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2章 アンジェラス1は軍部で活躍します
51話 王族登場
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元の位置に戻ると、フェリックスとリアストスが待っていた。
「国王相手に堂々と問答できて偉いぞい。」
「えぇ、素晴らしかったですよ。」
髪が乱れない様に、頭を撫でてくれる。
「国王が相手でも、言いたいことは言わなきゃね。黙ってたって、何も分かんないもん。」
菓子の乗った皿を受け取り、また食べ始める。
やっぱり、とっても美味しい。
次は、果物が乗ったケーキでも食べようかな、と手を伸ばしたところで男女が中央に集まり出した。
「何が始まるの?」
そう思って、隣にいた2人を見るとリアストスが手を差し出して来た。
「私と踊ってくれませんか?」
「……いいよ。」
手を添えて、ホールの中心へと行く。
フェリックスは、笑顔で私たちのことを見ていた。
「ねぇ、なんでリックお爺ちゃんは踊らないの?」
「ダンスは、婚約者同士か、婚約者のいない者同士、親子、お年寄りは夫人と踊るのです。」
「じゃあ、リックお爺ちゃんは独り身なの?」
「男やもめです。」
「やもめ?」
「夫人に先立たれた男性の事を言うのですよ。」
「へぇ……てっきり独り身だと思ってたよ。」
「公爵家当主は、そうもいきませんよ。政略結婚でしたが、夫婦仲は良好で互いに愛し合っていたと聞きます。」
「息子は?」
「それは……」
何故か、顔を曇らせた。
何か言いにくい事でもあるのだろうか?
「無理に言いたくないなら、言わなくても良いよ。面倒事なら、関わらない主義だから。」
「まぁ、面倒事ではあるでしょう……」
「なら、話さなくて良いよ。リックお爺ちゃんが自分から言わない限り聞かない。」
言わないと言うことは、私が知る必要は無いということだ。
それを無理に聞き出す必要はない。
あくまでも、私とフェリックスは"フェンリルがいる事を黙ってやるから大将軍になれ"と言う脅しに負けただけだ。まぁ、ほとんどの理由は食生活のためだが。
「大して深い関係でもないしね。」
「そうなのですか?」
「うん。」
一見、親子みたいな関係だけど、実際互いに危ない状況になると其々の為に切り捨てることだってあるだろう。
私だって見捨てる。だって、所詮は血の繋がりのないこれからの人生の糧になるだけの存在に過ぎないから。
「まぁ、そんな話は置いといて今から、どんな曲が流れるの?」
「最初は緩やか曲ですね。段々と激しくなって最後は緩くなります。」
「そっか。」
初めは男女の間で、1人分くらいの間を取り頭を下げる。
そして、男性が手を差し出し女性は手を添える。
その後に男性が女性の腰を。女性は男性の肩に手を置き音楽が流れ出す。
「言い遅れましたが、ドレス姿、初めて見ましたがとてもお綺麗ですよ。」
「ありがとう。私もドレスを着るのは初めてなの、寝巻き姿の方が楽だから。」
「ふふ、確かにそうですね。」
「でも、貴方も軍服も似合ってるけど、キラキラしてる服も似合ってるよ。」
「光栄です。貴方が綺麗過ぎて男達は皆釘付けですよ。」
「だから、視線が凄かったの?」
「えぇ。女性も驚いていましたよ。」
「へぇ…そうなんだ……」
だから、敵意が感じられなかったのかと今更ながらに気づく。
一度話しかけてきた相手を断ったが、少し可哀想なことをしたかも知れない。
だが、名前を覚えたくない為、できれば近づかないでほしい事には変わりない。
そんな会話をしながら、ドレスがヒラヒラと揺れる。
マーメイド型だからか、結構踊りやすい。
周りの腰から大きく開いているプリンセス型のドレスは大きく揺れる分、裾を踏まない様に気をつけている様だ。
「そろそろ、テンポが速くなりますよ。」
クルクル回ったりするのは、ここからだろう。同じダンスの繰り返しだが曲に合わせてスピードを変えるらしい。
「ダンスって、面倒だねー。」
「まぁ、城下の方が楽しく自由に踊れますから。」
決まった形のない踊りの方が断然楽しいものだ。
好きな様に動いて、踊って人に見せるためではなく自分が楽しむためだけに踊る。
それが、貴族と平民のダンスの違いだろう。
「そろそろ緩やかな曲に戻りますよ。」
クルッと一回転した後に、ちょうどよく緩やかに戻った。
そして、しばらく揺れる様に足を動かした後、初めと同じ様に頭を下げてフェリックスの元まで2人で戻った。
「ただいま、リックお爺ちゃん。」
「おかえり。2人とも綺麗に踊れていたぞい。」
「リアストスのリードが良かったから踊りやすかったの。」
「なら、よかったです。」
「2人のダンスは美して目立っておったわい。」
「「ふふ。」」
ニコニコ3人で笑って、また食事コーナーへ向かう。
「もう踊らなくても良いんだよね?」
「もう良いぞい。」
「なら、お菓子いっぱい食べないとね!」
早速皿にケーキを盛る。
山盛りにすると味が混ざる為、五つしか乗せられないが無くなったら足せば良いだけの話だ。
「よかったら座って食べませんか?」
「うん。」
いつのまにか、2人も皿に各々の皿を持っていた。
近くの三人掛けの円形机に座り、また食べ始める。
「そういえば、王子が入ってきた時に辺りを見渡してたんだけど、誰を探してたの?」
「さぁ?わからんの。」
「婚約者はいませんし……」
「ふぅん……」
大して興味がある訳でもないから、ケーキを口に含む。
流石に、パーティーでは一口サイズに切って食べている。
「ねぇ、視線ってどうにかならないのかな?」
「無理じゃの。」
「人は綺麗なものに目がいく生き物ですから。」
苦笑いで終わる。
言葉通り、我慢するしかなさそうだ。
「はぁ……」
これじゃ、美味しいものも落ち着いて食べれないよ。そう、思いながらもチョコレートケーキのイチゴを口に含む。
その直後、誰かが真っ直ぐ近づいてくる気配がした。
「敵かな……」
フォークを持ち替え、臨戦状態に入る。
「敵ではないぞい。」
隣にいたフェリックスから、そっとフォークを取り上げられた。
そして、近づいてくるものを待っていると人混みを掻き分けて現れた。
「やぁ、アンジュ。」
にこやかに、他人であるはずの男が話しかけてくる。
確か、この銀髪に紫の瞳をしているミステリアスな男は王様と王妃の一人息子だったはず。
「こんにちは。王子殿下、でも、名前で呼ばないでください、初対面なのにフレンドリーなのは結構ですが、礼儀がなっていませんよ。」
私だって、初対面の人の名前を呼んだりしない。
仲が良くないと興味がないから、笑顔だって振りまかないのだ。
「……」
何故か驚いた顔をした。
周りもざわざわしている。
そして、フェリックスとリアストスは肩を震わせて笑っていた。
「王子の私にそんな事を言う人は初めてだよ。」
「本当のことを言っただけです。」
素直なのは良い事だと、世界の意志様は言っていた。
だから、どんなに辛い事でも嘘はつかない。
「いや、別に良いんだ。きっと悪意は無いだろうから……」
何が面白いのか、涙目で笑っている。
「どこか痛いんですか?医者ならどっかにいると思いますよ?」
涙が出るって事は、辛い事がある証拠だ。
どこか痛かったり、辛いなら医者に見てもらったほうがいい。
「ブフッ!」
もう、耐えきれないとでも言う様に大声で笑い出した。
「アハッ、アハハハ!!」
「何がおかしいんですか?折角、心配してるのに。」
他人でも、話してる相手の心配くらいはする。
勝手に私の関係ないところや道端や廊下で泣いている人を助ける事はないが。
「いや、もう、君、面白いよっ!」
ずっと笑い続ける王子が理解できない。
だから余計に腹が立って、もう話を切り上げて帰ることにした。
「もう帰りますね。そろそろ日が昇るので少し眠くなっちゃいました。」
「あぁ、そうだね。睡眠な大切だ。」
ニコリと笑って、手を振ってくれる王子に渋々ながらも手を振りかえしてパーティー会場を後にした。
「国王相手に堂々と問答できて偉いぞい。」
「えぇ、素晴らしかったですよ。」
髪が乱れない様に、頭を撫でてくれる。
「国王が相手でも、言いたいことは言わなきゃね。黙ってたって、何も分かんないもん。」
菓子の乗った皿を受け取り、また食べ始める。
やっぱり、とっても美味しい。
次は、果物が乗ったケーキでも食べようかな、と手を伸ばしたところで男女が中央に集まり出した。
「何が始まるの?」
そう思って、隣にいた2人を見るとリアストスが手を差し出して来た。
「私と踊ってくれませんか?」
「……いいよ。」
手を添えて、ホールの中心へと行く。
フェリックスは、笑顔で私たちのことを見ていた。
「ねぇ、なんでリックお爺ちゃんは踊らないの?」
「ダンスは、婚約者同士か、婚約者のいない者同士、親子、お年寄りは夫人と踊るのです。」
「じゃあ、リックお爺ちゃんは独り身なの?」
「男やもめです。」
「やもめ?」
「夫人に先立たれた男性の事を言うのですよ。」
「へぇ……てっきり独り身だと思ってたよ。」
「公爵家当主は、そうもいきませんよ。政略結婚でしたが、夫婦仲は良好で互いに愛し合っていたと聞きます。」
「息子は?」
「それは……」
何故か、顔を曇らせた。
何か言いにくい事でもあるのだろうか?
「無理に言いたくないなら、言わなくても良いよ。面倒事なら、関わらない主義だから。」
「まぁ、面倒事ではあるでしょう……」
「なら、話さなくて良いよ。リックお爺ちゃんが自分から言わない限り聞かない。」
言わないと言うことは、私が知る必要は無いということだ。
それを無理に聞き出す必要はない。
あくまでも、私とフェリックスは"フェンリルがいる事を黙ってやるから大将軍になれ"と言う脅しに負けただけだ。まぁ、ほとんどの理由は食生活のためだが。
「大して深い関係でもないしね。」
「そうなのですか?」
「うん。」
一見、親子みたいな関係だけど、実際互いに危ない状況になると其々の為に切り捨てることだってあるだろう。
私だって見捨てる。だって、所詮は血の繋がりのないこれからの人生の糧になるだけの存在に過ぎないから。
「まぁ、そんな話は置いといて今から、どんな曲が流れるの?」
「最初は緩やか曲ですね。段々と激しくなって最後は緩くなります。」
「そっか。」
初めは男女の間で、1人分くらいの間を取り頭を下げる。
そして、男性が手を差し出し女性は手を添える。
その後に男性が女性の腰を。女性は男性の肩に手を置き音楽が流れ出す。
「言い遅れましたが、ドレス姿、初めて見ましたがとてもお綺麗ですよ。」
「ありがとう。私もドレスを着るのは初めてなの、寝巻き姿の方が楽だから。」
「ふふ、確かにそうですね。」
「でも、貴方も軍服も似合ってるけど、キラキラしてる服も似合ってるよ。」
「光栄です。貴方が綺麗過ぎて男達は皆釘付けですよ。」
「だから、視線が凄かったの?」
「えぇ。女性も驚いていましたよ。」
「へぇ…そうなんだ……」
だから、敵意が感じられなかったのかと今更ながらに気づく。
一度話しかけてきた相手を断ったが、少し可哀想なことをしたかも知れない。
だが、名前を覚えたくない為、できれば近づかないでほしい事には変わりない。
そんな会話をしながら、ドレスがヒラヒラと揺れる。
マーメイド型だからか、結構踊りやすい。
周りの腰から大きく開いているプリンセス型のドレスは大きく揺れる分、裾を踏まない様に気をつけている様だ。
「そろそろ、テンポが速くなりますよ。」
クルクル回ったりするのは、ここからだろう。同じダンスの繰り返しだが曲に合わせてスピードを変えるらしい。
「ダンスって、面倒だねー。」
「まぁ、城下の方が楽しく自由に踊れますから。」
決まった形のない踊りの方が断然楽しいものだ。
好きな様に動いて、踊って人に見せるためではなく自分が楽しむためだけに踊る。
それが、貴族と平民のダンスの違いだろう。
「そろそろ緩やかな曲に戻りますよ。」
クルッと一回転した後に、ちょうどよく緩やかに戻った。
そして、しばらく揺れる様に足を動かした後、初めと同じ様に頭を下げてフェリックスの元まで2人で戻った。
「ただいま、リックお爺ちゃん。」
「おかえり。2人とも綺麗に踊れていたぞい。」
「リアストスのリードが良かったから踊りやすかったの。」
「なら、よかったです。」
「2人のダンスは美して目立っておったわい。」
「「ふふ。」」
ニコニコ3人で笑って、また食事コーナーへ向かう。
「もう踊らなくても良いんだよね?」
「もう良いぞい。」
「なら、お菓子いっぱい食べないとね!」
早速皿にケーキを盛る。
山盛りにすると味が混ざる為、五つしか乗せられないが無くなったら足せば良いだけの話だ。
「よかったら座って食べませんか?」
「うん。」
いつのまにか、2人も皿に各々の皿を持っていた。
近くの三人掛けの円形机に座り、また食べ始める。
「そういえば、王子が入ってきた時に辺りを見渡してたんだけど、誰を探してたの?」
「さぁ?わからんの。」
「婚約者はいませんし……」
「ふぅん……」
大して興味がある訳でもないから、ケーキを口に含む。
流石に、パーティーでは一口サイズに切って食べている。
「ねぇ、視線ってどうにかならないのかな?」
「無理じゃの。」
「人は綺麗なものに目がいく生き物ですから。」
苦笑いで終わる。
言葉通り、我慢するしかなさそうだ。
「はぁ……」
これじゃ、美味しいものも落ち着いて食べれないよ。そう、思いながらもチョコレートケーキのイチゴを口に含む。
その直後、誰かが真っ直ぐ近づいてくる気配がした。
「敵かな……」
フォークを持ち替え、臨戦状態に入る。
「敵ではないぞい。」
隣にいたフェリックスから、そっとフォークを取り上げられた。
そして、近づいてくるものを待っていると人混みを掻き分けて現れた。
「やぁ、アンジュ。」
にこやかに、他人であるはずの男が話しかけてくる。
確か、この銀髪に紫の瞳をしているミステリアスな男は王様と王妃の一人息子だったはず。
「こんにちは。王子殿下、でも、名前で呼ばないでください、初対面なのにフレンドリーなのは結構ですが、礼儀がなっていませんよ。」
私だって、初対面の人の名前を呼んだりしない。
仲が良くないと興味がないから、笑顔だって振りまかないのだ。
「……」
何故か驚いた顔をした。
周りもざわざわしている。
そして、フェリックスとリアストスは肩を震わせて笑っていた。
「王子の私にそんな事を言う人は初めてだよ。」
「本当のことを言っただけです。」
素直なのは良い事だと、世界の意志様は言っていた。
だから、どんなに辛い事でも嘘はつかない。
「いや、別に良いんだ。きっと悪意は無いだろうから……」
何が面白いのか、涙目で笑っている。
「どこか痛いんですか?医者ならどっかにいると思いますよ?」
涙が出るって事は、辛い事がある証拠だ。
どこか痛かったり、辛いなら医者に見てもらったほうがいい。
「ブフッ!」
もう、耐えきれないとでも言う様に大声で笑い出した。
「アハッ、アハハハ!!」
「何がおかしいんですか?折角、心配してるのに。」
他人でも、話してる相手の心配くらいはする。
勝手に私の関係ないところや道端や廊下で泣いている人を助ける事はないが。
「いや、もう、君、面白いよっ!」
ずっと笑い続ける王子が理解できない。
だから余計に腹が立って、もう話を切り上げて帰ることにした。
「もう帰りますね。そろそろ日が昇るので少し眠くなっちゃいました。」
「あぁ、そうだね。睡眠な大切だ。」
ニコリと笑って、手を振ってくれる王子に渋々ながらも手を振りかえしてパーティー会場を後にした。
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