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第一章 外れスキル

162.ゴリラの炙り

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 俺はマルヴェインに連れられ、訓練場に運ばれた。やはり逃げようとしたことがバレたのか肩に乗せられて運ばれたのだ。

 そんな状態で訓練に向かえばみんなの視線は自然に集まる。そして訓練場につけば自然と人が集まってきたのだ。

 そもそもマルヴェインが入ると打ち合いをしていた騎士達も手を止めて、頭を下げるから肩に担がれてる俺に視線が行くのだ。

 訓練場には騎士達だけではなく、魔法を練習しに来た魔法士団の人達もいた。

「あのー、本当にやるんですか?」

「ああ、この前の約束だからな? ちなみに王族との約束を断わったらどうなるか分かってるだろうな?」

「はい……」

「結構あの子単純なんだね。王族との約束って……断っても何もないのにね」

 俺の反応にセヴィオンは笑っていた。断ってもいいなら今すぐ帰りたいわ。

「基本的には武器、魔法、スキルの使用は何でも使って構わない。私も真剣を使うが、当てる前に止める」

「審判は俺がします」

 決闘の審判は近くにいた騎士がすることになった。

「では武器の準備をお願いします」

 マルヴェインは剣帯から剣を抜き取り構えた。模擬戦は今までもしたことないし、マルクスと命懸けの鬼ごっこをしたぐらいだ。

「さあ、君は何で戦うのかな。剣も持ってきていないようだが……」

 これはきっとマルヴェインに挑発されているのだろう。

 俺は腰につけている鞄から取り出す振りをして、異次元医療鞄から打診器を取り出した。

「はぁん? 俺を舐めてるのか」

 魔力を込めてないため俺の手には小さな打診器が握られている。

 その姿を見てマルヴェインは怒り出した。挑発したつもりはないがどうやら挑発していたようだ。

「それでは開始します。はじめ!」

 騎士が腕を大きく振り降ろすと同時にマルヴェインが距離を詰めてきた。

 そしてすぐに騎士は離れた。

「はぁー!」

 騎士団に所属するだけの実力はあるのか、急に距離を詰めてきた。

「なぁ!?」

 あまりの速さに俺は反応が出来なかった。

「そんなんじゃ俺の攻撃を避けきれないぜ?」

 距離を詰めるマルヴェインに向けて、とりあえず打診器に魔力を込めた。

 急に目の前に現れた打診器にマルヴェインは止まり、一度後方に下がった。

「そいつは魔導武器か……杖タイプか?」

 打診器は柄部分が長いため、いびつな形をしている杖とマルヴェインは勘違いをしていた。

「じゃあ、行くぜ」

 再度マルヴェインが近づこうとしてきた。

 剣を持って勢いよく近づいて来るとどんな動物よりも怖い。正直巨大なゴリラが剣を握っているようだ。

「もう無理ですよ! こっちに来ないでください!」

 俺は水治療法を使っていくつもの水球を空中に待機させた。

「やっぱり魔法タイプってことか!」

 いやいや、魔法タイプって何のことだ。むしろ俺は治療タイプだ。

 今浮いているのも魔法じゃなくて水治療法だ!

「中々の魔力を持っているね」

「でも、ケントって魔法使いではないよ?」

「あれだけ水属性魔法を発動しているのにか?」

 近づいて来るマルヴェインに対して、牽制するように水球を放った。

 魔力の量が多い俺にとっては、大量の水球を放っても特に苦にはならない。

 ただ、水治療法のため投げるのに適していないのだ。空中をぷよぷよと大きな水球が浮かんでいる程度なのだ。 

 すぐに俺の弱点に気づいたマルヴェインは近づいてきた。

「ゴリラ怖いよ!!」

 あまりの圧倒的な速さに気づいたら俺の前にいた。

 とっさに手を拳銃の形にして今度は温熱療法を発動させた。

 イメージは火力マックスの火炎放射器だ。

――ゴオオオ!

 俺の指からは直線状に大きなガスバーナーが噴き出た。

 あれ、温熱療法って思ったよりも最強スキルなのかもしれない。炙り料理だけに使ったスキルを少しだけ申し訳なく感じた。
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