『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

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第六章 マリオネット教団編(征夜視点)

EP154 確執 <☆>

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 征夜が、激しい吹雪の中を火照る体と共に駆け抜けている中、一人残されたミサラは何の前触れもなく訪れた大雪に、困惑していた。
 そんな中、彼女は征夜のために料理を作っていた。竜を倒して帰ってきた時に、彼を労ってあげるためだ。

(チーズは・・・適当で良いのかしら?お肉も適当で、ジャガイモも適当で良いのでしょうか?
 シチューって、結構白いですよね。なら、お塩とお砂糖もたくさん入れないとダメですね。・・・雪も入れちゃおうかな?ついでにヤシの実も!)

 鼻歌混じりに”生ゴミ”を生成している中、彼女の背後で戸口の叩かれる音がした。

(あっ!帰ってきたんだわ!)

 彼女は、憧れのフリーズ大佐が、竜を倒して帰って来たのだと思った。
 少しでも早く中に入れてあげようと思い、即座に扉を開け放つ。

「おかえりなさい!フリー・・・あら、お客さんですか・・・。そんな格好で一体どうされましたか!?」

 戸を叩いた男は、征夜ではなかった。
 濡れた金髪の髪に雪を載せながら、上裸のまま水泳パンツを履いた男が、凍えながら立っている。

 ここは南国であるので、水泳パンツ一枚という格好は、決して珍しくない。
 ただ、背後で降りしきる豪雪と合わさると、異様な雰囲気を演出する。

「実は俺たち遭難したんだ・・・。良ければ、中に入れてくれないか・・・?」

「もちろん構いません!すぐに入ってください!・・・俺"たち"?あなた一人しかいませんが・・・。」

 相手の状況を理解した彼女は、こころよく客人を迎え入れることにした。
 しかし、"たち"と付けるには少しだけ人数が足りない。最低でもあと一人は必要だろう。

「え?もう一人女が・・・。お前、そんなとこで何やってんだ?」

 男が背後を振り向くと、少し離れた場所に女が立っていた。どうやら、足が雪に嵌まって抜け出せないようだ。

「あ、足、抜けな・・・。」

「しょうがないなぁ・・・。」

 男はそう言うと、女の足を手際よく引き抜いた。
 この状況を楽しむかのように、薄笑いを浮かべる男とは対照的に、女の方は本気で寒がっている。
 体温が下がりすぎて、正常な思考が殆ど出来ていない。

「私は温かい物を用意してきますね!お風呂も焚いてきます!!!」

「頼んだ!」

 ミサラはすぐさま小屋に戻り、風呂を炊き始めた。

~~~~~~~~~~

「着替え置いときます!」

「ありがとう!そろそろ出るわ!」

ガラガラガラ・・・

 風呂と脱衣所を仕切る横開きの扉を開け、女は風呂から出た。
 ミサラは脱衣所に立っており、畳まれた着替えを棚に置くところだった。

「湯加減は如何でしたか?」

「最高だったわ!ありがとう!・・・あっ、服を貸してくれるの?」

「はい、私の物で良ければ・・・です・・・が・・・。」

 ミサラは思わず、言葉を詰まらせた。
 下着も含めて、自分の服を貸してあげる気でいたのに、サイズが明らかに合わない。

 雪まみれになって縮こまっていたので気が付かなかったが、女とミサラは体格が全然違うのだ。

 身長だけでも15㎝は違うのに、バストとヒップの差はそれ以上に歴然としている。
 成長途中なのか、それとも遺伝的な限界なのか。ミサラの体は女の豊満ボディと比べると、些か"貧相"だった。

「ありがとう・・・着替えが無くて困ってたのよ・・・!」

 長い髪をタオルで拭きながら、女は再び感謝の言葉を述べた。
 だがミサラの目線は、腕を動かすたびに揺れる巨乳に注がれ、"心ここに在らず"といった具合だ。

(うわぁ~・・・おっぱい大きいなぁ・・・私だって・・・もっと大きければなぁ・・・。)
「あ、えと・・・少し・・・キツいですよね・・・。」

 ミサラは敢えて、何がキツいのか言わなかった。
 女に気を遣って、別の服を用意しようとするが――。

「大丈夫!"我慢"するから!」

 女は穏やかな笑みと共に、ミサラに対して言った。
 だが逆を言えば、我慢しなければキツい事を自覚しているのだ。

 ここに来て、ミサラの中にある”憧れ”が、”嫉妬”に変わった。

 自分の服は、”我慢しなければ入らない”ほど小さいのか。
 自分でも分かっていた事だが、改めて他人に言われると腹が立つ。

「我慢・・・別に良いです。キツいなら、他の服を持って来るので。」

「そうなの?親切にありがとう♪・・・あ、あの・・・。」

「はい、何でしょうか。」

 ミサラは、女から新たな要求をされると思い、それとなく身構えた。
 だが彼女が言いたいのは、ほんの些細な事だった。

「そんなに見られると・・・女同士でも恥ずかしいよ・・・///」

 女はミサラの視線が、自分の胸に注がれている事に気付いていた。
 道端ですれ違う男は、ほぼ全員が彼女の胸か尻を見るので、彼女としても卑猥な視線には慣れている。

 だが彼女のように、"羨望と嫉妬"の目を向けられる事は珍しいので、羞恥心が抑え切れなくなった。
 それに加えてシャツや下着すら無しに、"生乳"を直接見られている事が、恥じらいに拍車をかけていた。

「あっ、す、すいません・・・。」
(き・・・気付かれてた・・・!)

 彼女の裸をマジマジと見つめていたミサラは、バツが悪そうに脱衣所から出て行った。
 床を踏みしめながら思うのは、”厚かましい遭難者”への八つ当たりのような怒りだけ――。

(べ、別に羨ましいなんて・・・思ってない・・・何なのよ・・・あの女!)

~~~~~~~~~~

「立派な服ねぇ・・・本当に良いの?こんなの貸してもらって・・・。」

 数分後、女は脱衣所から出て来た。
 胸元が開いた”袴”を、手で押さえながら着用している。

「その服は私の上司の物で、男物ですが我慢してください。」
(本当は貸したくないんだからね!感謝してよ!!!)

 本当は貸したくないが、仕方ないので征夜の服を渡した。
 これぐらいしか、彼女に入る服が無かったのだ。

「何だか、この服を着てると落ち着くわ♪」

(当たり前です!大佐の服なんだから!)
「下着は無くて大丈夫ですよね?」

「着物の生地は繊細だから、傷んじゃうかもだし。それなら、付けない方が良いわ。」

 ミサラは嫌がらせのつもりで言ったのだが、女は当たり前のように受け入れた。
 その態度にも、なんだか腹が立って来る。

「ベッドはあっちに有るので、早くお休みになってください。」
(ご飯なんて食べさせないから!)

 ミサラは埃塗れのベッドに、女を誘導した。
 誰かがそこで寝る必要があるのだから、致し方ないだろう。

「ありがと!おやすみなさい!」

 女は小屋の奥にある裏口の付いた部屋のベッドにて、一足先に眠りに付いた。
 心労によりグッタリとしたミサラは、女が視界から消えるとすぐに、ソファに倒れ込んだ。

(謙虚を装ってるけど、傲慢さが滲み出てるわ・・・なんか、常に見下されてる気がして嫌・・・!)

 彼女の中に、一つだけ偏見が生まれた。
 それは"ああいう肉付きをした女"とは、一生分かり合えないだろう。という事だった――。
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