元ゲーマーのじいじ、気ままなスローライフを始めました〜じいじはもふもふ達の世話係です〜

k-ing /きんぐ★商業5作品

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33.じいじ、勘違いされる

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「あいつはいないか?」
『にゃ!』

 わしは玄関から外の様子を眺めて外に出る。
 セーフティーゾーンだとわかってはいるものの、アルミラージには会いたくないからな。
 それはポンも同じなのか、どこか警戒をしている。
 ネコってわしが思っていたよりも、独占欲が強いようだ。

「じいじ、ここを畑にしたらどうかな?」

 そんなわしらとは異なり、ハルキは特に気にしていないのか、外に出て地面に線を引いている。

「畑か……」
「じいじ、前にやりたかったって言ってたもんね!」

 ハルキはわしが畑をやりたかったことを覚えていたようだ。
 本当にじいじ思いだな……。

「あっ、ちょうど畑にするのにいい種を持っていたな」

 わしはインベントリから種を取り出す。

【アイテム情報】

アイテム 魔法の種
詳細 おいしいにんじんができる
   好んで食べる種族もいる

 どうやら美味しいにんじんができる種のようだ。
 ただ、にんじんって初心者には難しいと聞いたことがある。

 畑初心者がちゃんと食べられるものができるとは思っていない。
 だが、少しでもゲーム補正で難易度は簡単になっているだろう……たぶん?
 このゲームって思ったよりリアルに作られているからな……。

「とりあえず埋めてみるか」

 少し不安に思いながらも、土をできる限り柔らかくして種を埋めることにした。

「大きく育てよー!」
「育てよー!」
『にゃー!』

 おまじないもかけたため、これでちゃんとしたにんじんができるだろう。

「そろそろログアウトの時間か」

 表示されている時計はそろそろ夕方になってきた。

「はぁー、ポン寂しいね」
『にゃー』

 ポンも寂しいのか、ハルキの足元にベッタリとくっついている。

「明日は調味料を買いに行こうか」
「魔物もたくさんあるから売らないとね」

 隠しの家でログアウトができても、お金が必要なのは変わらない。
 明日はインベントリの中にいる魔物を売ってお金にしよう。
 それで調味料を買えば、ここでしばらくは生活できるからな。
 せっかくゲームをやっているのに、スローライフをしているがハルキが楽しめているならそれで良い。
 わしはハルキの子守りをするのが目的だからな。

「じゃあ、また同じ時間に集合じゃな!」
「じいじ、明日はリハビリの日だからね」
「あっ……そうか」

 明日は午前中に鬼畜ドSの兄ちゃんがリハビリをしにくる日だ。
 あいつは週に2回もわしをいじめに来るからな。

「だから明日はお昼ご飯を食べてからだね!」
「ああ。ポンもハルキを守ってくれよ」
『にゃー!』

 任せてくれと言わんばかりに立ち上がり、胸に手を当てて、ポンと叩いた。
 本当にこのゲームのワールドボスは不思議だな。

「またな!」

 わしはハルキとポンに別れを告げてログアウトした。
 

 ♢ ♢ ♢


「松永さん、ゲームは楽しめてますか?」
「くっ……」

 翌日、リハビリの兄ちゃんは笑いながら、わしに聞いてきた。
 ここは楽しくないって答えたいが、実際久しぶりにやったゲームは楽しかった。
 それに孫の顔が毎日見えるって想像以上に幸せだ。

「そういえば、ワールドボスがテイムされたの知ってますか?」
「ギクッ!? そそそ、そんなの初心者は知らないぞ?」
「くくく」

 兄ちゃんは笑いを堪えながら、わしの足をマッサージしていく。
 硬くなった筋肉を一度柔らかくしてからじゃないと、わしは歩くリハビリができないからな。
 毎日たくさん歩いた感覚はあるのに、現実は足を一歩出すことすら大変だ。

「なんでもこの間、町にベヒモスが出てきた時に隣におじいちゃんがいたのが、話題になっているらしいですよ」
「はぁん!?」
「そのおじいちゃんがベヒモスをテイムしたんじゃないかってネットではもちきりですよ」

 ハルキはわしよりも小さいから、ポンが大きくなった時に隠れていたのだろう。
 わしがポンをテイムしたって――。
 どちらかといえば、ポンには嫌われている方だ。
 まぁ、変なことに巻き込まれることがないならそれでいいか。

「よし、今日も歩きますからね」
「鬼畜ドS」
「ん? 何か言いましたか?」

 兄ちゃんは都合が悪い時ほど耳が遠くなる。
 わしよりもよっぽど年寄りじゃないか。

「ははは、今日はいつもの倍歩きましょうかねー」

 やっぱり兄ちゃんは鬼畜ドSだった。
 だが、今日のリハビリはいつもより足が出やすくなったように感じたのは気のせいだろうか。
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