『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

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第三章 シャノン大海戦編

EP79 愚考

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「こりゃ凄いな・・・。社交ダンス一回でこんなに変わる物なのか?」

 シンは花よりも少し遅れて起きてくると、早速ダンスのレッスンを開始した。
 正直なところ前日より少しでも上達していれば良い、という基準で花の新しいダンスを見ていたが、すぐにその考えは改めさせられた。

「愛の力ね♡本当は清也にも見て欲しかったけど・・・。」

 花は嬉しそうに笑った後に、少しだけ寂しそうになった。

「再会した時にでも見せてやろうぜ!」

 シンは満足そうに微笑みかけた。
 まだ完成とは言い難いが、花の動きは格段に向上している。
 計画が軌道に乗り始めたのを感じると、笑みをこぼさずにはいられなかった。

「それはそうと、あなたの言う計画は順調なの?」

 花は急に不安そうな顔になった。
 そう、彼女たちの目的はアイドルになる事ではなく、破海竜を討ち取り海を取り戻す事だ。
 当初の目的であった”水晶の杖を探す”は、もはや二の次となっていた。

「そうだなぁ・・・まだサーペントとは上手くいって無い。
 破海竜を倒す具体的な方法も、まだ見つかってないしなぁ・・・。
 いや、一つだけあるにはあるんだががなぁ・・・。」

「魔法で倒すのじゃダメなの?」

「そうなんだが・・・雑魚を倒すには冷凍魔法とかで余裕なんだが、そこまで巨大だと効くかどうか・・・。
 やっぱり、雷撃魔法が必要そうだ。それもかなり強力な奴だ。」

「・・・いないのね、使える人。」

 花は察したような顔をして言ったが、シンの返答は意外なものだった。

「いや、一人だけいる・・・はぁ・・・。」

 普段は楽観的なシンが、珍しく大きなため息を吐いた。

「やっぱりいな・・・え?いるの?」

「・・・サムだ。アイツがいる。」

「あの子、天才魔法使いなの!?へぇ~意外ね。」

 花は大袈裟に反応した後、急に興味を無くした。
 シンの口ぶりから察するに、そう単純な話では無いと悟ったからだ。

「天才と言うよりも”怪物”だな。いろんな点で一人だけ他と違う。
 様々な系統の強力な呪文を好き放題撃ちまくるもんだから、"もう全部あいつ一人で良いんじゃないかな"って感じ。」

「で、何が問題なの?」

「ここ2ヶ月でかなり生意気になった。もっと言えばイキリ始めた。」

「あぁ~・・・察した。」

 花は身に余る力を手に入れた少年が、傍若無人に振る舞う姿が容易に想像できた。
 老若男女に関わらず謙虚な人間が好きであったので、シンから聞くサムの現状に強い嫌悪感を示さずにはいられなかった。

「それに1番の問題は・・・だ。
 すぐ調子に乗っては大惨事を起こしてる。反省とかも特にしてない・・・。
 故意じゃない場合は、ある程度許容してるんだが・・・。」

 シンは暴力行為に明け暮れた自分の中高生時代を思い出すと、サムの振る舞いも可愛い物のように思えた。
 しかし、現状を放置してはいけないとも思い、葛藤していた。

「お前には話して無かったが、一カ月前に起きた教会の火事もサムが悪童とつるんでやった事だ。
 さすがにゲンコツをくれてやったが、ヘラヘラしてるし・・・。閉じ込めても壁ぶち破って出て来た・・・。」

 シンは実際のところ、全力でサムを更生させようとしていたがことごとく失敗していた。

「なるほど・・・だから、”怪物”なのね。」

 花はサムの愚行にあきれ果て、完全に遠い目になっている。

「あいつの事はもういい。それよりも、問題はサーペントだ。
 総監のおっさんを何とかする必要がある。それさえ何とかなればなぁ・・・。」

 シンは雰囲気が悪くなってきたのを察して、強引に話題を変えた。

「う~ん・・・取り敢えず、この町に呼ぶとして・・・私のコンサートに来てもらうのはどう?」

 花は何となく思いついた案を言って見た。

「あのなぁ・・・あんなに頭の固いおっさんが、アイドルの歌だけで方針を変えると思うか?
 ある程度、金は払うとして・・・まあ、その、何というか、お前が接待をするっていう方法もあるにはあるが・・・やめといたほうがいいぞ・・・。」

 シンは突然、口籠った。
 花の方を申し訳なさそうにチラチラ見ている。

「接待って例えば何?お酒を注ぐとか?」

 花にはシンの言った言葉の意味が分からなかった。

「耳貸してくれ・・・お前がおっさんとセッ・・・うごぁっ!?」

 シンは言い終わらないうちに、左頬が上下の歯に食い込むほどの強烈なビンタを喰らった。
 花はその日、口を利いてくれなかった。
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