44 / 58
44.じいじ、ほのぼのな日常
しおりを挟む
「じいじ、こっちは終わったよー!」
「まさかゴマが畑名人だったとはな……」
ニンゴラが撒き散らした種を集めて、いざ畑に埋めようとしたが、土が硬くて手こずっていた。
どうしたものかと悩んでいると、ゴマとカナタが追いかけっこをしていた時にある発見があった。
カナタが転んだ拍子に、ゴマの角が地面に突き刺さり、そのまま引き抜くと──その場所だけが、なぜかふっくらと土が柔らかくなっていた。
「これだ!」と、わしらは試しにゴマに土を耕してもらうことにした。すると、見事にふかふかの畑が完成した。
「ゴマ、すごいね!」
『キュー!』
褒められて上機嫌のゴマは、それ以来「じいじ狩り」よりも畑仕事に夢中になった。
『この畑、オレのホームだぜ! 土に還るその日まで、〝にんじん生〟を全うするゴラ!』
「もう、わりと土の中に帰ってるけどな?」
ニンゴラも畑がすっかり気に入ったらしく、最近は土の中で生活することが増えた。
部屋の中でうるさくないのはありがたいが、夜になっても外は騒がしいらしい。
ダジャレリサイタルをしているとポンとゴマが言っていた。
『光が足りない? そんなの、オレのギャグで照らせば〝問題ナッシング〟だゴラァ!』
どうやらニンゴラは、光合成はしないが、土の中でダジャレを吸収して栄養にしているようだ。
最近、ハルキとカナタは毎日交互にダジャレを言い続けている。
微笑ましいような、うるさいような、そんな日常を過ごしていた。
ちなみにあれから一度も町に行ってない。
ゴマがいろいろなものを運んでくれるうえ、カナタの不思議な力を使えば、あっという間に収穫できる畑が出来上がってしまうのだ。
今日はさつまいもを収穫する予定だ。
「じいじ、これも普通のさつまいもだね」
「ああ、普通でよかった」
ニンゴラのような精霊が現れるかと思ったが、土の精霊はニンゴラだけだった。
どうやらニンゴラが特殊な精霊らしい。
毎日畑を耕して、野菜を収穫しては、みんなでご飯を作ってと楽しい日々を過ごしている。
だが、ハルキが学校に行った様子はない。
それにカナタも同じ時間にログインしているため、学校には行っていないのだろう。
じいじと遊んでいるばかりではなく、学校でしか学べないこともあると思うが、それを決めるのは二人だ。
わしは二人を優しく見守ることしかできないでいる。
「ねぇ、おじいさん……」
「どうしたんだ?」
カナタは何かを見ているのか、わしらに共有をしてきた。
「【緊急クエスト:畑の奪還作戦? 町から消えた野菜の謎?】」
「うん……。僕たちの知らないところで町の野菜が消えているんだって」
カナタがわしらに見せてきたのは、他のプレイヤーが配信している動画だった。
どうやらわしらの知らないところで町から野菜が消えているようだ。
その原因をプレイヤーたちが突き止めたらしい。
町に行っていないわしらは緊急クエストというものが出ていることを知らなかった。
そもそもクエストを受ける気もなく、隠居生活みたいなことをしていたからな。
「みんなの野菜がなくなったら、どうなっちゃうかな?」
「生活習慣病になるんじゃない?」
ハルキとカナタはこれからのことを考えているようだ。
将来がないわしはそんなこと考えてないからな……。
「さすがにそこまで野菜がなくなるってことは――」
動画に映し出された町の光景には、野菜が一切見当たらず、肉ばかりが並ぶ店が映し出されていた。
その背後で、小さな魔物がプレイヤーに立ち向かっている姿が映り込んでいた。
【魔物情報】
名前 ヤサイズーキー
詳細 野菜の葉を好んで食べる、小さな羽音を立てて飛ぶ虫型魔物。群れで行動し、畑や町の野菜を一気に食べ尽くす。
属性 土属性
「なんか……焦って作ったような名前だな」
まるで何か理由があって、魔物をすぐに作ったような名前をしていた。
「まさかゴマが畑名人だったとはな……」
ニンゴラが撒き散らした種を集めて、いざ畑に埋めようとしたが、土が硬くて手こずっていた。
どうしたものかと悩んでいると、ゴマとカナタが追いかけっこをしていた時にある発見があった。
カナタが転んだ拍子に、ゴマの角が地面に突き刺さり、そのまま引き抜くと──その場所だけが、なぜかふっくらと土が柔らかくなっていた。
「これだ!」と、わしらは試しにゴマに土を耕してもらうことにした。すると、見事にふかふかの畑が完成した。
「ゴマ、すごいね!」
『キュー!』
褒められて上機嫌のゴマは、それ以来「じいじ狩り」よりも畑仕事に夢中になった。
『この畑、オレのホームだぜ! 土に還るその日まで、〝にんじん生〟を全うするゴラ!』
「もう、わりと土の中に帰ってるけどな?」
ニンゴラも畑がすっかり気に入ったらしく、最近は土の中で生活することが増えた。
部屋の中でうるさくないのはありがたいが、夜になっても外は騒がしいらしい。
ダジャレリサイタルをしているとポンとゴマが言っていた。
『光が足りない? そんなの、オレのギャグで照らせば〝問題ナッシング〟だゴラァ!』
どうやらニンゴラは、光合成はしないが、土の中でダジャレを吸収して栄養にしているようだ。
最近、ハルキとカナタは毎日交互にダジャレを言い続けている。
微笑ましいような、うるさいような、そんな日常を過ごしていた。
ちなみにあれから一度も町に行ってない。
ゴマがいろいろなものを運んでくれるうえ、カナタの不思議な力を使えば、あっという間に収穫できる畑が出来上がってしまうのだ。
今日はさつまいもを収穫する予定だ。
「じいじ、これも普通のさつまいもだね」
「ああ、普通でよかった」
ニンゴラのような精霊が現れるかと思ったが、土の精霊はニンゴラだけだった。
どうやらニンゴラが特殊な精霊らしい。
毎日畑を耕して、野菜を収穫しては、みんなでご飯を作ってと楽しい日々を過ごしている。
だが、ハルキが学校に行った様子はない。
それにカナタも同じ時間にログインしているため、学校には行っていないのだろう。
じいじと遊んでいるばかりではなく、学校でしか学べないこともあると思うが、それを決めるのは二人だ。
わしは二人を優しく見守ることしかできないでいる。
「ねぇ、おじいさん……」
「どうしたんだ?」
カナタは何かを見ているのか、わしらに共有をしてきた。
「【緊急クエスト:畑の奪還作戦? 町から消えた野菜の謎?】」
「うん……。僕たちの知らないところで町の野菜が消えているんだって」
カナタがわしらに見せてきたのは、他のプレイヤーが配信している動画だった。
どうやらわしらの知らないところで町から野菜が消えているようだ。
その原因をプレイヤーたちが突き止めたらしい。
町に行っていないわしらは緊急クエストというものが出ていることを知らなかった。
そもそもクエストを受ける気もなく、隠居生活みたいなことをしていたからな。
「みんなの野菜がなくなったら、どうなっちゃうかな?」
「生活習慣病になるんじゃない?」
ハルキとカナタはこれからのことを考えているようだ。
将来がないわしはそんなこと考えてないからな……。
「さすがにそこまで野菜がなくなるってことは――」
動画に映し出された町の光景には、野菜が一切見当たらず、肉ばかりが並ぶ店が映し出されていた。
その背後で、小さな魔物がプレイヤーに立ち向かっている姿が映り込んでいた。
【魔物情報】
名前 ヤサイズーキー
詳細 野菜の葉を好んで食べる、小さな羽音を立てて飛ぶ虫型魔物。群れで行動し、畑や町の野菜を一気に食べ尽くす。
属性 土属性
「なんか……焦って作ったような名前だな」
まるで何か理由があって、魔物をすぐに作ったような名前をしていた。
42
あなたにおすすめの小説
七億円当たったので異世界買ってみた!
コンビニ
ファンタジー
三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。
ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。
「異世界を買ってみないか?」
そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。
でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。
一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。
異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』
チャチャ
ファンタジー
毎日ドタバタ、でもちょっと幸せな日々。
家事を終えて、趣味のゲームをしていた主婦・麻衣のスマホに、ある日突然「スキル習得」の謎メッセージが届く!?
主婦のスキル習得ライフ、今日ものんびり始まります。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~
草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
黒き狼の神獣ガルーと契約を交わし、魔人との戦争を勝利に導いた勇者が天寿をまっとうした。
勇者の養女セフィラは悲しみに暮れつつも、婚約者である王国の王子と幸せに生きていくことを誓う。
だが、王子にとってセフィラは勇者に取り入るための道具でしかなかった。
勇者亡き今、王子はセフィラとの婚約を破棄し、新たな神獣の契約者となって力による国民の支配を目論む。
しかし、ガルーと契約を交わしていたのは最初から勇者ではなくセフィラだったのだ!
真実を知って今さら媚びてくる王子に別れを告げ、セフィラはガルーの背に乗ってお城を飛び出す。
これは少女と世話焼き神獣の癒しとグルメに満ちた気ままな旅の物語!
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる