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第一章 外れスキル

269.それぞれの思い

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「ははは、ちょっと血が足りないわ」

 マルクスはそのまま崩れるように倒れ込んだ。

「ラルフ……マルクスさんが――」

「グフッ!?」

「えっ……」

 顔をあげるとラルフの口から血が噴き出していた。

 平気そうに見えていたラルフもよく考えれば常にグリッドを発現させ、女の火属性魔法を防いでいた。

 実力が俺達とは断然に違う人の魔法を受け止められるだけでもすごいことだ。

「あははは、男同士で家族ごっこかしら。気持ち悪いわね!」

「必死に王都を守っているやつに……」

 俺は女の言葉に苛立った。それよりも何もできない俺に腹が立つ。

 家族が必死に戦っているのに俺は何をしているんだ。

「ケント達大丈夫……マルクスさん!?」

 遅れてきたガレインはマルクスを見て驚いていた。

「なんでこのタイミングで来るんだよ。王族であるガレインに――」

「ケントそれは違うよ。私は私の意志でここに来たんだ。ケントは私を助けてくれた命の恩人だ」

「へっ?」

「だから私は命をかけてでもみんなを助ける。それが……ケントから教えてもらった医療従事者という役目だからね」

 ガレインはスキルでメスを取り出すとマルクスの治療を始めた。

 今では守られる存在ではなく、自分から助ける側になったガレイン。

 治療のスピードも早くすぐに止血はされた。ただ、燃え尽きた腕は生えては来ない。

「どういうこと……魔力が減っていく……」

 女は呪文を唱えるのを止めて何か考え出した。

 魔力を使い過ぎて魔法が発動できないのだろうか。

「ラルフ大丈夫か?」

「どうにかね」

 ラルフは俺の方を向いてニヤリと笑っていた。

 その姿はボロボロになってでも立ち向かう英雄のようだ。

「マーベラスの魔力が回復しなかったのはあんた達のせいだったのね」

 マーベラスの魔力が回復しない?

 何を言っているんだ。

「俺達にはそんなこと――」

「マーベラスはこの首輪をつけた魔物を通して魔力を集めていたわ。だけどいつのまにかその魔力も次第には減ってきた……それが目の前にいるゴミクズのせいだとわね!」

 再び女は詠唱を始めると呪文を唱えた。魔力が尽きたわけではなかった。

「メテオレイン」

 あの火属性魔法がもう一度押し寄せてくる。

 この魔力を感じてあの人達が助けてくれるのももう少しだ。

 急いで近づいてきているのも魔力でわかる。

 その間の時間稼ぎができればいい。

 マルクスを助ける時間だけを確保できればいい。

 ラルフが防ぎ切れるだけ手数を減らせばいい。

 もう俺のやれることは決まっている。

 俺はラルフの肩をそっと叩いた。

「おい、ケントどこにいくんだ!」

「みんなありがとう!」

 俺には俺のスキルがある。決してケトが与えられたスキルじゃない俺だけのスキル。

 それでも死を実感して震える体は、女の前に出るのを拒否している。

「今が戦う時だ。相澤健斗、お前はもう死んでいる」

 逃げるな!

 逃げるな!

 逃げるな!

「逃げるな!」

 俺は大きく一歩踏み出した。

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