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しおりを挟む私は立ち上がってバイオリンを構えた。
演奏を始めると前世で聴き慣れていた音が部屋に響き渡った。
(楽しいなぁ)
演奏が終わると二人が拍手をしてくれた。
「聴いてくださりありがとうございます!」
「とても綺麗な音色でしたよ!奥様!」
「あんなに綺麗な音が出るものなのか。それに今日初めての楽器をあんなにも使いこなせるとは!」
二人ともとても喜んでくれた。
「そう言えば、代金の方はどれくらいですか?」
私がトールさんに聞くと、彼は思い出したようにこちらを向いてこう言った。
「実はそのことで話があるんです。最初はお金を支払って貰おうと思っていたのですが、今の演奏を聴いて気が変わりました。この楽器を作る権利をこの店以外に渡さないで欲しいのです」
トールさんが頭を下げてお願いして来た。
つまり、特許のようなものが欲しいと言うことだろうか?
「それは……あなたの利益にならない気がするのですが?」
「そんなことはありません。夫人はこの先、社交界のパーティーなどでバイオリンを披露なさるのでしょう?」
どうやら彼は私が公爵様との結婚パーティーで大失敗してから社交界に出ていないことを知らないらしい。騙してしまうような気もするけど、これからは社交界にも出ようと思ってるから。
「はい、そのつもりです」
「それなら、バイオリンはこれから国中に広がるでしょう。その時に私だけがバイオリンを作る権利を持っていたらどうでしょう?」
「そうですか。それくらいならいいですよ」
これは、バイオリンを流行らせないといけなくなってしまった気がする……
「それでは、作成の権利書はこの場で作りましょうか?」
この世界における特許は市場に出回っていないものを新しく作った人に与えられるから私が書類を何枚か作ればその時点で私が許可した人以外はバイオリンを作れなくなる。
「お願いします」
「では、書類用の紙とペンを貸してくださる?」
私は1時間ほどかけて作った書類を彼に渡した。
「ありがとうございます!もちろんバイオリン制作で得られた利益の一部は奥様に渡します」
「そんな、お気になさらずとも良いのですよ」
「そういう訳には行きませんのでどうか受け取って下さい」
「分かりました」
そもそもバイオリンの制作で利益が出るかも分からなかったから私は承諾した。
「では、私たちはこれで失礼します。ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
無事にバイオリンを受け取って満足した私は屋敷に帰ることにした。
***
「ハーベル、最近私の妻の様子が変わったと思わないか?」
「……たしかにそうですね。以前よりも明るくなられて、今日のように外出も頻繁にされるようになりましたし……」
(どうしたんだ?今まで夫人のことを気にかけたことも、ましてや貴族の決まりである"共に夕食を取る"ことも含めて一切の関係を持とうとしなかった公爵様が夫人の変化に気づいているのだろうか?)
「ところで、私の妻は今日どこに行ったのか?」
「楽器屋に行くと言っていました」
「楽器屋に?もしかしてもう一度社交界に出るつもりなのだろうか?」
「それは考えにくいですね。奥様は公爵様との結婚パーティーで失敗してからそのことがトラウマになっているようでしたし」
「そうだろうな。まあ、彼女が社交界に出なくても特に困ることはないからいいが」
***
「奥様、着きましたよ、あっ……久しぶりの外出で疲れたのですね」
「……あれ?私寝てたのかしら?」
「そろそろ夕食の時間ですけど、どうしますか」
「行くから安心して」
「分かりました。では、急いでお着替えのほうを済ませましょう」
今すぐにでもバイオリンを弾きたかったけど夕食の時間になってしまった。
私が食堂に行くたとすでに公爵様が居た。
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