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5.筋肉令嬢、中身もマッチョです
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掃除を眺めていた私は壁際にひっそりと立っている。
暇だから手伝おうとしたら、騎士たち全員に怒られてしまったわ。
そんなに私が掃除もできない令嬢に見えているのだろうか。
「リリナ、ルシアン様の護衛に行くぞ!」
「はい!」
ある程度の掃除が終わると、ガレスさんに呼ばれた。
どうやら今からルシアン様の護衛に行くようだ。
ルシアン様の護衛は基本的にガレスさんを中心に騎士団から数名交代で行っているらしい。
毎日ルシアン様と一緒に居られるのは、狭き門のようだ。
この際ガレスさんを倒して、私が一番になれば――。
「なんだ!?」
ガレスさんは何かを感じたのか、周囲をキョロキョロとしていた。
「どうされました?」
「暗殺部隊に遭った時のような鋭さを感じたが、俺の気のせいか……」
私がニコリと微笑むと、ガレスさんは自身の頭をぐしゃぐしゃと掻いていた。
やはりこの人はとても強い人のようね。
「そういえば、この時間からの護衛は何をするんですか?」
窓から見える外は、日も暮れ始めており、空気が澄んでいる。
この時間から外にでも出るのだろうか。
父様や兄様から、夜に外出するのは危ないと言われ続けていたから、少し抵抗感があるわ。
「今からルシアン様の食事時間だ」
「私もご一緒していいんですか!?」
まさか騎士団に入って、初日から食事の席をご一緒できるとは思いもしなかった。
セラヴィア連邦王国に来るまで、一緒にお食事をする機会はなかったからね。
「何言ってるんだ?」
「えっ……違うんですか?」
「俺たち騎士団は毒を盛ったやつをその場で捕まえるために行くんだぞ?」
帰ってきた応えは、思ったよりも物騒だった。
ルシアン様が命の危険に遭っているのは仕方ない。
だって……天使みたいに可愛いですものね。
私だって誘拐したいと思うぐらいだから、側でお守りしてあげないといけないわ。
「リリナ、気を引き締めろよ」
「はい……」
別のことを考えているのが、ガレスさんにバレてしまった。
一緒に食事ができないことに少し落ち込みながらも、ルシアン様がいると思われる大広間に着くと、ガレスさんとともに中に入っていく。
大広間はプロテイン公爵家とは比べるまでもなく……質素だった。
大きなテーブルに椅子が数脚置いてあるだけで、豪華な家財は置いてなかった。
使用人は数名の執事とメイドがいるぐらいで、プロテイン公爵家の方が人は多いし、見た目もたくましい。
プロテイン公爵家では、使用人も早朝から戦闘訓練を一緒にするなんて当たり前だからね。
筋肉のつき具合で採用が決まったり、役職が与えられたりもするぐらいだ。
一人のメイドが席に着くと、その前に食事が出されていく。
「今日はあの子が毒見役だ」
どうやら毒見役の子が一口食べた後に、ガレス様も同じものをいただくことになっているようだ。
ただ、メイドは震えて食べるのを怖がっていた。
自分の命がかかっていると思えば怖がるのも仕方ない。
それなら――。
「あのー、私が代わりに毒見しましょうか?」
「はぁん!?」
なぜか隣にいるガレスさんが驚いた。
そんなに驚くようなことを言ったつもりはないわ。
私はメイドの肩をそっと触れて、ニコリと微笑む。
今にも泣き出しそうなメイドは、こくりと小さく頷いた。
「おい、本当にやるのか?」
「これでも体は丈夫なので」
そう言って、スプーンでスープを掬って、ゆっくりと飲んでいく。
喉を通っていく瞬間、焼けるような違和感を覚えた。
「グフッ!?」
体の中に入った瞬間、全身が焼けるように痛みを感じる。
それでも久々の痛みに少し嬉しさを覚える私もいた。
「おい、大丈夫か!」
ガレスさんが心配そうに駆け寄ってきた。
私は何事もないように、静止してにこりと微笑んだ。
「ええ、かなり強めの毒ですが、セラヴィア連邦王国付近では有名な毒ですか?」
「んっ? リリナ……お前は何を言ってるんだ?」
「えっ? 毒が入ってたら伝えるのが毒見役なんですよね?」
私が首を傾げていると、なぜかガレスさんは大きくため息をついた。
今まで摂取したことない感覚の毒だから、私の体がすぐに対応できなかっただけだ。
ひょっとして、毒見役としては役不足だったのだろうか。
「ここから逃げるものがいたらすぐに捕まえてくれ。あとは任せた」
ガレスさんは私に託すと、すぐに毒を入れた犯人を探しに行った。
きっと調理場で働く人も毒を入れた容疑者として捕まえに行ったのだろう。
「リリス、それは本当に毒なのか?」
ルシアン様が興味深そうに私を見ている。
私が嘘をついていると思ったのだろうか?
「それなら、他のものも食べてみますね」
「それはやめた方が……」
せっかくなら私の体の丈夫さを知ってもらった方が良いだろう。
置いてあるサラダや肉料理、デザートなど全ての料理を一口ずつ食べていく。
「んー、どれも同じ毒を使用してますね」
「そっ……そうか」
口に入れた瞬間、どれも喉が焼けるような感覚がある。
きっと同じ毒を使っていることは間違いない。
ただ、少しずつ私の体は毒に慣れてきているため、喉を焼ける感覚もかゆみ程度になってきた。
「本当に毒が入ってるのか?」
「はい、きっとあの方が食べていたら、その場で全身が焼けるように悶えて死んでいたでしょう」
きっとあのメイドが食べていたら、その場で死んでいたのは間違いない。
誰かの命を救えていたと思えば、私も人のために役に立ったのだろう。
ただ、メイドからは私の周りを取り囲んでいた令嬢たちと、同じような視線を感じるのは気のせいかしら?
「リリナ、私のためにありがとう。今日はゆっくりと休むといい」
「ありがたきお言葉感謝いたします」
まさかルシアン様に褒めてもらえるとは思いもしなかった。
毒なんて小さい頃から摂取しているし、体は内側から強くしないと意味がないからね。
それに私は自分自身の治療に特化した回復魔法が得意だから、常に回復し続けている。
今回もそのおかげで毒を摂取しても、何も起こらなかった。
「では、リリナはまた明日の朝にここに来てくれ」
「はい!」
どうやら明日もルシアン様に会えるようだ。
私は嬉しくなって席から立ち上がり頭を下げた。
ルシアン様はクスクスと笑いながら、大広間を後にした。
暇だから手伝おうとしたら、騎士たち全員に怒られてしまったわ。
そんなに私が掃除もできない令嬢に見えているのだろうか。
「リリナ、ルシアン様の護衛に行くぞ!」
「はい!」
ある程度の掃除が終わると、ガレスさんに呼ばれた。
どうやら今からルシアン様の護衛に行くようだ。
ルシアン様の護衛は基本的にガレスさんを中心に騎士団から数名交代で行っているらしい。
毎日ルシアン様と一緒に居られるのは、狭き門のようだ。
この際ガレスさんを倒して、私が一番になれば――。
「なんだ!?」
ガレスさんは何かを感じたのか、周囲をキョロキョロとしていた。
「どうされました?」
「暗殺部隊に遭った時のような鋭さを感じたが、俺の気のせいか……」
私がニコリと微笑むと、ガレスさんは自身の頭をぐしゃぐしゃと掻いていた。
やはりこの人はとても強い人のようね。
「そういえば、この時間からの護衛は何をするんですか?」
窓から見える外は、日も暮れ始めており、空気が澄んでいる。
この時間から外にでも出るのだろうか。
父様や兄様から、夜に外出するのは危ないと言われ続けていたから、少し抵抗感があるわ。
「今からルシアン様の食事時間だ」
「私もご一緒していいんですか!?」
まさか騎士団に入って、初日から食事の席をご一緒できるとは思いもしなかった。
セラヴィア連邦王国に来るまで、一緒にお食事をする機会はなかったからね。
「何言ってるんだ?」
「えっ……違うんですか?」
「俺たち騎士団は毒を盛ったやつをその場で捕まえるために行くんだぞ?」
帰ってきた応えは、思ったよりも物騒だった。
ルシアン様が命の危険に遭っているのは仕方ない。
だって……天使みたいに可愛いですものね。
私だって誘拐したいと思うぐらいだから、側でお守りしてあげないといけないわ。
「リリナ、気を引き締めろよ」
「はい……」
別のことを考えているのが、ガレスさんにバレてしまった。
一緒に食事ができないことに少し落ち込みながらも、ルシアン様がいると思われる大広間に着くと、ガレスさんとともに中に入っていく。
大広間はプロテイン公爵家とは比べるまでもなく……質素だった。
大きなテーブルに椅子が数脚置いてあるだけで、豪華な家財は置いてなかった。
使用人は数名の執事とメイドがいるぐらいで、プロテイン公爵家の方が人は多いし、見た目もたくましい。
プロテイン公爵家では、使用人も早朝から戦闘訓練を一緒にするなんて当たり前だからね。
筋肉のつき具合で採用が決まったり、役職が与えられたりもするぐらいだ。
一人のメイドが席に着くと、その前に食事が出されていく。
「今日はあの子が毒見役だ」
どうやら毒見役の子が一口食べた後に、ガレス様も同じものをいただくことになっているようだ。
ただ、メイドは震えて食べるのを怖がっていた。
自分の命がかかっていると思えば怖がるのも仕方ない。
それなら――。
「あのー、私が代わりに毒見しましょうか?」
「はぁん!?」
なぜか隣にいるガレスさんが驚いた。
そんなに驚くようなことを言ったつもりはないわ。
私はメイドの肩をそっと触れて、ニコリと微笑む。
今にも泣き出しそうなメイドは、こくりと小さく頷いた。
「おい、本当にやるのか?」
「これでも体は丈夫なので」
そう言って、スプーンでスープを掬って、ゆっくりと飲んでいく。
喉を通っていく瞬間、焼けるような違和感を覚えた。
「グフッ!?」
体の中に入った瞬間、全身が焼けるように痛みを感じる。
それでも久々の痛みに少し嬉しさを覚える私もいた。
「おい、大丈夫か!」
ガレスさんが心配そうに駆け寄ってきた。
私は何事もないように、静止してにこりと微笑んだ。
「ええ、かなり強めの毒ですが、セラヴィア連邦王国付近では有名な毒ですか?」
「んっ? リリナ……お前は何を言ってるんだ?」
「えっ? 毒が入ってたら伝えるのが毒見役なんですよね?」
私が首を傾げていると、なぜかガレスさんは大きくため息をついた。
今まで摂取したことない感覚の毒だから、私の体がすぐに対応できなかっただけだ。
ひょっとして、毒見役としては役不足だったのだろうか。
「ここから逃げるものがいたらすぐに捕まえてくれ。あとは任せた」
ガレスさんは私に託すと、すぐに毒を入れた犯人を探しに行った。
きっと調理場で働く人も毒を入れた容疑者として捕まえに行ったのだろう。
「リリス、それは本当に毒なのか?」
ルシアン様が興味深そうに私を見ている。
私が嘘をついていると思ったのだろうか?
「それなら、他のものも食べてみますね」
「それはやめた方が……」
せっかくなら私の体の丈夫さを知ってもらった方が良いだろう。
置いてあるサラダや肉料理、デザートなど全ての料理を一口ずつ食べていく。
「んー、どれも同じ毒を使用してますね」
「そっ……そうか」
口に入れた瞬間、どれも喉が焼けるような感覚がある。
きっと同じ毒を使っていることは間違いない。
ただ、少しずつ私の体は毒に慣れてきているため、喉を焼ける感覚もかゆみ程度になってきた。
「本当に毒が入ってるのか?」
「はい、きっとあの方が食べていたら、その場で全身が焼けるように悶えて死んでいたでしょう」
きっとあのメイドが食べていたら、その場で死んでいたのは間違いない。
誰かの命を救えていたと思えば、私も人のために役に立ったのだろう。
ただ、メイドからは私の周りを取り囲んでいた令嬢たちと、同じような視線を感じるのは気のせいかしら?
「リリナ、私のためにありがとう。今日はゆっくりと休むといい」
「ありがたきお言葉感謝いたします」
まさかルシアン様に褒めてもらえるとは思いもしなかった。
毒なんて小さい頃から摂取しているし、体は内側から強くしないと意味がないからね。
それに私は自分自身の治療に特化した回復魔法が得意だから、常に回復し続けている。
今回もそのおかげで毒を摂取しても、何も起こらなかった。
「では、リリナはまた明日の朝にここに来てくれ」
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