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第一章 外れスキル
188.ボヤ騒ぎ 【side:アリミア】
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「今日は我が息子ハッタのお披露目パーティーに参加頂き感謝する。簡単な食事を用意したから良ければ召し上がってくれ。では、乾杯!」
「乾杯!」
今日はアスクリス公爵家長男であるハッタのお披露目パーティーだ。
基本的に貴族達はスキルを得た五歳の時にお披露目パーティーを行うのが風習となっている。
「アスクリス公爵閣下、今挨拶よろしいでしょうか?」
声をかけてきたのはサルベイン子爵だ。
「ああ、サルベイン閣下! 久しぶりだな」
同じ中立派として公爵はサルベイン子爵に対して嫌悪感や悪意は感じていない。
単純にサルベイン子爵が身分が上がることにこだわりを持たないのも公爵にとっては好都合だった。
「お久しぶりです。お会い出来て光栄です。 中々公爵様をお見かけしないので、お話し出来て光栄です」
サルベイン子爵の言葉に公爵はニヤニヤしていた。
「そうか。領地の経営でバタバタしているからすまないな。同じ中立派としてこれからもよろしく頼む」
「はい。そういえば今日はハッタ様だけでしょうか?」
サルベイン子爵は周りを見渡して人が足りないことに気づいた。
「妻は体調を崩していてね」
「それは大変ですね。アリス様もお見えになりませんが……」
サルベイン子爵がアリスの話をすると公爵の顔色が変わった。
さっきまでとにこやかな顔は今も変わらないが、目の奥は笑っていなかった。
「アリスも一緒に体調を崩していてな」
「そうですか。最近寒くなって来てますので公爵様をお気をつけください」
挨拶を済ますとサルベイン子爵は去っていった。
「子爵の分際で余計なことまで気付きやがって。でも今日でアリスとはおさらばだな」
マーベラスは静かに呟くが会場は賑やかで誰にも聞こえていなかった。
いや唯一聞いている人がいた。近くで仕事をしているメイドのヘレンがその一人だった。
♢
ハッタのお披露目パーティーが中盤に差し掛かると事件は起きた。
それは執事から公爵へ伝えられていた。
「マーベラス様少しよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「屋敷の敷地内から煙が上がっているそうです。使用人達で火の消火にあたっていますが何かあるといけないので、避難をされた方がよろしいかと思います」
公爵はあたりを見渡すと、どこからか敷地内から煙が上がっていた。
「わかった」
公爵は立ち上がりパーティーに来た客人達に聞こえるように声をかけた。
「皆のもの聞いてくれ! 今屋敷の敷地内で火事が起きていると聞いた。特に問題はないと思われるが、今はまとまって火から遠いところに避難してくれ」
公爵の話を聞いた者達は使用人に案内されるがまま、煙が出ていると思われる場所から遠ざかるように避難することになった。
♢
公爵は火事になったところへ向かうとそこはアリスがいる倉庫だった。
そこには使用人達が消火作業にあたり、近くにいた執事長に声をかけた。
「アリスは無事か?」
「それが……火が倉庫まで燃え移っているため消火作業にあたっています」
「アリス! 今助けるからな!」
公爵は来ていたジャケットを脱ぎ、倉庫の扉へ近づいた。
「今は危険です」
執事は背後から公爵が倉庫に近づかないように止めた。
「離せ!」
それでも振り解こうとする公爵に執事は強く声をかけた。
「きっとアリス様は無事です!」
「私があの時止めていればこんなところに閉じ込めなくて済んだのに……」
公爵は崩れるようにそのまましゃがみ込み伏せていた。
ただその顔は微笑んでいた。
その様子を誰一人として気付いていなかった。やっと愛する妻と忌々しいアイツとのこどもが居なくなった。公爵の頭の中にはそれだけしかなかった。
「公爵様大丈夫でしょうか?」
声をかけてきたのはサルベイン子爵だった。
公爵はサルベイン子爵が後から追って来ていることを知っていた。
今までのことは執事やメイドを騙すのではなくサルベイン子爵を騙す芝居だったのだ。
「サルベイン子爵か……」
「火の方はどうですか?」
「もうそろそろ消えるそうだ」
その後も消火活動は続き、数分後には火は完全に消えていた。
「マーベラス様報告です」
声をかけてきたのはマーベラスに火事を伝えた執事だった。
「どうした?」
「それが倉庫の中には誰もいなかったです」
「ほんとか!」
公爵は息をゆっくり吐き、執事に被害状況を確認させた。
「倉庫は一部燃えているだけで、消火作業が間に合ったため特に被害がありませんでした。ただ、いつも倉庫にみられるアリス様がどこにいも見当たらないです」
「そうか、それはよかった。君も仕事を続けてくれ」
公爵は口では喜んでいたが、表情は全くなく倉庫を見つめていた。
「御令嬢がどうかされたんですか?」
「ははは、見苦しい姿を見せたね。アリスは倉庫で本を読むのが好きで少し心配になっただけだ。さぁ、サルベイン子爵はパーティーに戻ろうじゃないか」
公爵はサルベイン子爵にパーティー会場に戻るように伝えた。
「走る姿をみて私も心配になりましたが、御令嬢が無事でよかったですね。私は一足先にパーティー会場に戻ります」
「チッ! アイツら失敗しやがって。それにしてもアリスはどこに消えたんだ……」
その後公爵もパーティー会場に戻り、無事にハッタのお披露目会を終えた。
「乾杯!」
今日はアスクリス公爵家長男であるハッタのお披露目パーティーだ。
基本的に貴族達はスキルを得た五歳の時にお披露目パーティーを行うのが風習となっている。
「アスクリス公爵閣下、今挨拶よろしいでしょうか?」
声をかけてきたのはサルベイン子爵だ。
「ああ、サルベイン閣下! 久しぶりだな」
同じ中立派として公爵はサルベイン子爵に対して嫌悪感や悪意は感じていない。
単純にサルベイン子爵が身分が上がることにこだわりを持たないのも公爵にとっては好都合だった。
「お久しぶりです。お会い出来て光栄です。 中々公爵様をお見かけしないので、お話し出来て光栄です」
サルベイン子爵の言葉に公爵はニヤニヤしていた。
「そうか。領地の経営でバタバタしているからすまないな。同じ中立派としてこれからもよろしく頼む」
「はい。そういえば今日はハッタ様だけでしょうか?」
サルベイン子爵は周りを見渡して人が足りないことに気づいた。
「妻は体調を崩していてね」
「それは大変ですね。アリス様もお見えになりませんが……」
サルベイン子爵がアリスの話をすると公爵の顔色が変わった。
さっきまでとにこやかな顔は今も変わらないが、目の奥は笑っていなかった。
「アリスも一緒に体調を崩していてな」
「そうですか。最近寒くなって来てますので公爵様をお気をつけください」
挨拶を済ますとサルベイン子爵は去っていった。
「子爵の分際で余計なことまで気付きやがって。でも今日でアリスとはおさらばだな」
マーベラスは静かに呟くが会場は賑やかで誰にも聞こえていなかった。
いや唯一聞いている人がいた。近くで仕事をしているメイドのヘレンがその一人だった。
♢
ハッタのお披露目パーティーが中盤に差し掛かると事件は起きた。
それは執事から公爵へ伝えられていた。
「マーベラス様少しよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「屋敷の敷地内から煙が上がっているそうです。使用人達で火の消火にあたっていますが何かあるといけないので、避難をされた方がよろしいかと思います」
公爵はあたりを見渡すと、どこからか敷地内から煙が上がっていた。
「わかった」
公爵は立ち上がりパーティーに来た客人達に聞こえるように声をかけた。
「皆のもの聞いてくれ! 今屋敷の敷地内で火事が起きていると聞いた。特に問題はないと思われるが、今はまとまって火から遠いところに避難してくれ」
公爵の話を聞いた者達は使用人に案内されるがまま、煙が出ていると思われる場所から遠ざかるように避難することになった。
♢
公爵は火事になったところへ向かうとそこはアリスがいる倉庫だった。
そこには使用人達が消火作業にあたり、近くにいた執事長に声をかけた。
「アリスは無事か?」
「それが……火が倉庫まで燃え移っているため消火作業にあたっています」
「アリス! 今助けるからな!」
公爵は来ていたジャケットを脱ぎ、倉庫の扉へ近づいた。
「今は危険です」
執事は背後から公爵が倉庫に近づかないように止めた。
「離せ!」
それでも振り解こうとする公爵に執事は強く声をかけた。
「きっとアリス様は無事です!」
「私があの時止めていればこんなところに閉じ込めなくて済んだのに……」
公爵は崩れるようにそのまましゃがみ込み伏せていた。
ただその顔は微笑んでいた。
その様子を誰一人として気付いていなかった。やっと愛する妻と忌々しいアイツとのこどもが居なくなった。公爵の頭の中にはそれだけしかなかった。
「公爵様大丈夫でしょうか?」
声をかけてきたのはサルベイン子爵だった。
公爵はサルベイン子爵が後から追って来ていることを知っていた。
今までのことは執事やメイドを騙すのではなくサルベイン子爵を騙す芝居だったのだ。
「サルベイン子爵か……」
「火の方はどうですか?」
「もうそろそろ消えるそうだ」
その後も消火活動は続き、数分後には火は完全に消えていた。
「マーベラス様報告です」
声をかけてきたのはマーベラスに火事を伝えた執事だった。
「どうした?」
「それが倉庫の中には誰もいなかったです」
「ほんとか!」
公爵は息をゆっくり吐き、執事に被害状況を確認させた。
「倉庫は一部燃えているだけで、消火作業が間に合ったため特に被害がありませんでした。ただ、いつも倉庫にみられるアリス様がどこにいも見当たらないです」
「そうか、それはよかった。君も仕事を続けてくれ」
公爵は口では喜んでいたが、表情は全くなく倉庫を見つめていた。
「御令嬢がどうかされたんですか?」
「ははは、見苦しい姿を見せたね。アリスは倉庫で本を読むのが好きで少し心配になっただけだ。さぁ、サルベイン子爵はパーティーに戻ろうじゃないか」
公爵はサルベイン子爵にパーティー会場に戻るように伝えた。
「走る姿をみて私も心配になりましたが、御令嬢が無事でよかったですね。私は一足先にパーティー会場に戻ります」
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その後公爵もパーティー会場に戻り、無事にハッタのお披露目会を終えた。
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