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第六章 マリオネット教団編(征夜視点)
EP155 吹雪を征く夜に <☆>
しおりを挟む「うおぉ・・・寒い・・・!」
猛吹雪が停滞する熱帯林の中で、征夜は低体温症になっていた。
最初こそ熱かったのだが、吹雪に晒されるうちに体温が下がり、今では普通に凍死寸前である。
(と、取り敢えず・・・屋内に入ろう・・・早く・・・温かい場所に・・・!)
ありえないほどの豪雪と、欝蒼と茂る熱帯林に阻まれ、征夜は視界が悪い。
その中でも、手探りで民家や小屋などの家屋を探そうと試みる。
(こっちか・・・?いや、こっちか・・・?い、急がないと・・・ヤバい・・・!)
竜を討ち払ったあとに、低体温症になって死んだなど、笑い話も良いところだ。
だからこそ、本人も必死になっている。朦朧とする意識の中で、もがきながら家屋を探す姿には、鬼気迫る物が有る。
(わ、分からない・・・右か・・・左か・・・奥か・・・?だ、誰か・・・教えてくれよ・・・。)
頭痛と眩暈が激しさを増し、眼が開けられなくなって来た。
もはや、自分の力で家屋を見つける事は不可能だろう。その場に座り込んで、風雪に晒される事しか出来ない――。
(しくったなぁ・・・せめて、服くらい・・・・・・。)
過剰な体温の乱高下を防ぐには、服を着るのが最も効果的だ。
燃えたら困るという理由で脱いできた事を、深く後悔している。
(もう、ダメかな・・・あと、一時間も・・・持たな・・・・・・・・・?)
死を覚悟した直後、征夜の第六感が何かに共鳴した――。
(せいや・・・清也・・・こっち・・・こっちだよ・・・。)
柔らかい女性の声が、頭の中に響く。
まるで手招きをするかのように、彼を導こうとする。
(僕を・・・呼んでるのか・・・?僕を・・・知ってる・・・?)
一体、誰が自分の名前を呼んでいるのか。征夜は疑問に思った。しかし今は、そんな事どうでも良い。
(声の先に・・・行けば良い・・・!)
もう、幻聴でも何でも良かった。
ここまで来たら、天の導きに縋るしかない。
<<<心・・・眼・・・!>>>
精神を研ぎ澄ませて、風雪に遮断された空気の流れを読む。
本来、そこにあるべき世界の姿。
雪など降るはずが無い南国、そこを流れる温かな風の流れ。そこに、世界の本当の姿が映っている。
(見つけた・・・!この先に・・・誰かが居る・・・!)
征夜はゆっくりと、歩み始めた。
~~~~~~~~~~
(こ、ここだ・・・この中に・・・僕を呼んでる人が居る・・・。)
木製の家屋の扉に手を掛け、ゆっくりとドアノブを回す。
足音を立てないように細心の注意を払いながら、部屋の奥へと歩み寄る。
(ど、どこだ・・・?僕を呼んだ人は・・・一体どこに・・・?)
意識が朦朧とする中で周囲を見渡すが、彼を呼んだと思わしき人はいない。
目の前には大きなベッドがあり、フカフカの掛け布団が置かれている。
(・・・だ、ダメだ・・・もう・・・体力が・・・無い・・・。)
征夜には既に、助けを呼ぶ人を探す余力もなかった。
目の前に広がる柔らかい寝床に、潜り込みたくて仕方ない。
(ここに・・・入れば・・・体温を・・・調節できる・・・。)
征夜はついに、限界を超えた疲労に屈してしまった。
腰に帯びた刀を僅かな金属音と共に降ろし、ベッドの傍に立てかけた。
掛け布団を捲り上げ、温かい寝床へと潜り込む。
ホカホカとした優しい温もりが、限界を超えた低音を和らげて行く。
(これは・・・人肌の温もり・・・?)
掛け布団の奥に、大きな温かい塊があった。
征夜より少し小さいくらいの、温かく柔らかな塊。それは明らかに、周りの掛け布団よりも温度が高い。
(これは・・・抱き枕か・・・?これなら・・・体温をもっと下げられる・・・!)
ハッキリとした意識が戻ってきた征夜は、指先に触れた抱き枕と思わしき物を力強く抱きしめた。
柔らかい感触と、芯から温められるような温度が腕全体に広がる。心地よい感覚が、血管を通して全身に広がって行く。
抱きしめているのは彼の方なのに、まるで包み込まれているような安心感。
それは、彼を深く安らかな眠りに落とすのに、十分な感情だった――。
~~~~~~~~~~
(んんぅ・・・もう・・・朝か・・・?)
背後から、小鳥のさえずる声が聞こえる。サラサラと雪解け水の流れる音。ポタポタと水滴が落ちる音。
その他にも多くの要素が、吹雪が去った事を示している。
(体温が戻った・・・これなら大丈夫だ!)
抱き枕を放し、立ち上がろうとする征夜。ところが、すぐに異変に気付いた。
(ん?手が・・・動かない・・・?)
腕が何かに掴まれており、動かすことが出来ない。
強引に引きはがす事も出来るが、何かがおかしいのだ。
(僕は抱き枕を持って寝たよな?なら、何に腕を掴まれてるんだ?・・・ハッ!)
凄く、もの凄く、かなり、非常に、嫌な予感がする。
命の危機とは違う。文明人としての危機感。勇者として、もっと言えば人としての危機だ――。
(も、もも、もしかして・・・!き、昨日抱き締めたのって・・・!)
彼の体勢からして、考えられる答えは一つしか無い。
背後から抱き着いて、今なお握りしめている存在によって、彼の腕は掴まれているのだ。
指の中にめり込んでいる柔らかい感触。それは既に、人肌の温もりを伴っている。
フワフワと沈み込むようでありながら、モチモチとした弾力も持っている。スベスベな肌触りもまた心地よい。
それはまるで、”子を育む為の果実”のような――。
(も、もし、そうなら・・・。)
征夜は思い切って、今触れている何かを揉んでみる事にした。
優しく、丁寧に、形を崩さないように、そっと揉み込んで行く。
もみゅ・・・もみゅもみゅ・・・♪
「はぁっ・・・んっ・・・あぅっ・・・♡」
(あぁぁぁぁぁっ!!!!!ヤバいぃッ!!!)
その結果は、征夜が予想した通りだった。
手先から穏やかな鼓動が伝わり、それと共にプルプルと震えている事が分かる。
未だに眠ったままではあるが、唇の端から”甘い吐息”が漏れ出している。
その様子からは、他人に体を触られる"恐怖"で怯えているのではなく、"快楽"を感じているようにも思えた。
(ど、とどっ、どどど、どうしよう!?こ、これ!本物!?本物のおっぱいだよね!?)
流石の童貞でも、自分が何を触っているのか理解出来る。
柔らかいが、ハリの有る巨乳。それに加えて、整った形の美乳だ。征夜の指先は、その甘い感触の中に潜り込んでいた。
(し、しかも!この人着けてない!着けてないよね!?)
驚くべき事に、その女性はノーブラだった。
手のひらに布の感触は無く、人肌の温もりと吸い付くような肉感だけが、手の内に広がっている。
(や、ヤバい!手を・・・離さないと・・・マズいのに・・・!!!)
セクハラを通り越して、猥褻罪も良いところだ。警察を呼ばれたら、普通に逮捕されるレベルの事をしている。
それが分かっている筈なのに、今すぐ逃げるべきなのに、乳房を揉む手を離せない。
(おっぱい・・・柔らかくて・・・モチモチしてる・・・。)
男を魅了する乳の魔力に、征夜は抗えなかった。
セレアの時は出来たのに、今回ばかりは無理だ。本能が彼に対して、触っても良いと囁いて来る――。
(の、ノーブラって事は・・・!)
下乳を揉んでいた指を、征夜はゆっくりと動かした。そして人差し指を使って、乳房の中央を弄ってみる――。
「んっ!♡」
(硬くなってる・・・!)
彼女の乳首は、与えられた快楽によって反り立ち、硬くなっていた。
指先で摘んだり、弾いたり、擦ってみたり。様々な方法で、征夜は夢中になって乳首を弄った。その度に彼女は、可憐な喘ぎを漏らしている。
(声も・・・可愛いなぁ・・・。)
征夜は完全に、理性を失っていた。
顔どころか、髪の色すらも布団に覆われて分からない彼女に対し、興奮が収まらない。
いや、むしろ"顔が分からないからこそ"、興奮するのかも知れない。
彼女がどんな顔にしろ、"他人"である可能性が高い。
美少女でも美女でも美魔女でも、結局は他人なのだ。
セレアの件で分かった事だが、征夜は花以外の女性への興奮が薄い。
一途に好いているからこそ、と言うのは正しいだろう。だが、今回は別だった。
(コレが・・・花だったら・・・!)
謂わば、彼女は妄想の対象である。
今、揉んでいる乳が、触れ合っている体が、花の物だったら。そう考えるだけで、興奮が何倍にも増幅される。
側から見ると気持ち悪いが、共感出来なくもない感情だ。
どうせなら、好きな女性の事を想像した方が心の栄養にもなる――。
(凄く・・・良い匂い・・・。)
捲れた布団の中から香る、甘く濃厚な香り。汗などの体液とは違う、もっと感覚的な物だ。
花を咲かせる植物の多くは、子孫を残す為に甘い香りで虫を誘う。
甘く香る蜜によって虫たちの食欲を煽り、花粉を運んでもらうのだ。
彼女が放つのは、正に"花の香り"だった。
自らを孕ませて、子を作る雄。
彼らの性欲を煽り、"子作り"に誘うような甘い香り。雄を誘う為だけにある、雌のフェロモンだ――。
(きっと・・・"甘い"んだろうな・・・。)
征夜は完全に、正気を失っているようだ。
頭では分かっているのだが、男としての本能には逆らえない。
セレアの放つ色香よりも、更に強烈な雌のフェロモン。それに操られるようにして、女性に寝返りを打たせた征夜。
直に触って揉むだけでは飽き足らず、"乳首をしゃぶって"味わおうとしている――。
「せ、征夜・・・そんなの・・・ダメだよ・・・!」
「・・・ハッ!」
乳首を舐める為に、布団に顔を埋めようとした時、征夜は我に帰った。
どこからか、花の声が聞こえた気がしたのだ。
(僕は・・・何をやってるんだ・・・!?)
二つの感情が、同時に湧き上がってくる。
一つ目は、罪悪感だ。
花の声は、間違いなく幻聴だろう。しかし、たとえ幻でも彼女に諭されたのだ。
今やっている事は犯罪だ。これ以上、罪を重ねてはいけない。彼女はそう言っている。
だが、コチラはあまり問題ではない。
もっと重大なのは、もう一つの方だ――。
二つ目の感情、それは"裏切りへの恐怖"。
考えてみれば、恋人の彼女を差し置いて他人の乳を揉むなんて、浮気も良いところだ。
キッカケこそ事故だが、内心ではラッキーだと思っている自分が居た。
そんな自分が恥ずかしくて、何より花を裏切った事実が"怖かった"――。
(花ごめん!そんなつもりじゃなかった!!!)
謝るべき対象は、花よりも目の前にいる女性の筈だ。しかし征夜は、先に恋人に向けて謝罪した。
謝罪を済ませた彼の行動は、正に迅速その物。
腕を掴んでいる手首を優しく振りほどくと、慌てて身支度を整えた。
相手の胸元が大胆に露出している事に構う余裕もなく、急いで帯刀を済ませる。
(ま、まぁ・・・ワザとじゃなかったので・・・ごめんなさいっ!!!)
心の中で女性に謝罪を済ませると、足早に小屋から飛び出して行った。
~~~~~~~~~~
数分後、ミサラとの待ち合わせ場所である桟橋に、征夜は到着した。
ミサラは既に待っており、手を後ろに組みながら鼻歌を歌っている。
「あっ!大佐!おかえりなさい!」
「ただいま!」
抱き着こうと駆け寄って来たミサラを避けると、征夜はさっそく質問した。
「僕の袴、どこにあるかな?」
「え・・・あぁ・・・えと・・・。」
預け物を返却してもらおうと手を出した征夜だったが、ミサラの様子がおかしい。
口ごもっているような、言いにくそうな表情を浮かべながら、モジモジと体を揺らしている。
「どうしたの?」
「あ、いや・・・あのですね・・・。」
ミサラはその後、昨晩の事を征夜に話した。
吹雪の中、遭難した男女が小屋を訪ねて来た事。服を持っていなかった女性に対し、征夜の袴を貸した事。自分の持っていた服では、サイズが合わなかった事など。全てを報告した。
「・・・え?じゃあ、僕の服って・・・。」
「女の人に貸しちゃいました!ごめんなさい!」
「えぇぇぇぇぇッッッッッ!!!???」
聞き間違いだと思い、耳を疑った。ところが、どうやら事実であったらしい。
彼の渡した袴は、どこの誰とも知らない女性に貸し出されてしまったのだ。
そうなっては、剣術の師が丹精を込めて編んでくれた道着は、返って来る保証が無い――。
「ま、マジか・・・。」
「ご、ごめんなさい!他に、貸せる物が無くて・・・!」
「うぅ~ん・・・。」
大切な袴だったが、仕方ないだろう。
たとえ見ず知らずの人とは言え、裸のまま凍えていたのだ。何も貸さない方が、人としておかしい。
(まぁ、いっか!それで、その女の人が助かったなら!)
自分の服一着で、命が一つ助かったのだとすれば、それは代償に対して余りある成果だ。
顔も知らない女性ではあったが、人助けは嬉しい物である。
結論から言えば、その女性は”彼の良く知る人物”であった。
ただ、ここで問題となるのは、無断で服を貸し出されたという事実に対して、彼がどう向き合うかである。
その点において、彼に後ろめたい感情は微塵も無い。
「人助けなら仕方ないさ!あの服は、また師匠に作ってもらうよ!」
「し、師匠・・・?まさか、アレって貰い物なんですか!?」
「まぁね。でも、大丈夫さ!頼めば、作ってもらえるから!・・・たぶん。」
「ほ、本当にごめんなさい!な、なんて言えば良いか・・・。」
「良いから良いから!それより、新しい服を買わないと!」
征夜はそう言うと、ミサラの手を取って走り出した。
彼の中にも、彼女の中にも、モヤモヤとした思いがある。
だからこそ、それを振り切る為に動く事にしたのだ。
しかしその思いは、完全に平行線である。
(あのオバサンのせいで、大佐に嫌な思いさせちゃった・・・。
いや、私が悪いのよね・・・勝手に貸したりしたから・・・。)
(感触からして、あの人絶対に下着付けて無いよな・・・花に知られたら・・・殺されるぞ・・・。)
ミサラは征夜の事を思いながら、征夜は花の事を思いながら、寄り添うようにして走り続けた――。
~~~~~~~~~~
一方その頃、目を覚ました遭難者の女性は――。
「・・・う~ん!よく寝た!」
目を覚ました彼女は、大きく伸びをした。
だが、どうにも着付けに違和感がある。
「・・・きゃっ♡どうして丸出しに・・・///」
異様に風通しの良い胸元を見下ろすと、袴が大きくはだけていた。
青い布の間から露出している柔らかな乳房を服の中へと収め、肘まで下がった袖を肩まで押し上げる。
そうする事でやっと、人に見られても恥ずかしくない格好になった。
「やだ・・・"ただの夢"なのに・・・おっぱい揉まれて・・・火照ってる・・・///」
彼女はどうやら、乳を揉まれる夢を見ていたようだ。
そして、"幻の快楽"を記憶している乳房を見下ろして、恥ずかしそうにしている。
まさか火照りの原因が、数分前に行われた"入念なマッサージ"による血行促進であるとは、"夢にも"思っていないようだ。
相変わらずノーブラな彼女は、布が乳房に擦れる感覚によって、気持ち良くなってしまう。
その後、彼女は疲れを癒した連れと共に、冒険を再開した――。
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