気弱な公爵夫人に転生しました

randge

文字の大きさ
9 / 11

9

しおりを挟む







私がバイオリンを弾いているとアリアが少し控えめにこう言った。

 「奥様……私もバイオリン、触ってもいいですか?」
 「もちろんいいわよ」
 (やっぱりこの世界にない楽器なんだから興味あるわよね)
 「ありがとうございます」

 アリアは申し訳程度にしか触れようとしなかった。

 「もっと触っていいのよ?どうせならちょっとだけ弾いてみる?」
 「いっ、いえそんな、大丈夫です」
 「遠慮しないで」
 「では、少しだけ……」

 私は簡単にバイオリンの弾き方を教えた。例えば、基本のフォーム、弓を引くと音が鳴ること、弦を押さえて音程を変えられることなど。

 「似合ってるわよ」

 アリアがバイオリンを構えた姿が意外と様になっていた。

 「そうですか?」

 アリアが弓を引くとノイズが入って掠れた音が出てきたから、彼女はすぐに手を止めた。

 「あれ?」
 「弦を押さえる力はもう少し強めにして、弦と弓が平行になるようにしてみて」
 「こうですか?」
 「そんな感じよ。弾いてみて」

 今度は少しノイズが入ってはいるもののいい感じの音が出た。

 「出ました!」

 そう言いながらアリアは何度か音を出した後私に返した。

 「ありがとうございました!糸と糸だけで音が出るなんて不思議です」
 「気に入った?」
 「はい、とても気に入りました!」
 「買ってあげようか?」

 私は結構本気で言った。
 一人だけでバイオリンを弾くのもいいけど二人で弾いた方が楽しいはず。

 「そんなっ、流石に申し訳ないです」
 「別に遠慮しなくてもいいのよ。この屋敷で私の味方だったのはあなただけだったから贔屓したくなっちゃうの」
 「ですが……」
 「そう言えばあなたはまだ楽器の練習してないわよね」
 「社交界で使うものだったらまだです」

 アリアは子爵家の出身で、貴族の女性は基本的に社交界に出たら自分の演奏を披露する機会が何度もあるからアリアにバイオリンを進めようと思った。

 「じゃあバイオリンにしたらどう?」
 「たしかにそうしたいですけど……買ってもらうのはやっぱり申し訳ないです」

 そんな会話を何度か繰り返して結局アリアの方が折れてくれた。

 「私と同じのでいい?」
 「同じのでお願いします」

 トールさんのところへバイオリンを注文する手紙を書いた。

 「それでは私は仕事がありますのでそろそろ失礼します」
 「付き合ってくれありがとね」
 「こちらこそ、ありがとうございました!」

 そうして、アリアがいなくなった後もバイオリンを楽しんでいる夕食の時間がやってきた。

 「奥様、夕食の時間になりましたのでお迎えに来ました」
 「今行くわ」

 部屋の外に待っていたのは最近はかなりおとなしくなったヴィオラだった。

 「不思議な音ですね」

 食堂に向かっている途中でヴィオラが唐突に口にした。

 「え?」
 「最近奥様の部屋から聞こえてくる音です」
 「聞こえてた?」
 「はい、かなり」
 (前世の癖で部屋が防音だと思い込んでた……これからは気をつけないと)
 「最近珍しい楽器を始めたのよ」
 「そうなんですか」


 私が食堂に着くと今日も公爵様の方が早く着いていた。

 「最近早いですね、どうかしたのですか?」
 「いえ、偶然です」
 「そうですか……」

 多分本当に偶然なのだと思う。
 いつものように食事を始めると公爵様が口を開いた。

 「最近使用人との間でトラブルが起きているようですね」
 「どうしてそんなことを?」

 たしかにトラブルは起きているけど前よりはましになっている。

 「実は今日侍女長が新しく入った使用人の態度が悪いのにあなたが辞めさせようとしないと騒ぎ立てていたので」
 「そうですか……彼女たちをどうするおつもりなのですか?」
 「どうするも何も、私は侍女長の話は信じていませんからあなたに任せます。新しいし使用人が来てから屋敷の手入れが行き届くようになった気がしますから」
 「わかりました。ありがとうございます」

 「そう言えば……最近楽器を始めたのですけど、音が聞こえたりしてますか?」

 公爵様には今度のの結婚記念のパーティーでサプライズをしようと思っているからバイオリンの存在を気づいて欲しくなかった。
 サプライズと言っても別に私が公爵様のことが好きと言うわけではなくて……ただ屋敷での立場を安定させるため。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処理中です...