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2章 アンジェラス1は軍部で活躍します
53話 知らないよ
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はてさて、私は今、軍服を着て拝見の間にいる。
王宮の一直線に轢かれた色鮮やかな鮮血の様に綺麗な埃ひとつない絨毯の階段の上に見下す獣人が三人。
「大将軍アンジュが参りました。」
フェリックスに習った通りに膝を突き、許可が降りてから立ち上がる。
「今日はよく来てくれた。」
「貴方に逆らったら、面倒な事になるって聞いたので。」
「ほっほ、大方誰が教えたのか予想はつくが、だいたい間違ってはおらぬな。」
「もちろんです。」
フェリックスは、嘘をつかない数少ない信頼できる人なのだ。
「何故、呼び出されたのか心当たりはあるかいの?」
「……昨日のお菓子の食べ過ぎ?」
みんなよりも、デザートたくさん食べたから怒っているのかもしれない。
みんなで分ける為に、用意された者だから。
「ほっほ、相変わらず面白いのぉ。そんなことで怒ったりせんから心配せんで良い、寧ろ、いつも残っているお菓子に手をつけられてシェフが喜んでおったわい。」
どうやら、怒られる心配ははなさそうでホッと息を吐く。
「今日は、其方に謝罪したくて呼んだのじゃ。」
「私にですか?」
全く心当たりがない。
「アードリアのことを謝りたいのじゃ。」
「彼女のことなら、やり返したので謝る必要はありませんし、謝るならアードリア自身が私にするのが、筋だと思いますけど……」
なんで王様が謝るのか分からずに首を傾げると王子や王妃、国王までもが苦笑いをした。
「そうはいかんのじゃ。彼奴の事を推薦し放っておいたのは我らの責任なのだ。それを制裁してくれた其方には感謝しておる。」
「まぁ、アバズレとか心外なことは言われたけど……アードリアは、侮辱されたい変わった性癖を持ってるみたいだから……」
「ブフッ」
なんか変な音が聞こえた。
「そ、其方からするとそう見えたのか……」
「はい。だって人にしたらいけない事は自分もしちゃいけないって子供の頃に習うでしょう?それをしたって事はアードリアも辱めを受けたかったんですよ。でも、なかなか言えずにきっとアバズレって言ってたんです。」
絶対そうに違いないと思う。
「も、もう耐えきれんのじゃ……」
「「「アハハハハハ!!」」」
王妃も含めて、何故か大声で笑い始めた。
なんで、可笑しな事を言ってないのに笑うんだろう?
「ま、まぁ、その事は置いておくとして……取り敢えずアードリアのことは謝らせておくれ。」
「はい……」
そんなに謝りたいなら一応謝罪を受け取る。
「そういえば、今、其方は誰か好きな人はおるかの?」
「フェリックスです。」
「他には?」
「リアストスと私の軍隊の人達が好きです。」
「そうではなく、恋愛方面じゃよ。」
「……居ないです。」
「なら、我の息子なんてどうじゃ?」
王子の方に視線を向ける。
銀髪に紫色の瞳をしたミステリアスな雰囲気を持つ青年。
髪は長く三つ編みを肩からながしている。
「……なんか、作り笑顔が不気味なので遠慮しておきます。」
何考えてるか分からない不気味な笑顔は嫌いだ。
「あと、私はリアストスみたいな人の顔が無難なので、そっちがいいです。」
何を考えてるかも分かり易いから。
そういえば、一瞬驚いた顔をしたものの悪い顔はされなかった。
「そうか、それなら仕方ない。ゆっくり落とすしかあるまいな。」
「よろしくお願いするよ。」
王子がニコリと微笑むと、三つ編みが揺れた。
「因みに、息子の名前は知っているかの?」
「知らないです。」
「ならば紹介しよう。」
「結構です。」
「何故じゃ?」
意味がわからないと、三人とも同じ様な顔をする。似ている容姿なだけあって三人とも、こういう時は分かりやすい。
「私は近しい人だけ覚えられればそれでいいんです。フェリックスにリアストス、軍隊の副隊長と模擬戦で頑張った人だけ。この国の名前だって知らないので。」
「「「!?」」」
めちゃくちゃ驚かれた。
そんなに驚かれた。
「ま、まさか我の名を知らぬとはいうまいな?」
「知らないです。」
即答すれば、何故か頭を抑えていた。
「もしかして、何処が痛いんですか?医者を呼ぶなら魔法ですぐに呼びますけど……」
「いや、いい……其方がここまでとは思わなかっただけである。どうせ我や国の名も知る気は無いのであろう?」
「はい。」
「ならば、それで良い。この国に留まってくれるのであれば、そのくらい許容しよう。」
「ありがとうございます。」
一礼して、拝見の間から退出する。
張り詰めた空気から、決して緩くはないが庭園からする爽やかな香りが心に安らぎを与えてくれる。
「でてきていいよ。」
『アァ。』
フェンリルに声をかけると、胸から顔を出した。
『国ノ名モ知ラヌトハ、不敬罪ナド生温イナ。』
「そうなの?」
『国ニ住ンデイル以上、皇室ノ名ト国名ハ覚エテイルモノダ。』
「じゃあ、旅人でも知ってるの?」
『少ナクトモ、国ノ名ハ知ッテイルダロウナ。』
「へぇ。」
旅人さえ知っているからといって、私が知らなければならないかと言われると、そうではないと思う。
大して大将軍を続ける事に困る事なんて無いだろうから。
「まぁ、必要なときはリックお爺ちゃんが教えてくれるよね。」
『……ソウダナ。』
何故か数秒の沈黙があったが気にせず、廊下を歩いた。
王宮の一直線に轢かれた色鮮やかな鮮血の様に綺麗な埃ひとつない絨毯の階段の上に見下す獣人が三人。
「大将軍アンジュが参りました。」
フェリックスに習った通りに膝を突き、許可が降りてから立ち上がる。
「今日はよく来てくれた。」
「貴方に逆らったら、面倒な事になるって聞いたので。」
「ほっほ、大方誰が教えたのか予想はつくが、だいたい間違ってはおらぬな。」
「もちろんです。」
フェリックスは、嘘をつかない数少ない信頼できる人なのだ。
「何故、呼び出されたのか心当たりはあるかいの?」
「……昨日のお菓子の食べ過ぎ?」
みんなよりも、デザートたくさん食べたから怒っているのかもしれない。
みんなで分ける為に、用意された者だから。
「ほっほ、相変わらず面白いのぉ。そんなことで怒ったりせんから心配せんで良い、寧ろ、いつも残っているお菓子に手をつけられてシェフが喜んでおったわい。」
どうやら、怒られる心配ははなさそうでホッと息を吐く。
「今日は、其方に謝罪したくて呼んだのじゃ。」
「私にですか?」
全く心当たりがない。
「アードリアのことを謝りたいのじゃ。」
「彼女のことなら、やり返したので謝る必要はありませんし、謝るならアードリア自身が私にするのが、筋だと思いますけど……」
なんで王様が謝るのか分からずに首を傾げると王子や王妃、国王までもが苦笑いをした。
「そうはいかんのじゃ。彼奴の事を推薦し放っておいたのは我らの責任なのだ。それを制裁してくれた其方には感謝しておる。」
「まぁ、アバズレとか心外なことは言われたけど……アードリアは、侮辱されたい変わった性癖を持ってるみたいだから……」
「ブフッ」
なんか変な音が聞こえた。
「そ、其方からするとそう見えたのか……」
「はい。だって人にしたらいけない事は自分もしちゃいけないって子供の頃に習うでしょう?それをしたって事はアードリアも辱めを受けたかったんですよ。でも、なかなか言えずにきっとアバズレって言ってたんです。」
絶対そうに違いないと思う。
「も、もう耐えきれんのじゃ……」
「「「アハハハハハ!!」」」
王妃も含めて、何故か大声で笑い始めた。
なんで、可笑しな事を言ってないのに笑うんだろう?
「ま、まぁ、その事は置いておくとして……取り敢えずアードリアのことは謝らせておくれ。」
「はい……」
そんなに謝りたいなら一応謝罪を受け取る。
「そういえば、今、其方は誰か好きな人はおるかの?」
「フェリックスです。」
「他には?」
「リアストスと私の軍隊の人達が好きです。」
「そうではなく、恋愛方面じゃよ。」
「……居ないです。」
「なら、我の息子なんてどうじゃ?」
王子の方に視線を向ける。
銀髪に紫色の瞳をしたミステリアスな雰囲気を持つ青年。
髪は長く三つ編みを肩からながしている。
「……なんか、作り笑顔が不気味なので遠慮しておきます。」
何考えてるか分からない不気味な笑顔は嫌いだ。
「あと、私はリアストスみたいな人の顔が無難なので、そっちがいいです。」
何を考えてるかも分かり易いから。
そういえば、一瞬驚いた顔をしたものの悪い顔はされなかった。
「そうか、それなら仕方ない。ゆっくり落とすしかあるまいな。」
「よろしくお願いするよ。」
王子がニコリと微笑むと、三つ編みが揺れた。
「因みに、息子の名前は知っているかの?」
「知らないです。」
「ならば紹介しよう。」
「結構です。」
「何故じゃ?」
意味がわからないと、三人とも同じ様な顔をする。似ている容姿なだけあって三人とも、こういう時は分かりやすい。
「私は近しい人だけ覚えられればそれでいいんです。フェリックスにリアストス、軍隊の副隊長と模擬戦で頑張った人だけ。この国の名前だって知らないので。」
「「「!?」」」
めちゃくちゃ驚かれた。
そんなに驚かれた。
「ま、まさか我の名を知らぬとはいうまいな?」
「知らないです。」
即答すれば、何故か頭を抑えていた。
「もしかして、何処が痛いんですか?医者を呼ぶなら魔法ですぐに呼びますけど……」
「いや、いい……其方がここまでとは思わなかっただけである。どうせ我や国の名も知る気は無いのであろう?」
「はい。」
「ならば、それで良い。この国に留まってくれるのであれば、そのくらい許容しよう。」
「ありがとうございます。」
一礼して、拝見の間から退出する。
張り詰めた空気から、決して緩くはないが庭園からする爽やかな香りが心に安らぎを与えてくれる。
「でてきていいよ。」
『アァ。』
フェンリルに声をかけると、胸から顔を出した。
『国ノ名モ知ラヌトハ、不敬罪ナド生温イナ。』
「そうなの?」
『国ニ住ンデイル以上、皇室ノ名ト国名ハ覚エテイルモノダ。』
「じゃあ、旅人でも知ってるの?」
『少ナクトモ、国ノ名ハ知ッテイルダロウナ。』
「へぇ。」
旅人さえ知っているからといって、私が知らなければならないかと言われると、そうではないと思う。
大して大将軍を続ける事に困る事なんて無いだろうから。
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