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第二区画
81. 部長の変化
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クイーンデスキラーアントの一件から、異世界へ自然と行く気にはならず、あれから3ヶ月ほどが経過した。
桃乃もそのことは理解しているのと、彼女自身がずっと求めていたスキルを手に入れたからというのもある。ちなみに本人に聞いても曖昧にされて教えてもらえない。
それでもそのおかげか桃乃は生き生きと仕事をしている。
問題なのは俺達の天敵ぐらいだ。
「おい、服部!」
いつものように部長が俺を呼んでいた。
いい加減にして欲しいと思いながらも、俺は部長のところへ向かった。
「また資料を頼むよ。いつもすまないな」
俺は部長の一言に驚いていた。もちろん近くにいた桃乃も同じような反応だ。
「部長……変なものでも食べましたか?」
「なんだね? 俺がおかしいみたいな発言しやがってはやく仕事に戻れ!」
「あっ……はい」
いや、確実におかしいとみんな気づいているだろう。俺だけではなく、他の職員も聞いた瞬間ソワソワしている。
いや、ソワソワよりゾワゾワしていると言った方がいいだろう。
「最近部長おかしいですよね?」
自分のデスクに戻ると、桃乃が声をかけてきた。
「ああ、俺もそう思う」
ここ最近常に機嫌がいいのだ。仕事を俺達に任す……いや、押し付けるのは変わらないが、お礼を言えるようになった。
しかも、以前は神光智慧大天使によるオーラは奈落の底のような真っ黒だったが、今は穏やかな緑色をしている。
好意がある人は暖色で、敵意がある人は黒に近かったが緑は今まであまり見かけたことはない。
ちなみに俺が可愛がってる桃乃は昔も今も真っ赤になっている。そんなに慕ってくれる後輩は可愛いもんだ。
それにしてもやはり部長の態度が気持ち悪いほどおかしいと感じてしまう。
「あっ、少し席を外しますね」
桃乃はオフィスの入り口に行くと、何やら男と話をしていた。
「あー、確か栗田くんだったかな?」
桃乃と話していたのは、一度笹寺が飲み会に連れてきたことがあった営業部の後輩だ。
スラリと伸びる手足が特徴で、笹寺が爽やかイケメンだとすると、栗田はモデルのような容姿をしている。
どうやら話しを終えたのか俺の元に戻ってきた。
俺はすぐに視線をパソコンに戻して見ていない振りをする。流石にそんなにジロジロ見ていたら変に怪しまれるだろう。
「先輩、今いいですか?」
「ん?」
俺は桃乃が自分のとこに来ることがわかっていたが、わざと知らない振りをする。
自分でも中々の演技力だと思う。
「今日って笹寺さん見ましたか?」
「あー、笹寺か……確かに見てないな」
普段なら笹寺もちょくちょく顔を見せるが、部長のことが気になっていたためか、笹寺が来たかどうかもわからなかった。
「楓……あー、栗田が笹寺さんを朝から見てないからどこにいるか探していまして」
「営業部はフレックスだけど、流石にこの時間には出勤してるはずだしな……」
基本的に営業部はフレックスタイム制で好きな時間に来て仕事をすることになっている。
営業で色々な場所を回るため、それに合わせて自身で働く時間を決めることになってるらしい。ただ、直接営業場所に向かうのではなく、一度会社に出勤する必要がある。
「俺の方からも連絡してみるよ」
「ありがとうございます。楓にも伝えておきますね」
桃乃は栗田に伝えるためにオフィスの入り口に戻った。それにしても同僚の男性のことを名前呼びしていることに驚いた。
栗田は俺に軽く会釈すると自分の仕事へ戻って行った。
あの子も桃乃と似てしっかりした良い子だ。
「楓に伝えておきました」
「あああの子も可愛い子だな」
「先輩って男もいけたんですね。まぁ、最近はそういうのも世間的に認められてきてるから――」
「おいおい、勝手に変な勘違いするな」
今時、会釈をしてお礼を伝えるなんて可愛い後輩だと思っただけだ。桃乃には変な風に伝わっていたらしい。
「おい、服部と桃乃サボるな!」
あっ、いつもの部長に戻ったようだ。さっきまでの優しさはまやかしだったのだろう。
「ももちゃん、仕事しないと怒られるぞ」
「笹寺さんに連絡お願いしますね」
俺は桃乃にひとこと言うと仕事に戻った。しっかり誤解が解けたのかはわからないが、否定したので問題はないだろう。
「ああ、今連絡しておくよ」
俺は桃乃にそう伝えて、スマホから笹寺にメールを送った。
その後1週間ほど経って笹寺から連絡が返ってきた。
そこには一文のみ書かれていた。
――俺仕事辞めるわ
桃乃もそのことは理解しているのと、彼女自身がずっと求めていたスキルを手に入れたからというのもある。ちなみに本人に聞いても曖昧にされて教えてもらえない。
それでもそのおかげか桃乃は生き生きと仕事をしている。
問題なのは俺達の天敵ぐらいだ。
「おい、服部!」
いつものように部長が俺を呼んでいた。
いい加減にして欲しいと思いながらも、俺は部長のところへ向かった。
「また資料を頼むよ。いつもすまないな」
俺は部長の一言に驚いていた。もちろん近くにいた桃乃も同じような反応だ。
「部長……変なものでも食べましたか?」
「なんだね? 俺がおかしいみたいな発言しやがってはやく仕事に戻れ!」
「あっ……はい」
いや、確実におかしいとみんな気づいているだろう。俺だけではなく、他の職員も聞いた瞬間ソワソワしている。
いや、ソワソワよりゾワゾワしていると言った方がいいだろう。
「最近部長おかしいですよね?」
自分のデスクに戻ると、桃乃が声をかけてきた。
「ああ、俺もそう思う」
ここ最近常に機嫌がいいのだ。仕事を俺達に任す……いや、押し付けるのは変わらないが、お礼を言えるようになった。
しかも、以前は神光智慧大天使によるオーラは奈落の底のような真っ黒だったが、今は穏やかな緑色をしている。
好意がある人は暖色で、敵意がある人は黒に近かったが緑は今まであまり見かけたことはない。
ちなみに俺が可愛がってる桃乃は昔も今も真っ赤になっている。そんなに慕ってくれる後輩は可愛いもんだ。
それにしてもやはり部長の態度が気持ち悪いほどおかしいと感じてしまう。
「あっ、少し席を外しますね」
桃乃はオフィスの入り口に行くと、何やら男と話をしていた。
「あー、確か栗田くんだったかな?」
桃乃と話していたのは、一度笹寺が飲み会に連れてきたことがあった営業部の後輩だ。
スラリと伸びる手足が特徴で、笹寺が爽やかイケメンだとすると、栗田はモデルのような容姿をしている。
どうやら話しを終えたのか俺の元に戻ってきた。
俺はすぐに視線をパソコンに戻して見ていない振りをする。流石にそんなにジロジロ見ていたら変に怪しまれるだろう。
「先輩、今いいですか?」
「ん?」
俺は桃乃が自分のとこに来ることがわかっていたが、わざと知らない振りをする。
自分でも中々の演技力だと思う。
「今日って笹寺さん見ましたか?」
「あー、笹寺か……確かに見てないな」
普段なら笹寺もちょくちょく顔を見せるが、部長のことが気になっていたためか、笹寺が来たかどうかもわからなかった。
「楓……あー、栗田が笹寺さんを朝から見てないからどこにいるか探していまして」
「営業部はフレックスだけど、流石にこの時間には出勤してるはずだしな……」
基本的に営業部はフレックスタイム制で好きな時間に来て仕事をすることになっている。
営業で色々な場所を回るため、それに合わせて自身で働く時間を決めることになってるらしい。ただ、直接営業場所に向かうのではなく、一度会社に出勤する必要がある。
「俺の方からも連絡してみるよ」
「ありがとうございます。楓にも伝えておきますね」
桃乃は栗田に伝えるためにオフィスの入り口に戻った。それにしても同僚の男性のことを名前呼びしていることに驚いた。
栗田は俺に軽く会釈すると自分の仕事へ戻って行った。
あの子も桃乃と似てしっかりした良い子だ。
「楓に伝えておきました」
「あああの子も可愛い子だな」
「先輩って男もいけたんですね。まぁ、最近はそういうのも世間的に認められてきてるから――」
「おいおい、勝手に変な勘違いするな」
今時、会釈をしてお礼を伝えるなんて可愛い後輩だと思っただけだ。桃乃には変な風に伝わっていたらしい。
「おい、服部と桃乃サボるな!」
あっ、いつもの部長に戻ったようだ。さっきまでの優しさはまやかしだったのだろう。
「ももちゃん、仕事しないと怒られるぞ」
「笹寺さんに連絡お願いしますね」
俺は桃乃にひとこと言うと仕事に戻った。しっかり誤解が解けたのかはわからないが、否定したので問題はないだろう。
「ああ、今連絡しておくよ」
俺は桃乃にそう伝えて、スマホから笹寺にメールを送った。
その後1週間ほど経って笹寺から連絡が返ってきた。
そこには一文のみ書かれていた。
――俺仕事辞めるわ
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