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第二区画

155. 使えるものは使います

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 それからオークとは一時間近く話をした。本当に人間になることを夢見ていたのか、最後の方は俺に対しての質問攻めになっていた。

「それでお前はなんでここにきたんだ?」

「何か手がかりがあると思って来たのだ。ここに住んでいたやつが誰かわからないけど、道具をたくさん作ってたドワーフが住んでたと聞いてね」

 俺が部屋の中を探ると中に鍛冶場があった。一度来たこともあり、中を探索してすでに誰が住んでいるのかは知っている。

「ああ、ここってドーリの家か」

「この家の人を知っているのか?」

 オークは俺に詰め寄ってきて鼻をブヒブヒと鳴らしている。こういうところはオークらしい。

「知ってても教えないぞ?」

「それはひどいのねん!」

「いやいや、教えたらまた奴隷みたいな扱いにするだろ?」

「オラはそんなことしない」

 オークの話ではオークジェネラルを中心にオークの上層部は彼女に操られているのか、次第に交戦的になったらしい。それがドワーフの街を襲撃するきっかけとなった。

 交戦的なオークは強さも以前より格段と上がり、その結果ドワーフは捕らえられ、奴隷のような存在になった。ただ、オークにも個々の性格が異なり、集落の中の様子は違うらしい。

 以前ドーリを助けた集落は交戦的なオークが中心になっていた。そのため、ドワーフが奴隷のような扱いになっていたらしい。

「それじゃあ君のいる集落には、ドワーフが楽しそうに住んでいるのかな?」

 俺の問いにオークは答えられないでいた。話の中でオークジェネラルが集落の中にいるってことは、ドワーフと共存することはできないのだ。

「だから君の願いも叶えられないし、俺はオークジェネラルを倒さないといけないんだ」

「そうですか」

 今回俺たちはオークジェネラルを倒さないといけない。それは彼らにとって、同族のやつを差し出せと言っているものだ。

 結局オークは何かを待って行くこともなく、寂しそうに集落から出て行った。

「まぁ、仕方ないよな」

 流石に友好的なオークでも、ドワーフ達に合わせるわけにはいかない。

 どうにか助けて生活の基盤を整えたドワーフを再び危険な目に遭わすのは俺としてもできなかった。

 そもそも少し変わり者のオークではあったが、俺達の敵には変わりない。

 そんなことを考えているとベンが出てきた。

「お前どこにいたんだ?」


 俺の問いにベンは周囲の建物に隠れるようなジェスチャーをしていた。そこでブルブルと震えていたのだ。

「お前ずっと隠れていたのか?」

 ベンは以前もオークに対して異様に怯えていたのを思い出す。ひょっとしたら俺達がこっちに来た時には、あの変わり者のオークは集落にいたのかもしれない。

 だから、俺達の前に姿を現さなかったのだろう。

「よし、じゃあ行こうか」

 頭を傾けているベンを俺は抱きかかえると集落を後にした。

 ええ、ここでオークを逃せばオークジェネラルに会う機会を失うからな。

 一定の距離を保ちながら変わり者のオークを観察すると、他のオークより強いことがわかった。

 やつはサンドワームが現れるとさらっと避けて魔法を放っている。初めて魔法を放つオークを見て、俺は内心興奮していた。

 今まで見たオークは鎧を装備していたが、他のオークとは違い変わりもののオークは普通の服を着ていた。魔法特化なら鎧を着ていたら、邪魔になるのだろう。今後の戦い方の参考にもなりそうだ。

「おい、見つかるから暴れるなよ」

 そんなオークの戦いを後ろから見ていると、俺の腕の中にいるベンは暴れて帰ろうとしていた。今回ベンを連れて来たのは、単純に一人だと帰れない可能性があったからだ。

 オークを追って集落を見つけても、どこかわからなければ仲間を連れてくることができない。

 自動マッピングがある状態で迷子になっているぐらいだから、方向音痴なのは理解している。

 オークはその後も出会う魔物全てを魔法で消し去っていく。使える魔法は基本的な火属性、土属性と何か敵の攻撃を妨げるような変わった魔法を使っていた。
 
 威力自体は桃乃には敵わないが、普通に戦うと厄介な相手だったのは確かだろう。

 オークジェネラルがいる集落に近づくたびに、ベンはさらに暴れるようになっていた。

「おい、ベンそろそろ暴れ――」

「お前は誰だ?」

 俺は必死にベンを抑えていたため、誰かが近づいてきたことに気づかなかった。ベンはオークが近づいて来たのを知らせていたのかもしれない。

 俺はすぐに声をかけて来たやつと、距離を取り振り返るとそこには武装したオークがいた。

「お前は逃げ出した奴隷か?」

 俺が話す前にオークは槍を構えて俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。

「はぁ、めんどくさいな」

 オークが槍を突き出すと俺は魔刀の鋸で槍をいなす。そのまま槍は俺の顔の横を突いてきた。

 まさかかわすとは思わなかったのだろう。武装したオークは驚いた顔をしていた。

 俺はその瞬間にオークの胸元に入り込む。

「ごめんな」

 俺はそのまま鎧の隙間を狙って斬りつけた。さっきまで話していたオークの仲間なんだろう。人間の見た目をしていても、魔物なのは変わらない。

「ブヒィ!?」

 さっきまで普通に話していたのに、切りつけた途端に出る言葉は鳴き声だった。

 近くに集落があるため、倒れてくるオークを抱えて回収した。
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