22 / 281
第一章 外れスキル
22.落ちぶれた冒険者
しおりを挟む
俺はそれまでの空き時間に薬草の本を広げて、胸元にいるコロポに話しかけた。
「これはマナ草じゃな!」
「マナ草?」
「前いた川の中とかに生い茂っていたぞ」
「へー、そうなんだ」
絵だけはわからないところをコロポが適宜教えてくれたため意外にも勉強が捗っていた。
ある冒険者が俺に声をかけてきていた。
その人は鎧にハンマーと盾を背負っておりいかにも前衛職の装備だった。見た目からして強そうな男だ。
「おい、坊主!」
「はい!?」
急に声をかけられたため俺はその場でビクッとしてしまった。コロポは姿を消す魔法を使っているため、向こうからは一人でぶつくさと話しながら勉強しているやつに見えたのだろう。
「お前そんなの見てても勉強になんねーだろ?」
「んー、絵は載ってるから大丈夫――」
俺は長いこと森に住んでいたコロポ大先生がいるから問題なかった。むしろ変に冒険者に絡まれる方が安全だ。
「そうか、俺が教えてやる!」
「えっ?」
俺と男の声は被っていた。この男は何が目的なんだろうか。
「別に……」
俺が断ろうとすると鎧の男は少し落ち込んだ表情をしていた。その姿がさっきまで一生懸命予約を取っていたギルドマスターに見えた。
「じゃあお言葉に甘えて――」
「よし、任せろ!」
鎧の男の変わりように俺は笑いが止まらなかった。しかも話している最中に遮ったのだ。このパターンは俺が断っても教えようとするお節介系の人なんだろう。
「それで、坊主に相談なんだが……」
「はい」
俺はやはりこのパターンなんだと思った。
「俺にもマッサージをしてくないか? ただ今金が無いから知識と引き換えに頼む」
そう言って男は俺に頼み込んできた。
「マルクスさん体調大丈夫なんですか?」
すると遠くで見ていたスターチスが声をかけてきた。
「ああ、スターチスか。いや、まだなんとも言えないな」
どこかマルクスの表情は暗かった。
「マルクスさんってここのギルドで唯一いるAランクなんだ。ここ数年間で体調崩してBランクになっちゃいましたけどね」
スターチスの紹介に鎧の男は下唇を噛み血が滲み出ていた。
それを見たスターチスはすぐにマルクスに謝っていた。悪気はないのだろうが言うタイミングというものがあるだろう。
「すみません。私が勝手に言ってしまって……」
「ああ、間違いではないから気にするな」
それでもマルクスの表情はどこか暗かった。
「それで小僧が良ければ俺にマッサージをしてもらえないか? 装備を売れば金になるがまだ冒険者を諦められなくてな。お願いだ!」
マルクスは俺に頭を下げると辺りからは『落ちぶれた』『ついに若いやつにも頭下げやがった』と冷たい声と視線が浴びせられていた。
立派な冒険者で大の大人がここまでして自分を頼って頭を下げている。
そんな姿を見て俺は自身の出来ることをやろうと心に決めた。
「僕が出来る限りで良ければやりましょう!」
これが俺にとって初めての異世界での師匠マルクスとの出会いだった。
「これはマナ草じゃな!」
「マナ草?」
「前いた川の中とかに生い茂っていたぞ」
「へー、そうなんだ」
絵だけはわからないところをコロポが適宜教えてくれたため意外にも勉強が捗っていた。
ある冒険者が俺に声をかけてきていた。
その人は鎧にハンマーと盾を背負っておりいかにも前衛職の装備だった。見た目からして強そうな男だ。
「おい、坊主!」
「はい!?」
急に声をかけられたため俺はその場でビクッとしてしまった。コロポは姿を消す魔法を使っているため、向こうからは一人でぶつくさと話しながら勉強しているやつに見えたのだろう。
「お前そんなの見てても勉強になんねーだろ?」
「んー、絵は載ってるから大丈夫――」
俺は長いこと森に住んでいたコロポ大先生がいるから問題なかった。むしろ変に冒険者に絡まれる方が安全だ。
「そうか、俺が教えてやる!」
「えっ?」
俺と男の声は被っていた。この男は何が目的なんだろうか。
「別に……」
俺が断ろうとすると鎧の男は少し落ち込んだ表情をしていた。その姿がさっきまで一生懸命予約を取っていたギルドマスターに見えた。
「じゃあお言葉に甘えて――」
「よし、任せろ!」
鎧の男の変わりように俺は笑いが止まらなかった。しかも話している最中に遮ったのだ。このパターンは俺が断っても教えようとするお節介系の人なんだろう。
「それで、坊主に相談なんだが……」
「はい」
俺はやはりこのパターンなんだと思った。
「俺にもマッサージをしてくないか? ただ今金が無いから知識と引き換えに頼む」
そう言って男は俺に頼み込んできた。
「マルクスさん体調大丈夫なんですか?」
すると遠くで見ていたスターチスが声をかけてきた。
「ああ、スターチスか。いや、まだなんとも言えないな」
どこかマルクスの表情は暗かった。
「マルクスさんってここのギルドで唯一いるAランクなんだ。ここ数年間で体調崩してBランクになっちゃいましたけどね」
スターチスの紹介に鎧の男は下唇を噛み血が滲み出ていた。
それを見たスターチスはすぐにマルクスに謝っていた。悪気はないのだろうが言うタイミングというものがあるだろう。
「すみません。私が勝手に言ってしまって……」
「ああ、間違いではないから気にするな」
それでもマルクスの表情はどこか暗かった。
「それで小僧が良ければ俺にマッサージをしてもらえないか? 装備を売れば金になるがまだ冒険者を諦められなくてな。お願いだ!」
マルクスは俺に頭を下げると辺りからは『落ちぶれた』『ついに若いやつにも頭下げやがった』と冷たい声と視線が浴びせられていた。
立派な冒険者で大の大人がここまでして自分を頼って頭を下げている。
そんな姿を見て俺は自身の出来ることをやろうと心に決めた。
「僕が出来る限りで良ければやりましょう!」
これが俺にとって初めての異世界での師匠マルクスとの出会いだった。
19
あなたにおすすめの小説
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる