90 / 251
第三章 シャノン大海戦編
EP79 愚考
しおりを挟む「こりゃ凄いな・・・。社交ダンス一回でこんなに変わる物なのか?」
シンは花よりも少し遅れて起きてくると、早速ダンスのレッスンを開始した。
正直なところ前日より少しでも上達していれば良い、という基準で花の新しいダンスを見ていたが、すぐにその考えは改めさせられた。
「愛の力ね♡本当は清也にも見て欲しかったけど・・・。」
花は嬉しそうに笑った後に、少しだけ寂しそうになった。
「再会した時にでも見せてやろうぜ!」
シンは満足そうに微笑みかけた。
まだ完成とは言い難いが、花の動きは格段に向上している。
計画が軌道に乗り始めたのを感じると、笑みをこぼさずにはいられなかった。
「それはそうと、あなたの言う計画は順調なの?」
花は急に不安そうな顔になった。
そう、彼女たちの目的はアイドルになる事ではなく、破海竜を討ち取り海を取り戻す事だ。
当初の目的であった”水晶の杖を探す”は、もはや二の次となっていた。
「そうだなぁ・・・まだサーペントとは上手くいって無い。
破海竜を倒す具体的な方法も、まだ見つかってないしなぁ・・・。
いや、一つだけあるにはあるんだががなぁ・・・。」
「魔法で倒すのじゃダメなの?」
「そうなんだが・・・雑魚を倒すには冷凍魔法とかで余裕なんだが、そこまで巨大だと効くかどうか・・・。
やっぱり、雷撃魔法が必要そうだ。それもかなり強力な奴だ。」
「・・・いないのね、使える人。」
花は察したような顔をして言ったが、シンの返答は意外なものだった。
「いや、一人だけいる・・・はぁ・・・。」
普段は楽観的なシンが、珍しく大きなため息を吐いた。
「やっぱりいな・・・え?いるの?」
「・・・サムだ。アイツがいる。」
「あの子、天才魔法使いなの!?へぇ~意外ね。」
花は大袈裟に反応した後、急に興味を無くした。
シンの口ぶりから察するに、そう単純な話では無いと悟ったからだ。
「天才と言うよりも”怪物”だな。いろんな点で一人だけ他と違う。
様々な系統の強力な呪文を好き放題撃ちまくるもんだから、"もう全部あいつ一人で良いんじゃないかな"って感じ。」
「で、何が問題なの?」
「ここ2ヶ月でかなり生意気になった。もっと言えばイキリ始めた。」
「あぁ~・・・察した。」
花は身に余る力を手に入れた少年が、傍若無人に振る舞う姿が容易に想像できた。
老若男女に関わらず謙虚な人間が好きであったので、シンから聞くサムの現状に強い嫌悪感を示さずにはいられなかった。
「それに1番の問題は・・・魔力暴走だ。
すぐ調子に乗っては大惨事を起こしてる。反省とかも特にしてない・・・。
故意じゃない場合は、ある程度許容してるんだが・・・。」
シンは暴力行為に明け暮れた自分の中高生時代を思い出すと、サムの振る舞いも可愛い物のように思えた。
しかし、現状を放置してはいけないとも思い、葛藤していた。
「お前には話して無かったが、一カ月前に起きた教会の火事もサムが悪童とつるんでやった事だ。
さすがにゲンコツをくれてやったが、ヘラヘラしてるし・・・。閉じ込めても壁ぶち破って出て来た・・・。」
シンは実際のところ、全力でサムを更生させようとしていたがことごとく失敗していた。
「なるほど・・・だから、”怪物”なのね。」
花はサムの愚行にあきれ果て、完全に遠い目になっている。
「あいつの事はもういい。それよりも、問題はサーペントだ。
総監のおっさんを何とかする必要がある。それさえ何とかなればなぁ・・・。」
シンは雰囲気が悪くなってきたのを察して、強引に話題を変えた。
「う~ん・・・取り敢えず、この町に呼ぶとして・・・私のコンサートに来てもらうのはどう?」
花は何となく思いついた案を言って見た。
「あのなぁ・・・あんなに頭の固いおっさんが、アイドルの歌だけで方針を変えると思うか?
ある程度、金は払うとして・・・まあ、その、何というか、お前が接待をするっていう方法もあるにはあるが・・・やめといたほうがいいぞ・・・。」
シンは突然、口籠った。
花の方を申し訳なさそうにチラチラ見ている。
「接待って例えば何?お酒を注ぐとか?」
花にはシンの言った言葉の意味が分からなかった。
「耳貸してくれ・・・お前がおっさんとセッ・・・うごぁっ!?」
シンは言い終わらないうちに、左頬が上下の歯に食い込むほどの強烈なビンタを喰らった。
花はその日、口を利いてくれなかった。
1
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる