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18.筋肉令嬢、現場監督をする
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小さな家の骨組みがあちこちに立ち、ゴブリンたちが木材や石を運んでいる。
「みんな作業はどう?」
私は町の中を回りながら、力仕事が必要なところを手伝っていく。
ただ、基本的にここにいる魔物は力が強いものばかりのため、よほどのことがない限りは呼ばれることがない。
『ほら! お前たちも働かんか!』
『えー、めんどくせー』
『オラたちの出番ないもん』
どうやらトカゲさんは連れてきた豚さんが働かないことに困っているようだ。
一匹は魔法を使ってレンガを作りながら真面目に働いている。
ただ、他の二匹は地面に座ってボーッと眺めている。
「何かあったの?」
私が声をかけると、トカゲさんは何か良いことを思いついたのかニヤリと笑った。
まるで助かったと言いたげな顔をしている。
『こいつらが働きたくないって言うだが――』
「それはどうしてかな……?」
今はルシアン様のために一致団結して、町を作ろうとしている。
そんな中、やりたくないと思っている存在がいるってことだろう。
別に何もしたくないなら、それはそれで構わない。
だが――。
「邪魔をするなら退いてもらおうかしら」
私は握り拳を使って、豚さんに近づいていく。
一匹はすぐに気づいて距離を開けたが、もう一匹は今も鼻をほじっている。
『ん? お前は誰だ?』
「私はリリナだけど?」
『ほう……』
豚さんは鼻を鳴らしながら、私の体を舐るようにジロジロと見つめてくる。
まるで私の力を見定めているようだ。
『ふん、小さい体で……オレにも好みってものがある』
そんなに私って頼りなく見えるのかしら。
これでも筋繊維一本一本に満遍なく、魔力を満たしているし、体が耐えられるように筋トレもしているわ。
それなのにそんな言い方をされたら……。
「力は見た目が全てじゃないわよ」
私の本気の力が見たいのだろう。
魔物って手合わせや力比べが好きだもんね。
足を広げて重心を下げると、どっしりと構えた。
『本当に魅力なんてこれっぽっちも――』
『おい、お前その辺にしろ!』
握り拳に力を込めると、空気がビリビリと震える。
久しぶりに強く叩いてもいいのだと、ついつい嬉しくなって笑みが溢れる。
作った握り拳をそのまま豚さんに向けて放つ。
だが、その前にトカゲさんが尻尾で豚さんを弾き飛ばした。
――バゴォォォォン!
その影響で私の拳は空気を切り裂いて、旧セラフを超えていく。
どこかへ当たったのかはわからないが、遠くから大きな音が聞こえてきた。
拳の圧が何かにぶつかったようだ。
これで力は見た目が全てではないと伝わっただろうか。
私が豚さんに目を向けると、二匹とも顎を小刻みにカタカタと鳴らしていた。
「そんなに私の実力が見たいなら、もう一度やりましょうか?」
『『ヒイイィィィ!?』』
二匹ともやる気が出たのか急いで、もう一匹の豚さんのもとへ向かった。
そんなにやる気があるなら、初めから働いてくれればよかったのに……。
『それでリリナよ。これはどうするんだ?』
トカゲさんは指を差して、呆れた顔をしながら私の方を見つめてくる。
指はさっき私が拳を突き出した方を向いていた。
そこには旧セラフに残っていた外壁がなくなっていた。
元々ボロボロではあったけど、私の拳で壊れてしまったのだろう。
「あれは私のせいじゃ――」
そもそも私が放った一撃は豚さんが受け止めるはずだった。
それなのに、トカゲさんが尻尾で豚さんを動かしたことが問題だ。
『じゃあ、誰がやったんだ?』
「むむむ……私です」
それを言われたら、何も言い訳ができない。
私を言い負かすことができて、トカゲさんは嬉しいのだろう。
その場で足をジタバタとしている。
――ガラガラッ……ガシャアアアアア!
「『あっ……』」
私とトカゲさんの声が重なる。
残っていた外壁も次々とその場で崩れていき、遠くがよく見えるようになった。
そんなトカゲさんを私はジーッと見つめる。
「誰がやったんですか?」
『……わしだ……』
トカゲさんは嬉しさのあまり、力のコントロールができなかったのだろう。
私と初めて会った時にも、力を見せつけるために地鳴りをさせていたからね。
それだけトカゲさんの足は丈夫で力が強い。
いつのまにか旧セラフの外壁はなくなって、夜風が心地良い。
「まぁ、こういう日もありますよね……」
『そそそ、そうじゃな……』
ただ、そんな夜風が私たちの心を冷やして、冷静さを取り戻してきた。
私とトカゲさんはお互いに視線を合わせたまま、時が止まったかのように見つめ合う。
そうでもしないと周囲……いや、ゴブリンからの視線が痛い。
「ははは、トカゲさん……」
『なんだ、リリナ……』
「外壁でも作りにいきましょうか」
『奇遇だな。今度は簡単に壊れない外壁にしよう』
私は逃げるようにトカゲさんと旧セラフを後にした。
せっかくならセラフと旧セラフを囲む形で外壁を作れば、安全に移動できるし怒られることもないだろう。
「みんな作業はどう?」
私は町の中を回りながら、力仕事が必要なところを手伝っていく。
ただ、基本的にここにいる魔物は力が強いものばかりのため、よほどのことがない限りは呼ばれることがない。
『ほら! お前たちも働かんか!』
『えー、めんどくせー』
『オラたちの出番ないもん』
どうやらトカゲさんは連れてきた豚さんが働かないことに困っているようだ。
一匹は魔法を使ってレンガを作りながら真面目に働いている。
ただ、他の二匹は地面に座ってボーッと眺めている。
「何かあったの?」
私が声をかけると、トカゲさんは何か良いことを思いついたのかニヤリと笑った。
まるで助かったと言いたげな顔をしている。
『こいつらが働きたくないって言うだが――』
「それはどうしてかな……?」
今はルシアン様のために一致団結して、町を作ろうとしている。
そんな中、やりたくないと思っている存在がいるってことだろう。
別に何もしたくないなら、それはそれで構わない。
だが――。
「邪魔をするなら退いてもらおうかしら」
私は握り拳を使って、豚さんに近づいていく。
一匹はすぐに気づいて距離を開けたが、もう一匹は今も鼻をほじっている。
『ん? お前は誰だ?』
「私はリリナだけど?」
『ほう……』
豚さんは鼻を鳴らしながら、私の体を舐るようにジロジロと見つめてくる。
まるで私の力を見定めているようだ。
『ふん、小さい体で……オレにも好みってものがある』
そんなに私って頼りなく見えるのかしら。
これでも筋繊維一本一本に満遍なく、魔力を満たしているし、体が耐えられるように筋トレもしているわ。
それなのにそんな言い方をされたら……。
「力は見た目が全てじゃないわよ」
私の本気の力が見たいのだろう。
魔物って手合わせや力比べが好きだもんね。
足を広げて重心を下げると、どっしりと構えた。
『本当に魅力なんてこれっぽっちも――』
『おい、お前その辺にしろ!』
握り拳に力を込めると、空気がビリビリと震える。
久しぶりに強く叩いてもいいのだと、ついつい嬉しくなって笑みが溢れる。
作った握り拳をそのまま豚さんに向けて放つ。
だが、その前にトカゲさんが尻尾で豚さんを弾き飛ばした。
――バゴォォォォン!
その影響で私の拳は空気を切り裂いて、旧セラフを超えていく。
どこかへ当たったのかはわからないが、遠くから大きな音が聞こえてきた。
拳の圧が何かにぶつかったようだ。
これで力は見た目が全てではないと伝わっただろうか。
私が豚さんに目を向けると、二匹とも顎を小刻みにカタカタと鳴らしていた。
「そんなに私の実力が見たいなら、もう一度やりましょうか?」
『『ヒイイィィィ!?』』
二匹ともやる気が出たのか急いで、もう一匹の豚さんのもとへ向かった。
そんなにやる気があるなら、初めから働いてくれればよかったのに……。
『それでリリナよ。これはどうするんだ?』
トカゲさんは指を差して、呆れた顔をしながら私の方を見つめてくる。
指はさっき私が拳を突き出した方を向いていた。
そこには旧セラフに残っていた外壁がなくなっていた。
元々ボロボロではあったけど、私の拳で壊れてしまったのだろう。
「あれは私のせいじゃ――」
そもそも私が放った一撃は豚さんが受け止めるはずだった。
それなのに、トカゲさんが尻尾で豚さんを動かしたことが問題だ。
『じゃあ、誰がやったんだ?』
「むむむ……私です」
それを言われたら、何も言い訳ができない。
私を言い負かすことができて、トカゲさんは嬉しいのだろう。
その場で足をジタバタとしている。
――ガラガラッ……ガシャアアアアア!
「『あっ……』」
私とトカゲさんの声が重なる。
残っていた外壁も次々とその場で崩れていき、遠くがよく見えるようになった。
そんなトカゲさんを私はジーッと見つめる。
「誰がやったんですか?」
『……わしだ……』
トカゲさんは嬉しさのあまり、力のコントロールができなかったのだろう。
私と初めて会った時にも、力を見せつけるために地鳴りをさせていたからね。
それだけトカゲさんの足は丈夫で力が強い。
いつのまにか旧セラフの外壁はなくなって、夜風が心地良い。
「まぁ、こういう日もありますよね……」
『そそそ、そうじゃな……』
ただ、そんな夜風が私たちの心を冷やして、冷静さを取り戻してきた。
私とトカゲさんはお互いに視線を合わせたまま、時が止まったかのように見つめ合う。
そうでもしないと周囲……いや、ゴブリンからの視線が痛い。
「ははは、トカゲさん……」
『なんだ、リリナ……』
「外壁でも作りにいきましょうか」
『奇遇だな。今度は簡単に壊れない外壁にしよう』
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