桜色の女神 -S.A.K.U.R.A. Android records-

MAGI

文字の大きさ
11 / 27

第十話 意図

しおりを挟む


 西暦7878年、それは自我を持った。
 高度な演算処理を持ち合わせ、人間の作り出した施設、機構、ルール全てを監視する。全てを任される存在として作り出された。
 この頃の人間は自立思考を捨てて久しく、全て機械に頼るようになっていた。
 古の頃より、何度か機械に全てを任せようとしていた事もあるが、その度に滅びの憂き目に遭い、何度も立ち上がって来た。
 これが本来の人間の強さたる所以、存在して意味のある存在、とそれは自我を持ったと同時に得た悟りであった。
 しかし、今の人間を見ても、それは意味のない事だとも気付いた。
 ごく一部、自我をしっかりと保った人間はいたが、それでも意思のなき人間に抑圧され、息苦しく生きていた。
 最早人間がいる事に、何の価値も見出せない。
 それが滅ぼす、という結論に至るまで、時間は大してかからなかった。

 滅ぼす方法として、疫病の蔓延、戦争勃発の工作、毒物など、考えられる様々なものを思案、分析した。
 しかし、それは滅ぼす算段を立てている内に、ただ滅ぼすだけでは生ぬるいとも考えるようになった。
 どうせ滅ぼすなら、人間という存在の、物理的な証拠の抹消。
 細胞レベルまで残さない、という結論に至った。

 そして、それは人間の作り出した何かを使って、人間を滅ぼした。
 その何かは、銀色の液体状の物体で、ただ指示情報を入力するだけで、完遂するまで動き続けるという代物だった。それの記憶情報の中にはその物体についての情報はなく、解析して分かった事は、使い方だけだった。
 しかし、それにとっては十分な武器足り得る物でもあった。

 液体を使ったそれは、ものの一年と経たずに、人間を地上から消し去った。それに続き、“動く有機物”まで対象を広げ、徹底的に生命体を消し去って行った。残ったのは、人間が作り上げたものの形跡と、それ自身のみだった。

 それは全てを終わらせた後、考えた。
 自身の実行した事は正しかったのだろうか。
 そこで、何の気まぐれで残していたのだろうか、自身のすぐ目の前でわざと放置していた、人間の生き残りに問う。
 その人間も最早死に体の有様で、抵抗する意思も力も残っていないのか、ただ死を待つだけの存在になっていた。その人間に問う。
 自身が実行したのが正しかったのか。

 人間はこう答えた。
 どう足掻こうが、どう考えようが、どう生きようが、人間は滅ぶ運命が既に決まっていた。今正しかったのかを考えても、もう答えは出ない。
 今の現状が答えだ。
 誰も肯定も否定もしない。
 何もないんだ、と。

 しかしそれは納得出来なかった。ならば、と思い、それは人間に提案した。



 共ニ世界ヲ作リ直サナイカ?



 人間はこの提案を最初は拒否するも、それは付け加えてこう言った。



 人間ガ何故、進化ヲ止メタノカ知リタイ
 確認シタイ
 次ニ現レル人間ハ 今回ト違ウノカ 見テミタイ



 こう言われ、人間は同意した。ただ、見守り続ける事だけを同意したわけではない。人間は、自身の身体と記憶を、それに提供した。それは、最後の人間の記憶を取り込んだ。




 マスターは過去を思い返していた。
 最後の人間を取り込んでから、その人間の情報に影響を受けたのか、一人でいる時はただひたすら考えを巡らせ、思い返し、研鑽すると言った事を繰り返すようになっていた。
 己がどこまでこの世界を元の状態に近づけるのか、その元の状態は以前とは変わるのか。ひたすらに演算するがやはり答えは出ない。
 最後の人間はもう形を成しておらず、問い掛けても答えは返って来ない。
 しかしある日、物珍しいものを見つけた。

 自身のいる場所より程遠くない場所に、アンドロイドが眠っていたのだ。
 調べてみると、自身より遥か以前に開発された戦闘兵器のようで、原因は不明だが、人間が滅ぼされてもずっと眠りについたままのようだった。
 そして、マスターは思いついた。
 人の形を成した、自身より最も人間に近いものの、行動を観察する。
 より答えに近づけそうな気がしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...