを知っている為、微笑ましく眺められるだけで終わる。

「良い食べっぷりじゃな。」

「ふぁへ、おいふぇいほん!!」

(だっておいしいんだもん!!)

本当に美味しい。宮殿の料理人が作ってくれる弁当も美味しいが、ここも美味しいのだ。
最近は、三公格みつひろかくを会う度にボコボコにしてるからか、残り物の食材ではなく私用に執事やメイド長、料理長が頼むことを許可してくれている。

勿論、国王陛下に会ったことはないが、良い返事を貰っているらしい。

「ふへ~~」

一通り食べ終わり、少し膨らんだお腹をポンっと叩く。
フェリックスよりも、沢山食べたが満足だ。

デザートも甘くて美味しかったし、最高だった。

「すっごく美味しかった~ありがとうっ!」

「ほっほ。素直じゃな。」

「勿論だよ、嘘は、泥棒の始まりって言うでしょ?泥棒はダメなんだから!」

「そうじゃなっ。」

暫く腹を落ち着かせた後に、応接室へ向かう。
紅茶だけ用意してもらい、防音魔法をかける。

「相変わらず、便利な魔法じゃの。」

「まぁね。」

「それで、話とは何じゃ?」

「あのね、一ヶ月後にある模擬戦で私の部隊の人達に魔法剣と魔法を使わせるんだけど、それで貴族達が皆に詰め寄ると思うから牽制して欲しいの。」

「それくらいなら構わんよ。」

「いいの?」

「勿論じゃ。」

「ありがとう。」

「因みに、其方の言う魔法とワシらの魔法は何が違うのじゃ?」

そういえば、まだフェリックスには説明していなかったことを思い出す。

「この世界の魔法は、魔術っていう物で決められた公式……魔法陣を用いてこの世界に存在する妖精から力を借りる物なの。勿論、無詠唱魔法と呼ばれる物は言葉にしないだけで魔術と全く同じなの。」

「ならば、また魔法は別にあると?」

「魔法はね、奇跡に近い物なの。完全にイメージで操る物。だから、人の中にある魔力の消費は必要不可欠。妖精にイメージを移して借りることは出来ないから、自分の中にあるものを使うしかない。それに比べて魔術は他の力を使うから本来なら魔力を消費しないの。まぁ、今は消費する仕組みになっている様だけどね。」

「魔法剣というのは?」

「魔法剣は、予め武器に刻んだイメージを妖精に覗かせて、行使する物なの。妖精はランダムだけど、必ず応えてくれる。」

「それで、赤い宝石を使ったのじゃな。」

「そういうこと。」

特に質問もなく、淡々と話が終わる。

「ではな、最近困ったことはないかの?」

「別にないけど……あ、なんかカイエンの元気がなかったよ。」

「あの家は……」

何か喋り出しそうになったフェリックスの口を両手で止める。

「私は余計なことに足を突っ込まない主義だから話さないで。」

「其方らしいのぉ。」

「面倒事は、避けたいから。」

事情を知ってるだけでも、知らないなんて嘘をついて、知っていることが後でバレても困る。なら、初めから何も知らない方が気は楽だ。

「あ、そうだ。リアストスと鍛治士2人にもあの訓練場に来るように言ってね。折角魔法剣を作ったんだから、使える様になりたいと思うから。」

「そうじゃな。ワシも楽しみにしておる。」

「うん!」

そろそろ就寝時間が近い為、風呂に入ってフェンリルと共に寝た。





ーーその翌朝、何故か息苦しかった。

「う、ん……」

なんだか体が重い。
フェンリルが巨大化したのかと思って、眠気眼で体の上を見てみると、人の足があった。

「?」

隣に目を向けると、伏せられた瞼と腰までの長い黒髪に少女の顔があった。

「!?」

吃驚して、飛び上がるが起きる気配はない。
しかも、後ろではフェンリルではない気配がする。
嫌な予感がして振り向くと、肩までの黒髪で同じく瞼を伏せている青年が居る。

この2人は紛れもなく鍛治士のビオレッタとリオレッダで間違いないだろう。

「なんでこんなところにいるの?」

そして、フェンリルは何処に行ったのだろうか?

辺りを見渡しても見当たらない。

『クレ…ダズゲテ…』

苦しげな声が、枕から聞こえ持ち上げるとフェンリルが追い潰されていた。

「だ、大丈夫!?」

『大丈夫ジャナイ……』

青白く、宝石の様な爪が震えている。
考えるまでもなく、フェンリルがこんな有様になっているのは今、寝ている2人のせいだろう。

「はぁ…」

フェンリルの事を可愛いって言ってたくせに、押し潰すとかどんな神経をしているんだろうか?
しかも、勝手に人の寝室に入ってくるとか非常識にも程があると思う。

「ねぇ、2人とも起きて。」

体を揺さぶる。だが、起きる気配皆無だった。

「……起きない貴方達が悪いからね。」

単なる仕返しに過ぎないが、一応起こしはしたのだ。
そう、起こす呼びかけだけは。

「今から、ちゃんと起こしてあげるよ。」

魔法で、掌サイズの風玉を二つほど作り出す。

そして、背中にそっと忍び込ませる。

「これで準備満タン。」

ーーパチン!

「「ふぇ!?」」

指から音を出すと同時に、2人とも打ち上げられ天井に額が激突した。
痛そうな音がしたが、無断で入ってきたのが悪い。

「おはよう、2人とも。良い夢を見れた?」

「へ?」

「あ……」

ふいっと、勢いよく左右に目を逸らす2人はさすが双子というべきか、全く同じ反応速度だ。

「フェルが押し潰されてたんだけど……」

「「すみませんでした!!」」

とっても綺麗な土下座が、寝台の上で繰り広げられた。

「アンジュ様と寝たくてつい!」

「僕もです!!」

「……リックお爺ちゃんに怒られるの怖くないの?」

フッと笑う声が聞こえた。

「「怒られなれてますから!」」

何故か、誇らしげである。
悪い事をするから、怒られるのであろうに。

「まぁ、もう良いや。フェルも無事だったし……支度をするから出てって。」

首根っこを掴み、強制退場させる。

「フェルは、もう少し寝てて良いよ。ちゃんと寝れなかったでしょ?」

『助カル。』

「大丈夫だよ。」

太股まである桃色の髪を櫛で綺麗に真っ直ぐ梳く。
少し手間のかかる長さだが、世界の意志様からもらった容姿な為、切ることなど許されない。

いつでも切って良いと言われているが、切りたくないのだ。
流石に足首まで伸びた時は、強制的に切られたが、あの時はどれだけ心苦しかったか。

「ふぅ……」

夜着から桃色のワンピース型の寝巻きに着替え、フェリックスが待っているであろう食卓へ眠そうなフェルを頭に乗せて行く。
因みに昨日は、腹が減っていなかった様で胸の中で夕食時は既に眠っていた。

「「おはようございます!」」

さも、偶然あったかの様に話しかけてくるビオレッタとリオレッダ。

「さっき会ったよね……」

「「へへっ」」

褒めてないのに、嬉しそうに笑っている。
良く分からない。そういえば、気を抜けば忘れそうになるが私は獣人から人間代わりに色々と学ぼうと思っているのだ。

だから、少しは中々居ないであろう変人との縁も悪くはないかもしれない。
悪い人達では、無いのだし。

「早く食卓に行くよ。」

「「はい!!」」

元気の良い返事と共に、フェリックスの待つ食卓へ向かった。





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