61 / 281
第一章 外れスキル

61. 出張体操教室

しおりを挟む
 今日はアスクレ治療院に来ている。冒険者ギルドには俺しか受けられない依頼が募集されていた。

――――――――――――――――――――

【F.体操教室の講師を募集】
募集人数:1人
報酬:銀貨5枚
内容:治療院での体操教室の講師を募集しています。
時間:昼過ぎ

――――――――――――――――――――

 どこから見ても俺しか出来ない仕様になっていた。しかも、体操教室と書いてあっても冒険者の中で"体操"という言葉を理解しているのか人がいるのかどうかさえ分からない。

「こんにちは」

 治療院の扉を開けるとすでにたくさんの人が待っていた。

「おっ、やっと来たか!」

「あんた先生に対して失礼だわよ!」

「おお、すまんすまん」

 今日も花屋の夫婦は参加していた。そして夫の隣には治療中のキーランドが座っている。

「キーランドさん?」

「来てやったぞ」

「おいおい、先生に失礼だぞ」

 花屋の店主はさっきの態度を忘れたのかキーランドに説教している。

 知ってる人から見たらじゃれあっているような感じだった。

「俺とキーランドは昔パーティーを組んでいたんだ」

 花屋の店主は以前冒険者をやっていたと聞いている。現役で冒険者をやっている時はキーランドと他のメンバーでパーティーを組んでいた。

 キーランド以外は既に冒険者を引退しておりそれぞれ違う職業をしている。

 辺りを見渡すと他にも男性が三人参加していた。きっとキーランド達とパーティーを組んでいた人達だろう。

「今日は脚全体を使う体操を行います」

 今日の内容は筋力訓練とストレッチを取り入れながら考えた。

 主な筋肉は下腿三頭筋かたいさんとうきん、ハムストリングス、大腿四頭筋だいたいしとうきんを中心にした。

 大腿四頭筋は脚の中で一番大きな筋肉で支持性を高めるのに必要だ。

 しかし脚の前面筋である大腿四頭筋は過負荷によって使い過ぎている可能性が高い。

「まずは膝が悪くないか確認します。二人一組になってもらって各々脚を閉じてください」

 言われた通り脚を閉じると隙間が開く人やしっかり脚同士が閉じる人など様々だ。

「ここで検査してるのはリング脚かどうかを簡単に見るためです。指が約二横指分隙間があればリング脚だと言われています」

 O脚と言われてもきっとわからないため、リング脚と言うことにした。

「私リング脚だわ……」

「私もリング脚--」

「いやいや肉で隙間ないだろ」

「あんた相変わらずうるさいわね」

 今日も花屋夫婦は仲良く夫婦漫才をやっている。

「リング脚が酷くなると膝の軟骨が擦り切れて膝の変形による痛みが出てきます。今日はそれをなるべく改善できる体操を用意しました」

 以前アスクレ治療院にも来ていた人の中で"変形性膝関節症"に当てはまること人が多かった。

 そのため今回のメニューを考えて持ってきた。

「変形性膝関節症の人は基本的に姿勢の歪みから来ることが多いです」

 俺は骨盤を後ろに傾け膝を少し前に出した姿勢をした。

「骨盤が後ろに傾くと自然と膝前に出てきます」

「あっ……」

 体操に参加している人から声が聞こえた。

「気づいた人がいるかもしれません。今骨盤を後ろに傾けた時に膝が前に出てきます。そして膝も自然と少し外に出てきます」

「私も出ました」

 さっき確認した時は脚の間に隙間がなかった人も少し骨盤を後ろに傾けるとO脚になる。

「このように骨盤一つで姿勢は変わります。 動く範囲が広いこと、筋力があることが需要となってきます」

 変形性膝関節症の人は膝が内反しO脚になってしまう。

 さまざまな原因はあるが、それ以上外に向いていかないように脚の内側の筋肉が頑張ってしまう。

 それとともに脚の前側である大腿四頭筋は過負荷となってしまう。

「今日はこれで終わりにします。お疲れ様でした」

「お疲れ様です」

 一通り説明をしながら体操をはじめていくとやはり反応は良くしっかりと聞いていた。

 前世ではありふれた情報でも異世界では真新しいことだから興味が湧くのだろうか。

「自宅でも一人で出来ると思うのでやっておいてくださいね」

 仕事を終えたらアスクレがいる診察室に向かった。

「おい、キーランドどうだ?」

「ケントはいつもあんな感じで教えてるのか?」

「先生はこの前と変わらないぞ? しっかり教えてくれるからな。俺らが冒険者の時にいれば今も現役だったのかな……だからキーランド頑張れよ」

「ああ」

「今度飯でも行こうな」

「俺も頑張るか……」

 誰も居なくなった治療院にキーランドの声が静かに響いていた。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...