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第六章 マリオネット教団編(征夜視点)
EP176 女友達 <☆>
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翌朝から、征夜は別人になった。正確には元に戻ったのだろう。目指すべき姿の分からない、迷走の闇を抜けたのだ。
彼の目線は、確かに将来を見据えていた。
しかし彼は、テセウスの影を追っていない。むしろ、彼のような人間にはならないと誓っている。
(目的の為に他人を犠牲にするなんて!論外だ!)
花たちとは違うジムにて、征夜は早朝からベンチプレスをしていた。
怒りを向上心に変え、再び鍛錬に励む。カジノに行く気など微塵もない。
(あんな奴にはならない!あんな奴になってたまるか!何が、花を守るだ!ふざけるな!)
あの男が花に異常な執着を見せているのは、誰の目にも明らかだ。
彼女を守る為には強くなる必要がある。それも、テセウス以上の強さに。
(なれるかどうかじゃない!なるしか無いんだ!そして証明してやる!他人を犠牲にするなんて間違ってると!)
限界まで肉体を酷使しながら、征夜は誓った。
今度こそ迷わない。あの男を反面教師に、自分は更に強くなる。ガムシャラな自信を抱きながら、征夜は朝のトレーニングを終えた。
~~~~~~~~~~
「あっ!少将!どこ行ってたんですか?」
シャワーを浴びに自室へ戻ると、ミサラが隣部屋から飛び出して来た。
「ジムに行ってた。最近、殆ど鍛えてなかったからね。」
ここだけの話、テセウスの言い分は正しかった。
征夜は明らかに鈍っており、以前は余裕だった筋トレがキツくて仕方がない。
気合いだけで乗り切ったが、全身が張り裂けそうなほど痛い。明らかにやり過ぎた。
「ジム・・・ですか?カジノじゃなく?」
どうやらミサラは、今日も征夜と共に賭博をする気だったようだ。
しかし征夜には、もはやその気はない。
「カジノには行かない。今日は筋トレとマラソンをするよ。」
「そうですか!私も、少将はその方が良いと思います!私は料理の練習をします!」
ミサラはどうやら、征夜と一緒でなければカジノに行く気は無いらしい。実際のところ、楽しかったのは賭博ではなく、征夜と一緒に過ごせる時間だったのだ。
手荷物を部屋に置き戻して、ミサラはエプロンを着けた。
明らかに魔導書にしか見えない本を取り出し、コンロに火をつけた。
「りょ、料理の練習・・・。」
征夜はトラウマを思い起こしたようだ。
ミサラの料理は正に、この世の終わりを体現している。もしかしたらそれを、味見させられるかもしれない。
「誰かに教えてもらった方が良いかも・・・。」
恐らく彼女は、自力で上達するのは不可能だろう。
征夜はせめて、誰かに教わって欲しいと切に願っていた――。
~~~~~~~~~~
一方その頃、セレアは一階の食堂に居た。
花と二人で紅茶を飲み、軽い女子会をしているようだ。
「花はどんな子が好きなのよ?」
「う~ん・・・やっぱり、可愛い男の子かなぁ・・・!
容姿は関係なく、良い所を見せようと頑張ってる男の子って可愛いでしょう?
それでいて、本当にカッコいい所を見せられると、メロメロになっちゃって・・・♡」
「分かる分かる!」
二人は中々に気が合うようだ。
彼女たちが茶を飲んでいるだけで、周囲の空気がピンク色に染まっている気がする。
「ちょっと幼い所もあって・・・そこがまた良いの・・・!」
花は征夜をべた褒めしている。ここまで肯定をしてくれる恋人と言うのも、やはり中々に珍しい。
ただし、完全に不満が無いと言えば嘘になる。
「ただ、ちょっと奥手すぎるかなぁって・・・。もっと大胆になって良いのに・・・。」
思い返してみる限り、むしろ花がグイグイ行きすぎな気もする。
異世界に来てアクティブになったとはいえ、元々がぼっち童貞の征夜には刺激が強すぎた。
「彼氏さんって童貞なの?」
セレアは長年の勘で、花の恋人が童貞であると仮説を立てた。それは確かに当たっている。
「多分・・・?まぁ、私も処女だけど。」
「えぇっ!?見えない!!!・・・あっ、ごめんなさい。」
セレアは思わず本音を言ってしまった。
親しき仲にも礼儀あり、流石に失言過ぎたと気付いて、すぐに謝罪する。
ただ、花の豊満ボディと立ち振る舞いを見る限り、とても生娘に見えないのは一般論だろう。
「あんまり・・・モテた記憶・・・無い?」
花は自分でも、よく分かっていないような顔をしている。
それを見たセレアは席を立ち上がり、悪だくみをしながら花に歩み寄る。
「へぇ・・・そうなんだぁ・・・!」
背後から花の肩に寄りかかり、後ろから手を回して抱き着いてしまう。
「本当にモテないの?・・・こんなに、"立派なおっぱい"持ってるのに♡」
「えっ?きゃあっ♡」
セレアの両手が、花の乳房を優しく包む。
女性特有の繊細な力加減で、痛覚のギリギリを攻めた快感を呼び起こす。
(あっ・・・♡これ・・・すごっ・・・♡)
自分で触るのとは全く違う感触に、花は思わず頬を赤らめた。愛撫に慣れた女の手つきは、同じ女の体を知り尽くしている。
これまでは未開拓だった乳房の性感も、シンによって教え込まれた。今の彼女は女の胸について、知識だけでなく実体験でも理解している。
「はぁ・・・はぁ・・・柔らかくて大きくて、とっても甘い匂い・・・美味しそう・・・♡このレベルだと、淫魔にもなかなか居ないわ・・・♡」
「わ、分かった!分かったから!んんぁっ♡」
指先が、花の横乳を優しく触る。
人差し指と中指で撫でさすりながら、円を描くように責める。乳腺を刺激された彼女は、ピクピクと痙攣している。
(な、何・・・これ・・・!腋から熱くなって・・・♡)
甘い言葉と艶やかな吐息が、花の心を魅了した。
淫魔の性質か、それとも魔性の女が為せる技か。もはや彼女の"魅惑術"は、性別など関係ない。
「ここ、とっても気持ち良いでしょう?シンに教えてもらったのよ♡」
「う、うん・・・♡気持ちいい・・・♡ひぅぁっ!♡」
「花ったら、とっても敏感なのね・・・♡乳首も勃って、硬くなってるわ・・・♡
本当にミルクが出ちゃいそう・・・♡お尻もおっぱいも大きくて・・・きっと良い"ママ"になれるわね・・・♡」
まるで乳を搾るように、乳首を強く摘まれる。
普段なら痛いのだろうが、もはや全てが快感に変換されていた。
下着の上から乳首を指に挟み、乳輪を弄り回す。乳腺への刺激を意識しながら、優しくつねり上げる。
柔らかな生地を乳頭に擦り付け、研磨するように快感を増大させた。
「だ、ダメッ・・・♡やめてセレア・・・っ!♡彼氏・・・いる、から・・・こういう、のは・・・!♡ダメなの、に・・・♡」
「ウフフ♡イっちゃえ♡・・・なぁんてね!」
花は危うく、セレアの技によって絶頂しかけた。
二人とも、この手のじゃれ合いには慣れている。その豊満ボディに触れようとする者は、決して男だけではないのだ。
花はその度に引き剥がしてきたが、あくまで悪戯の範囲なら許容していた。
しかし、セレアは満更でも無い。仕事仲間や友人と、プライベートで実際に至った事も少なくない。
「花ったら本当に可愛くて、思わず興奮しちゃった♡・・・嫌だった?」
「そんな事ないよ・・・!」
少しだけ"期待"してしまったが、止めてもらって安心した。それは即ち、本心では罪悪感があったという事。
いくら女同士とは言え、恋人以外の者に汚されるのは、流石にダメだと分かっていた。
「それにしても、開発無しでこれほど敏感な子も珍しいわ。
1週間前の私なら、間違いなく嫉妬してたわ!」
「う、うん・・・///」
褒めているのか分からないが、何だか嬉しくなる。
セレアは花が笑っているのを確認すると、手荷物を持ち上げた。どうやら、女子会はお開きのようだ。
「それじゃ!私は上に戻るわ!予約もそこそこ埋まってるし、読みたい本もあるの!・・・ジムはシンと行ける?」
「うん!二日間もありがとう!またお茶しましょう!」
花は礼儀正しくお辞儀をして、感謝の言葉を述べる。
持っているカップこそ洋風だが、その様子は和風の茶道にも通じるようだ。
「また明日!」
セレアは優しく手を振って、階段を登った。
~~~~~~~~~~
(やっぱり、花とのお茶が一番楽しいわ!気兼ねなく話せるし、とっても気が合うもの!)
連日の茶会なのに、全く飽きが来ないのも珍しい。
やはり相性が良いのだろうか、花とセレアは完全に友達になっていた。
(さてさて・・・征夜くんたちは、今日もカジノかしら?)
カジノに行くのを止める気はないが、仲良くなる時間が無いのは悲しい。
征夜はもちろん、ミサラの事もたくさん知りたいのだ。それには、不思議な既視感も関係している。
(どこかで・・・どこかで見た事が・・・えっ?)
「きゃっ!」
「ふむぅっ!?」
セレアがよそ見しながら首を傾げていると、廊下の途中で何かと衝突した。
胸元を覗き込むと、豊満な谷間に顔を埋めたまま、誰かが暴れている。
「・・・あら?征夜くん、こんな所で何を?」
谷間に溺れて窒息している征夜を、セレアは軽々と持ち上げる。
しかし不思議なのは、彼が逆さ向きになっている事だ。まるで蝙蝠のように、両足が天井のパイプに乗っている。
「ぷはぁっ!・・・溺れ死ぬかと思った・・・。」
「まぁ失礼!」
彼女からしてみれば、征夜が勝手にぶつかって、勝手に溺れたのだ。自分のせいではない。
「あなた、こんな所で何してるの?」
「あっ、セレアさん。おはようございます。実は今、空中腹筋・・・て言うのかな?をしてます。」
「あぁなるほど、だから吸血鬼みたいな姿勢なのね。」
足を支柱に引っ掛けて、腹筋だけで体を起こす。中々に高度な筋トレだ。
しかし、この程度では終われない。テセウスを越えるには、まだ出発点にすら立ててない。
「ウフフ♡頑張ってて偉いわね!カジノに行くよりも、こっちの方が似合ってるわ!」
「アハハ・・・自分でも、どうかしてたと思います。」
いざやって見ると、やはり体を動かす方が楽しい。
ギャンブル依存症になるよりは、筋トレ依存症になった方がマシだ。少なくとも剣士としては、後者が正しいだろう。
「危ない事はしちゃダメよ。気を付けてね。」
「はい!分かりました!」
「そういえば、ミサラちゃんは居る?」
「えと・・・唐揚げのリベンジを・・・。」
征夜は宙ぶらりんになったまま、筋トレの何倍も辛そうな顔をした。アレは正に、"食す拷問"。人間の口には合わない物体だ。
「へぇ!ちょうど良いわ!ミサラちゃんと一緒に、お昼ご飯を作るわね!デザートも付けてあげるわ!」
「・・・えっ!?ほんとですか!?」
こんなに嬉しい事はない。
流石のミサラも、セレアが監視していれば、アレほど壊滅的な料理を出さないだろう。
「お、おねがいします!ミサラを!頼みます!!!」
「え?えぇ・・・。」
征夜の必死な様子に対し、セレアは少しキョトンとした。
~~~~~~~~~~
「ミサラちゃ~ん!入るわよ~!」
セレアがミサラの部屋に入ると、中は黒い霧に覆われていた。いや性格には、焦げた煙が蔓延していたのだ。
「発酵中力粉、雄鶏の心臓、マンドレイクの粉末根に、闇のポーション・・・出来た!」
明らかに物騒な材料を呟きながら、ミサラは料理を終えた。黒い煙はどうやら、揚げ物のフライパンから出ているようだ。
「何作ってるの?」
「あっ、セレアさん!唐揚げを作ってました!」
「ふむふむ、見せてみなされ・・・!」
セレアはそう言うと、鍋に箸を突っ込んだ。
最も美味しそうな唐揚げをわざと選び、口に運んでいく。
「・・・・・・ゴクンッ!・・・あら!美味しいわね!」
「本当ですか!?」
セレアはごく普通の笑みを浮かべ、バリバリと咀嚼している。未だに沸騰している表面の油を、何とも思わないのは流石である。
(・・・?やっぱり、どこが不味いのか分からないわ。)
冷静に味の分析を進めるが、問題点は特に無い。
強いてあげるなら、隠し味についてだろう。
「これ、隠し味に"カエルの目玉"入れたでしょ?」
「はい!"入れました"!!!」
今明かされる、衝撃の真実である――。
どうやら問題は、調理法じゃないらしい。
一般的な唐揚げに、カエルの目玉は入れない。そんな物を入れたら、殆どの場合は不味くなる。
「やっぱり!カエルの目玉って、クセになる珍味よね!」
「そうなんですよ!やっと分かってくれる人がいました!」
かなり独特な感性。この世界でも珍しいようだ。
地球にもカエルを食す文化はあるが、唐揚げに目玉を入れる文化は恐らく無い。
「ただねぇ、やっぱり征夜くんの口には合わないらしいのよ・・・。」
「そ、そうですか・・・残念です・・・。」
否定的な意見を聞いて、ミサラの顔は曇った。
しかしすぐに、セレアは元気付けるような提案をする。
「その代わりにパスタを作りましょう!少し工夫するだけで、お城のシェフ並みのを作れるのよ!」
「ほんとですか!?それって、少将もよろこんでくれます!?」
「もちろんっ!美味しい物を作れば、男はイチコロよ!」
そう言うとセレアは、ミサラの手を引いて料理指南を始めた。手取り足取りを抑え込むと、真面目なミサラは全てをメモに取る。
「ゲテモノは入れない・・・ゲテモノ?」
「内臓とか虫とか、両生類は控えた方が無難よ。」
「なるほど・・・手首とかは?」
「見た目がグロいからダメ。」
「手首・・・気持ち悪い・・・っと。」
一言一句を聞き逃さないようにする彼女の姿が、セレアにはとても可愛く思えた。
自分もかつて、"先輩娼婦"から家事を教わった事を思い出し、微笑ましくなる。
(あの頃は、私も同じようなご飯を作ってたわね。本当に、あの人のおかげだわ・・・。)
今のセレアの料理術は、貴族さえも唸らせるレベルだ。
しかし、元はミサラと同じ。どうにも彼女は、生まれつき味覚がおかしかったらしい。
「・・・ミサラちゃん。」
「はい!何ですか?」
「明日からも練習する?」
「はい!お願いします!」
「よーし!頑張っちゃうぞ!」
ミサラは彼女に料理を教わっていると、まるで母に寄り添っているかのような、不思議な感覚が湧き上がるのだ。
それにこの練習には、確かな達成感がある。断る理由も無かった彼女は、明日からも鍛錬を積む事を望んだ。
~~~~~~~~~~
一時間後、シャワーで汗を流した征夜は、ミサラの部屋に呼ばれた。どうやら、昼食が出来たらしい。
「作りすぎちゃった!」
セレアが大きく胸を張り、誇らしげな笑みを浮かべる背後には、色とりどりの皿が並んでいる。
わずか一時間もの間に、彼女は10皿以上の料理を完成させたようだ。
「セレアさんが作ったんですか!?」
「違うわよ!アドバイスしただけで、作ったのはミサラちゃん。」
「そうなの!?」
並んでいる料理は、量が多いだけではない。
そのどれもが美味しそうであり、とてもミサラの料理とは思えない。
驚愕と共に聞き返した征夜に対し、ミサラは静かに2回頷く。頬を赤らめ、恐縮しているようにも見える。
「頑張って作ったので・・・どうぞ!」
「ありがとう!」
三人は席につき、ナイフとフォークを握る。
征夜は少し慎重な手つきで肉を切りながら、少しだけ口に入れた。
「・・・っ!?美味しいよ!」
「ほんとですか!?ありがとうございます!」
以前の味を知っている征夜にとって、これは驚異的な進歩だった。
セレアのアドバイスがあるとはいえ、同じ人間の料理とは思えないのだ。
「フフフ・・・こうして見ると、ミサラちゃんは征夜くんの彼女みたいね!」
「ほんとですか!?」
「えぇ、とってもお似合いよ!」
二人の様子を微笑みながら見ていたセレアは、突如としてこんな事を言った。
しかし、これはお世辞ではない。彼女は本気で、二人は似合っていると思っていた。
征夜に恋人がいる事は知っている。だが、ミサラほど献身的で、一途な恋を寄せてくれる少女が、他にいるだろうか。
確かに欠点はあるが、それわ補って余りある魅力が彼女には感じられる。これを機に乗り換えてしまうのも、人生の選択肢としてあり得る。
まさか征夜が、先程まで談笑していた花の彼氏だとは、微塵も思っていない――。
「えへへ・・・私が恋人かぁ・・・!」
ミサラは完全に有頂天だ。蕩け切った目を隠し、恥じらいでいる。
本当に、ここで終われば良かった。
しかし意味もなく、"破壊的な追撃"をする馬鹿野郎がいた――。
「何言ってるんだい?ミサラ、君はとっくに僕の女友達だよ?」
「えぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!?????」
征夜はどうやら、ガールフレンドを"友達"と勘違いしているようだ。
欧米では恋人と友人の区別が曖昧だが、少なくともミサラには友達以上の意味として取られてしまう。
「わ、私が・・・ガールフレンド・・・///」
顔を真っ赤に染め上げられたミサラは、完全に気が抜けてしまった。
放心状態で虚空を眺めながら、生気の抜けた顔で笑っている。
「そんな事よりもセレアさん、頼みたい事があるんです。」
「あら?何かしら?」
(えぇっ!?"そんな事"なの!?)
セレアとしても、このカミングアウトは衝撃だった。
しかし征夜にとっては、さして重要な事ではないらしい。完全なる認識の相違である。
「修行を手伝ってもらえませんか?セレアさんの時則の法衣に、奥義なしで対応出来るようになりたいんです!」
「もちろん良いわよ!ただ、時間はあんまり無いかも。
お客さんの相手もするし、ミサラちゃんに料理も教えるし、友達とお茶もするから。」
「1日・・・いえ!3日に一回でも大丈夫です!」
「オッケー!今夜から始めましょう!」
「ありがとうございます!」
彼女には協力する義理など無いのに、驚くほどあっさり了承してくれる。無償で行う人助けに、何の抵抗もないらしい。
征夜は彼女の心の広さに感謝しながら、新たな鍛錬に向けて昼食を食べ進めた。
~~~~~~~~~~
昼食を終えたセレアは寝室に戻った。
休憩時間は昼寝をしようかと思ったが、どうやらそうも行かないらしい。
「あらシン、来てたのね。」
部屋にはシンが待ち構えていた。どう見ても、寝かしてくれる雰囲気ではない。
「アイツが、ホテルまで水を取りに戻ったからな。俺は自前で水を買ったけど、暇だし会いに来た。」
ソントは比較的綺麗な町だが、水道水を飲料とするのは難しい。それが無くなったなら、取りに戻る必要がある。
それとは別に、シンは彼女に会いたかったらしい。スルスルと伸びる右手が、豊かな尻を揉みしだく。
「ウフフ♡私に会いたくなったの?可愛、ちゅっ♡・・・ちゅぅっ・・・んぅっ♡」
"可愛い"と言いかけた口を、唇で塞がれる。
あくまで主導権は自分にあり、可愛がられるのはお前の方だと、シンは彼女の体に教え込んでいる。
「あんっ・・・ダメッ・・・♡揉み揉みされて・・・気持ちぃ・・・んぁっ♡」
さっき花にした事を、同じようにやり返される。
服の上から揉まれた乳は、柔らかく形を変えながら、シンの指を包み込む。
「ま、待って・・・♡まだ、エッチには早いわよ・・・♡」
「陽が照ってる方が、むしろ興奮しないか?」
「そ、そうじゃなくて♡さ、さっき、ケーキを・・・はぁんっ♡や、焼いたの♡お腹・・・空いてるっ?先に食べ・・・だ、ダメ・・・!今、乳首・・・触ったら・・・んぅ~~~ッッッ!!!♡♡♡」
ビクンビクンと痙攣し、セレアは膝から崩れ落ちる。
乳首を全力で弄られた彼女は、どうやら我慢出来なかったようだ。
尻もちを着きそうになる彼女を、シンは優しく支え上げる。そして、何事も無いかのように返事した。
「おぅ、くれる物は貰っとくぜ。」
「はぁ・・・はぁ・・・もうっ!素直に"ちょうだい"って言えば良いのに♡」
ミサラが征夜の恋人に見えると言ったが、むしろセレアの方がシンの恋人に見える。
乳房を触られても、一方的にキスされても、毎晩のように抱かれても、何の違和感も湧かない。まるで当然のように、体を許してしまっている。
あまりにも相性が良いので、セレアとしては「赤ちゃん出来たら良いのになぁ・・・。」とさえ思いながら、毎日のセックスをしていた。
ショートケーキの皿を持って来たセレアは、フォークで少し掬い取り、シンの口に持っていく。
「はい、あ~んして♡」
「あーん・・・お前の料理、やっぱ美味いな!」
「ウフフ♡ありがと♡・・・私にも食べさせて♡」
「はい、あーん。」
「あ~んっ♡・・・さすが私!天才的な味ね!」
2人はお互いに食べさせ合いながら、2切れのケーキ食べた。
最後に残ったのは、真っ赤なイチゴが一つだけ――。
「ほへ、ふはひへわけはひょ。」
(これ、ふたりで分けましょ。)
「良いな。」
セレアはイチゴを咥えながら、シンに分けようと誘う。
それ即ち、"この姿勢のまま食べろ"という意味だ。
「んちゅっ・・・んんっ・・・んぅっ・・・れろっ・・・ちゅぷっ・・・♡」
口付けと共に二つに割れたイチゴが、お互いの口の中で蕩け合う。
果物味の甘酸っぱいディープキスを交わし合う2人の心は、完全にのぼせ上がっていた――。
(キスだけで、気持ち良くなっちゃう・・・♡)
濃厚な雄のフェロモンに当てられたセレアは、心だけでなく、体までもが蕩かされていた。
膣は濡れ、子宮口は開き、男を受け入れる準備を整えた体は、生殖の欲求を限界にまで昂らせている。
「よし!食後の運動するか!」
「違うわ、"メインディッシュ"でしょ・・・♡」
セレアはそう言うと、安価だがよく似合った着衣を脱ぎ去った。
今朝からノーブラであった彼女は、その豊満な乳を惜しげなく晒す。
重量感のある美巨乳の先端で、クッキリと反り立った桃色の秘宝。
それは、赤子に飲ませる蜜の源泉であり、今はまだ乾いている。このままでは、男に吸われても味気ない。
ミルクが無いなら、他の物で潤せば良い。
例えば、同じ哺乳類の乳で作った物なら――。
「ウイスキーも良いけど、やっぱり王道はコレよ・・・♡」
ピュッ・・・
セレアは厨房から持って来た生クリームホイップを、優しく握った。純白の甘味が溢れ出し、彼女の体を美しく彩る。
形の良いお椀型の生地の上に乗った、柔らかく甘いイチゴ。
女が男を誘い、子を育むために持つ2つのケーキ。その表面に、甘く芳醇な香りを漂わせるミルクが浴びせられた。
太古より男を魅了し、"食い物"にして来た淫魔という種族。
それが今では、男に"食べられようとしている"。その事実に、セレアは"極上の背徳感"をそそられた。
両腕の肘で自慢の爆乳を挟み込み、わざとらしく揺らしながら、シンに向けて差し出す。
白く艶のある柔肌に温かい陽光が差し込み、今にも蕩けそうなほど甘い果実を際立たせる。
「お待たせしました・・・♡牝牛セレアの特製ケーキ♡どうぞ召し上がれ♡」
「美味そうだ!」
「あぁんっ!♡♡♡」
シンは即座に彼女を押し倒すと、その女体を貪り始めた――。
彼の目線は、確かに将来を見据えていた。
しかし彼は、テセウスの影を追っていない。むしろ、彼のような人間にはならないと誓っている。
(目的の為に他人を犠牲にするなんて!論外だ!)
花たちとは違うジムにて、征夜は早朝からベンチプレスをしていた。
怒りを向上心に変え、再び鍛錬に励む。カジノに行く気など微塵もない。
(あんな奴にはならない!あんな奴になってたまるか!何が、花を守るだ!ふざけるな!)
あの男が花に異常な執着を見せているのは、誰の目にも明らかだ。
彼女を守る為には強くなる必要がある。それも、テセウス以上の強さに。
(なれるかどうかじゃない!なるしか無いんだ!そして証明してやる!他人を犠牲にするなんて間違ってると!)
限界まで肉体を酷使しながら、征夜は誓った。
今度こそ迷わない。あの男を反面教師に、自分は更に強くなる。ガムシャラな自信を抱きながら、征夜は朝のトレーニングを終えた。
~~~~~~~~~~
「あっ!少将!どこ行ってたんですか?」
シャワーを浴びに自室へ戻ると、ミサラが隣部屋から飛び出して来た。
「ジムに行ってた。最近、殆ど鍛えてなかったからね。」
ここだけの話、テセウスの言い分は正しかった。
征夜は明らかに鈍っており、以前は余裕だった筋トレがキツくて仕方がない。
気合いだけで乗り切ったが、全身が張り裂けそうなほど痛い。明らかにやり過ぎた。
「ジム・・・ですか?カジノじゃなく?」
どうやらミサラは、今日も征夜と共に賭博をする気だったようだ。
しかし征夜には、もはやその気はない。
「カジノには行かない。今日は筋トレとマラソンをするよ。」
「そうですか!私も、少将はその方が良いと思います!私は料理の練習をします!」
ミサラはどうやら、征夜と一緒でなければカジノに行く気は無いらしい。実際のところ、楽しかったのは賭博ではなく、征夜と一緒に過ごせる時間だったのだ。
手荷物を部屋に置き戻して、ミサラはエプロンを着けた。
明らかに魔導書にしか見えない本を取り出し、コンロに火をつけた。
「りょ、料理の練習・・・。」
征夜はトラウマを思い起こしたようだ。
ミサラの料理は正に、この世の終わりを体現している。もしかしたらそれを、味見させられるかもしれない。
「誰かに教えてもらった方が良いかも・・・。」
恐らく彼女は、自力で上達するのは不可能だろう。
征夜はせめて、誰かに教わって欲しいと切に願っていた――。
~~~~~~~~~~
一方その頃、セレアは一階の食堂に居た。
花と二人で紅茶を飲み、軽い女子会をしているようだ。
「花はどんな子が好きなのよ?」
「う~ん・・・やっぱり、可愛い男の子かなぁ・・・!
容姿は関係なく、良い所を見せようと頑張ってる男の子って可愛いでしょう?
それでいて、本当にカッコいい所を見せられると、メロメロになっちゃって・・・♡」
「分かる分かる!」
二人は中々に気が合うようだ。
彼女たちが茶を飲んでいるだけで、周囲の空気がピンク色に染まっている気がする。
「ちょっと幼い所もあって・・・そこがまた良いの・・・!」
花は征夜をべた褒めしている。ここまで肯定をしてくれる恋人と言うのも、やはり中々に珍しい。
ただし、完全に不満が無いと言えば嘘になる。
「ただ、ちょっと奥手すぎるかなぁって・・・。もっと大胆になって良いのに・・・。」
思い返してみる限り、むしろ花がグイグイ行きすぎな気もする。
異世界に来てアクティブになったとはいえ、元々がぼっち童貞の征夜には刺激が強すぎた。
「彼氏さんって童貞なの?」
セレアは長年の勘で、花の恋人が童貞であると仮説を立てた。それは確かに当たっている。
「多分・・・?まぁ、私も処女だけど。」
「えぇっ!?見えない!!!・・・あっ、ごめんなさい。」
セレアは思わず本音を言ってしまった。
親しき仲にも礼儀あり、流石に失言過ぎたと気付いて、すぐに謝罪する。
ただ、花の豊満ボディと立ち振る舞いを見る限り、とても生娘に見えないのは一般論だろう。
「あんまり・・・モテた記憶・・・無い?」
花は自分でも、よく分かっていないような顔をしている。
それを見たセレアは席を立ち上がり、悪だくみをしながら花に歩み寄る。
「へぇ・・・そうなんだぁ・・・!」
背後から花の肩に寄りかかり、後ろから手を回して抱き着いてしまう。
「本当にモテないの?・・・こんなに、"立派なおっぱい"持ってるのに♡」
「えっ?きゃあっ♡」
セレアの両手が、花の乳房を優しく包む。
女性特有の繊細な力加減で、痛覚のギリギリを攻めた快感を呼び起こす。
(あっ・・・♡これ・・・すごっ・・・♡)
自分で触るのとは全く違う感触に、花は思わず頬を赤らめた。愛撫に慣れた女の手つきは、同じ女の体を知り尽くしている。
これまでは未開拓だった乳房の性感も、シンによって教え込まれた。今の彼女は女の胸について、知識だけでなく実体験でも理解している。
「はぁ・・・はぁ・・・柔らかくて大きくて、とっても甘い匂い・・・美味しそう・・・♡このレベルだと、淫魔にもなかなか居ないわ・・・♡」
「わ、分かった!分かったから!んんぁっ♡」
指先が、花の横乳を優しく触る。
人差し指と中指で撫でさすりながら、円を描くように責める。乳腺を刺激された彼女は、ピクピクと痙攣している。
(な、何・・・これ・・・!腋から熱くなって・・・♡)
甘い言葉と艶やかな吐息が、花の心を魅了した。
淫魔の性質か、それとも魔性の女が為せる技か。もはや彼女の"魅惑術"は、性別など関係ない。
「ここ、とっても気持ち良いでしょう?シンに教えてもらったのよ♡」
「う、うん・・・♡気持ちいい・・・♡ひぅぁっ!♡」
「花ったら、とっても敏感なのね・・・♡乳首も勃って、硬くなってるわ・・・♡
本当にミルクが出ちゃいそう・・・♡お尻もおっぱいも大きくて・・・きっと良い"ママ"になれるわね・・・♡」
まるで乳を搾るように、乳首を強く摘まれる。
普段なら痛いのだろうが、もはや全てが快感に変換されていた。
下着の上から乳首を指に挟み、乳輪を弄り回す。乳腺への刺激を意識しながら、優しくつねり上げる。
柔らかな生地を乳頭に擦り付け、研磨するように快感を増大させた。
「だ、ダメッ・・・♡やめてセレア・・・っ!♡彼氏・・・いる、から・・・こういう、のは・・・!♡ダメなの、に・・・♡」
「ウフフ♡イっちゃえ♡・・・なぁんてね!」
花は危うく、セレアの技によって絶頂しかけた。
二人とも、この手のじゃれ合いには慣れている。その豊満ボディに触れようとする者は、決して男だけではないのだ。
花はその度に引き剥がしてきたが、あくまで悪戯の範囲なら許容していた。
しかし、セレアは満更でも無い。仕事仲間や友人と、プライベートで実際に至った事も少なくない。
「花ったら本当に可愛くて、思わず興奮しちゃった♡・・・嫌だった?」
「そんな事ないよ・・・!」
少しだけ"期待"してしまったが、止めてもらって安心した。それは即ち、本心では罪悪感があったという事。
いくら女同士とは言え、恋人以外の者に汚されるのは、流石にダメだと分かっていた。
「それにしても、開発無しでこれほど敏感な子も珍しいわ。
1週間前の私なら、間違いなく嫉妬してたわ!」
「う、うん・・・///」
褒めているのか分からないが、何だか嬉しくなる。
セレアは花が笑っているのを確認すると、手荷物を持ち上げた。どうやら、女子会はお開きのようだ。
「それじゃ!私は上に戻るわ!予約もそこそこ埋まってるし、読みたい本もあるの!・・・ジムはシンと行ける?」
「うん!二日間もありがとう!またお茶しましょう!」
花は礼儀正しくお辞儀をして、感謝の言葉を述べる。
持っているカップこそ洋風だが、その様子は和風の茶道にも通じるようだ。
「また明日!」
セレアは優しく手を振って、階段を登った。
~~~~~~~~~~
(やっぱり、花とのお茶が一番楽しいわ!気兼ねなく話せるし、とっても気が合うもの!)
連日の茶会なのに、全く飽きが来ないのも珍しい。
やはり相性が良いのだろうか、花とセレアは完全に友達になっていた。
(さてさて・・・征夜くんたちは、今日もカジノかしら?)
カジノに行くのを止める気はないが、仲良くなる時間が無いのは悲しい。
征夜はもちろん、ミサラの事もたくさん知りたいのだ。それには、不思議な既視感も関係している。
(どこかで・・・どこかで見た事が・・・えっ?)
「きゃっ!」
「ふむぅっ!?」
セレアがよそ見しながら首を傾げていると、廊下の途中で何かと衝突した。
胸元を覗き込むと、豊満な谷間に顔を埋めたまま、誰かが暴れている。
「・・・あら?征夜くん、こんな所で何を?」
谷間に溺れて窒息している征夜を、セレアは軽々と持ち上げる。
しかし不思議なのは、彼が逆さ向きになっている事だ。まるで蝙蝠のように、両足が天井のパイプに乗っている。
「ぷはぁっ!・・・溺れ死ぬかと思った・・・。」
「まぁ失礼!」
彼女からしてみれば、征夜が勝手にぶつかって、勝手に溺れたのだ。自分のせいではない。
「あなた、こんな所で何してるの?」
「あっ、セレアさん。おはようございます。実は今、空中腹筋・・・て言うのかな?をしてます。」
「あぁなるほど、だから吸血鬼みたいな姿勢なのね。」
足を支柱に引っ掛けて、腹筋だけで体を起こす。中々に高度な筋トレだ。
しかし、この程度では終われない。テセウスを越えるには、まだ出発点にすら立ててない。
「ウフフ♡頑張ってて偉いわね!カジノに行くよりも、こっちの方が似合ってるわ!」
「アハハ・・・自分でも、どうかしてたと思います。」
いざやって見ると、やはり体を動かす方が楽しい。
ギャンブル依存症になるよりは、筋トレ依存症になった方がマシだ。少なくとも剣士としては、後者が正しいだろう。
「危ない事はしちゃダメよ。気を付けてね。」
「はい!分かりました!」
「そういえば、ミサラちゃんは居る?」
「えと・・・唐揚げのリベンジを・・・。」
征夜は宙ぶらりんになったまま、筋トレの何倍も辛そうな顔をした。アレは正に、"食す拷問"。人間の口には合わない物体だ。
「へぇ!ちょうど良いわ!ミサラちゃんと一緒に、お昼ご飯を作るわね!デザートも付けてあげるわ!」
「・・・えっ!?ほんとですか!?」
こんなに嬉しい事はない。
流石のミサラも、セレアが監視していれば、アレほど壊滅的な料理を出さないだろう。
「お、おねがいします!ミサラを!頼みます!!!」
「え?えぇ・・・。」
征夜の必死な様子に対し、セレアは少しキョトンとした。
~~~~~~~~~~
「ミサラちゃ~ん!入るわよ~!」
セレアがミサラの部屋に入ると、中は黒い霧に覆われていた。いや性格には、焦げた煙が蔓延していたのだ。
「発酵中力粉、雄鶏の心臓、マンドレイクの粉末根に、闇のポーション・・・出来た!」
明らかに物騒な材料を呟きながら、ミサラは料理を終えた。黒い煙はどうやら、揚げ物のフライパンから出ているようだ。
「何作ってるの?」
「あっ、セレアさん!唐揚げを作ってました!」
「ふむふむ、見せてみなされ・・・!」
セレアはそう言うと、鍋に箸を突っ込んだ。
最も美味しそうな唐揚げをわざと選び、口に運んでいく。
「・・・・・・ゴクンッ!・・・あら!美味しいわね!」
「本当ですか!?」
セレアはごく普通の笑みを浮かべ、バリバリと咀嚼している。未だに沸騰している表面の油を、何とも思わないのは流石である。
(・・・?やっぱり、どこが不味いのか分からないわ。)
冷静に味の分析を進めるが、問題点は特に無い。
強いてあげるなら、隠し味についてだろう。
「これ、隠し味に"カエルの目玉"入れたでしょ?」
「はい!"入れました"!!!」
今明かされる、衝撃の真実である――。
どうやら問題は、調理法じゃないらしい。
一般的な唐揚げに、カエルの目玉は入れない。そんな物を入れたら、殆どの場合は不味くなる。
「やっぱり!カエルの目玉って、クセになる珍味よね!」
「そうなんですよ!やっと分かってくれる人がいました!」
かなり独特な感性。この世界でも珍しいようだ。
地球にもカエルを食す文化はあるが、唐揚げに目玉を入れる文化は恐らく無い。
「ただねぇ、やっぱり征夜くんの口には合わないらしいのよ・・・。」
「そ、そうですか・・・残念です・・・。」
否定的な意見を聞いて、ミサラの顔は曇った。
しかしすぐに、セレアは元気付けるような提案をする。
「その代わりにパスタを作りましょう!少し工夫するだけで、お城のシェフ並みのを作れるのよ!」
「ほんとですか!?それって、少将もよろこんでくれます!?」
「もちろんっ!美味しい物を作れば、男はイチコロよ!」
そう言うとセレアは、ミサラの手を引いて料理指南を始めた。手取り足取りを抑え込むと、真面目なミサラは全てをメモに取る。
「ゲテモノは入れない・・・ゲテモノ?」
「内臓とか虫とか、両生類は控えた方が無難よ。」
「なるほど・・・手首とかは?」
「見た目がグロいからダメ。」
「手首・・・気持ち悪い・・・っと。」
一言一句を聞き逃さないようにする彼女の姿が、セレアにはとても可愛く思えた。
自分もかつて、"先輩娼婦"から家事を教わった事を思い出し、微笑ましくなる。
(あの頃は、私も同じようなご飯を作ってたわね。本当に、あの人のおかげだわ・・・。)
今のセレアの料理術は、貴族さえも唸らせるレベルだ。
しかし、元はミサラと同じ。どうにも彼女は、生まれつき味覚がおかしかったらしい。
「・・・ミサラちゃん。」
「はい!何ですか?」
「明日からも練習する?」
「はい!お願いします!」
「よーし!頑張っちゃうぞ!」
ミサラは彼女に料理を教わっていると、まるで母に寄り添っているかのような、不思議な感覚が湧き上がるのだ。
それにこの練習には、確かな達成感がある。断る理由も無かった彼女は、明日からも鍛錬を積む事を望んだ。
~~~~~~~~~~
一時間後、シャワーで汗を流した征夜は、ミサラの部屋に呼ばれた。どうやら、昼食が出来たらしい。
「作りすぎちゃった!」
セレアが大きく胸を張り、誇らしげな笑みを浮かべる背後には、色とりどりの皿が並んでいる。
わずか一時間もの間に、彼女は10皿以上の料理を完成させたようだ。
「セレアさんが作ったんですか!?」
「違うわよ!アドバイスしただけで、作ったのはミサラちゃん。」
「そうなの!?」
並んでいる料理は、量が多いだけではない。
そのどれもが美味しそうであり、とてもミサラの料理とは思えない。
驚愕と共に聞き返した征夜に対し、ミサラは静かに2回頷く。頬を赤らめ、恐縮しているようにも見える。
「頑張って作ったので・・・どうぞ!」
「ありがとう!」
三人は席につき、ナイフとフォークを握る。
征夜は少し慎重な手つきで肉を切りながら、少しだけ口に入れた。
「・・・っ!?美味しいよ!」
「ほんとですか!?ありがとうございます!」
以前の味を知っている征夜にとって、これは驚異的な進歩だった。
セレアのアドバイスがあるとはいえ、同じ人間の料理とは思えないのだ。
「フフフ・・・こうして見ると、ミサラちゃんは征夜くんの彼女みたいね!」
「ほんとですか!?」
「えぇ、とってもお似合いよ!」
二人の様子を微笑みながら見ていたセレアは、突如としてこんな事を言った。
しかし、これはお世辞ではない。彼女は本気で、二人は似合っていると思っていた。
征夜に恋人がいる事は知っている。だが、ミサラほど献身的で、一途な恋を寄せてくれる少女が、他にいるだろうか。
確かに欠点はあるが、それわ補って余りある魅力が彼女には感じられる。これを機に乗り換えてしまうのも、人生の選択肢としてあり得る。
まさか征夜が、先程まで談笑していた花の彼氏だとは、微塵も思っていない――。
「えへへ・・・私が恋人かぁ・・・!」
ミサラは完全に有頂天だ。蕩け切った目を隠し、恥じらいでいる。
本当に、ここで終われば良かった。
しかし意味もなく、"破壊的な追撃"をする馬鹿野郎がいた――。
「何言ってるんだい?ミサラ、君はとっくに僕の女友達だよ?」
「えぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!?????」
征夜はどうやら、ガールフレンドを"友達"と勘違いしているようだ。
欧米では恋人と友人の区別が曖昧だが、少なくともミサラには友達以上の意味として取られてしまう。
「わ、私が・・・ガールフレンド・・・///」
顔を真っ赤に染め上げられたミサラは、完全に気が抜けてしまった。
放心状態で虚空を眺めながら、生気の抜けた顔で笑っている。
「そんな事よりもセレアさん、頼みたい事があるんです。」
「あら?何かしら?」
(えぇっ!?"そんな事"なの!?)
セレアとしても、このカミングアウトは衝撃だった。
しかし征夜にとっては、さして重要な事ではないらしい。完全なる認識の相違である。
「修行を手伝ってもらえませんか?セレアさんの時則の法衣に、奥義なしで対応出来るようになりたいんです!」
「もちろん良いわよ!ただ、時間はあんまり無いかも。
お客さんの相手もするし、ミサラちゃんに料理も教えるし、友達とお茶もするから。」
「1日・・・いえ!3日に一回でも大丈夫です!」
「オッケー!今夜から始めましょう!」
「ありがとうございます!」
彼女には協力する義理など無いのに、驚くほどあっさり了承してくれる。無償で行う人助けに、何の抵抗もないらしい。
征夜は彼女の心の広さに感謝しながら、新たな鍛錬に向けて昼食を食べ進めた。
~~~~~~~~~~
昼食を終えたセレアは寝室に戻った。
休憩時間は昼寝をしようかと思ったが、どうやらそうも行かないらしい。
「あらシン、来てたのね。」
部屋にはシンが待ち構えていた。どう見ても、寝かしてくれる雰囲気ではない。
「アイツが、ホテルまで水を取りに戻ったからな。俺は自前で水を買ったけど、暇だし会いに来た。」
ソントは比較的綺麗な町だが、水道水を飲料とするのは難しい。それが無くなったなら、取りに戻る必要がある。
それとは別に、シンは彼女に会いたかったらしい。スルスルと伸びる右手が、豊かな尻を揉みしだく。
「ウフフ♡私に会いたくなったの?可愛、ちゅっ♡・・・ちゅぅっ・・・んぅっ♡」
"可愛い"と言いかけた口を、唇で塞がれる。
あくまで主導権は自分にあり、可愛がられるのはお前の方だと、シンは彼女の体に教え込んでいる。
「あんっ・・・ダメッ・・・♡揉み揉みされて・・・気持ちぃ・・・んぁっ♡」
さっき花にした事を、同じようにやり返される。
服の上から揉まれた乳は、柔らかく形を変えながら、シンの指を包み込む。
「ま、待って・・・♡まだ、エッチには早いわよ・・・♡」
「陽が照ってる方が、むしろ興奮しないか?」
「そ、そうじゃなくて♡さ、さっき、ケーキを・・・はぁんっ♡や、焼いたの♡お腹・・・空いてるっ?先に食べ・・・だ、ダメ・・・!今、乳首・・・触ったら・・・んぅ~~~ッッッ!!!♡♡♡」
ビクンビクンと痙攣し、セレアは膝から崩れ落ちる。
乳首を全力で弄られた彼女は、どうやら我慢出来なかったようだ。
尻もちを着きそうになる彼女を、シンは優しく支え上げる。そして、何事も無いかのように返事した。
「おぅ、くれる物は貰っとくぜ。」
「はぁ・・・はぁ・・・もうっ!素直に"ちょうだい"って言えば良いのに♡」
ミサラが征夜の恋人に見えると言ったが、むしろセレアの方がシンの恋人に見える。
乳房を触られても、一方的にキスされても、毎晩のように抱かれても、何の違和感も湧かない。まるで当然のように、体を許してしまっている。
あまりにも相性が良いので、セレアとしては「赤ちゃん出来たら良いのになぁ・・・。」とさえ思いながら、毎日のセックスをしていた。
ショートケーキの皿を持って来たセレアは、フォークで少し掬い取り、シンの口に持っていく。
「はい、あ~んして♡」
「あーん・・・お前の料理、やっぱ美味いな!」
「ウフフ♡ありがと♡・・・私にも食べさせて♡」
「はい、あーん。」
「あ~んっ♡・・・さすが私!天才的な味ね!」
2人はお互いに食べさせ合いながら、2切れのケーキ食べた。
最後に残ったのは、真っ赤なイチゴが一つだけ――。
「ほへ、ふはひへわけはひょ。」
(これ、ふたりで分けましょ。)
「良いな。」
セレアはイチゴを咥えながら、シンに分けようと誘う。
それ即ち、"この姿勢のまま食べろ"という意味だ。
「んちゅっ・・・んんっ・・・んぅっ・・・れろっ・・・ちゅぷっ・・・♡」
口付けと共に二つに割れたイチゴが、お互いの口の中で蕩け合う。
果物味の甘酸っぱいディープキスを交わし合う2人の心は、完全にのぼせ上がっていた――。
(キスだけで、気持ち良くなっちゃう・・・♡)
濃厚な雄のフェロモンに当てられたセレアは、心だけでなく、体までもが蕩かされていた。
膣は濡れ、子宮口は開き、男を受け入れる準備を整えた体は、生殖の欲求を限界にまで昂らせている。
「よし!食後の運動するか!」
「違うわ、"メインディッシュ"でしょ・・・♡」
セレアはそう言うと、安価だがよく似合った着衣を脱ぎ去った。
今朝からノーブラであった彼女は、その豊満な乳を惜しげなく晒す。
重量感のある美巨乳の先端で、クッキリと反り立った桃色の秘宝。
それは、赤子に飲ませる蜜の源泉であり、今はまだ乾いている。このままでは、男に吸われても味気ない。
ミルクが無いなら、他の物で潤せば良い。
例えば、同じ哺乳類の乳で作った物なら――。
「ウイスキーも良いけど、やっぱり王道はコレよ・・・♡」
ピュッ・・・
セレアは厨房から持って来た生クリームホイップを、優しく握った。純白の甘味が溢れ出し、彼女の体を美しく彩る。
形の良いお椀型の生地の上に乗った、柔らかく甘いイチゴ。
女が男を誘い、子を育むために持つ2つのケーキ。その表面に、甘く芳醇な香りを漂わせるミルクが浴びせられた。
太古より男を魅了し、"食い物"にして来た淫魔という種族。
それが今では、男に"食べられようとしている"。その事実に、セレアは"極上の背徳感"をそそられた。
両腕の肘で自慢の爆乳を挟み込み、わざとらしく揺らしながら、シンに向けて差し出す。
白く艶のある柔肌に温かい陽光が差し込み、今にも蕩けそうなほど甘い果実を際立たせる。
「お待たせしました・・・♡牝牛セレアの特製ケーキ♡どうぞ召し上がれ♡」
「美味そうだ!」
「あぁんっ!♡♡♡」
シンは即座に彼女を押し倒すと、その女体を貪り始めた――。
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