【完結】婚約破棄された令嬢、マッチョ売りに転職しました!〜筋トレのために男装してたら、王子の護衛にされました〜

k-ing /きんぐ★商業5作品

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26.筋肉令嬢、アダマンタイトを見つける

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 私たちは鉱石を採取するために、アシュレイの案内で森に向かっていく。

「それで……ニワさんはどうして付いてきたのかな?」
『森に鶏がいるからだっ!』

 どうやら森の中に鶏がいるため、そいつらを私に見せたいようだ。
 相変わらず自身を鶏として認めたくないようね。

「まぁ、側付きマッチョの仕事は移動だけではないじゃないか」

 ニワさんの上にはルシアン様とアシュレイが乗っていた。
 本当は私がルシアン様を運ぶつもりだったのに、ニワさんが来ることを知ると、二人とも率先してニワさんの上に乗っていた。
 そんなに私に運ばれたくなかったのかな?

「少し浮いて走るんだな」
「アースドラゴンとも乗り心地が違うから興味深いね」

 楽しそうにニワさんの背中に乗っているところを見ると、つい嫉妬心が芽生えてしまう。

「今度は私の乗り心地が良くなるよう訓練しておきます!」
「「あぁ……」」

 なぜか二人して奇異なものを見るような顔をしていた。
 ニワさんすら、少しずつ距離を空けているのは気のせいだろうか。

「そういえば森にはあまり来ないんですか?」
「森は普段立ち入り禁止になっているところだからね」

 ルシアン様の言葉に私は視線を逸らす。
 立ち入り禁止の森にすでに2回勝手に入っている。
 ひょっとしてルシアン様は私のことが心配になって、付いてきたのかもしれない。

「ルシアン様はお優しいですね」
「そうなのか……? まぁ、ありがとう!」

 ルーカス様は私を心配することすらなかった。
 むしろ、「俺の心配をしろ。殺す気か!」ってよく言われていた。
 ルーカス様が小さい頃から毎日手合わせしたいと言っていたからしていたのに、文句を言われるたびに辛かった。
 それと比べて、ルシアン様は小さいことでも褒めてくれるし、感謝の言葉を口にしてくれる。

「それにしても魔物が少ないですね」
「魔物がいるの!?」

 アシュレイの言葉に私は驚きを隠せなかった。
 魔物とあまり手合わせしたことない私にとったら奇跡のチャンスだ。
 唯一手合わせした相手ってゴブさんのようなゴブリンだけだからね。

「魔物と聞いて驚いているね……」
「普段からアースドラゴンやオーガに囲まれているのを本当に知らないんだな」
『オラはグリフォンだぞ……』

 魔物と会えることをワクワクしていたら、小声で話しているみんなの声は聞こえづらかった。

「よし、魔物を探しま――」
「アダマンタイトを探しに来たんじゃないのか?」

 アシュレイに言われるまで目的を忘れていた。
 ただ、魔物と手合わせするのも魅力的だ。
 すぐに採取して魔物を探せばいいだろう。

「それに魔物ならそこら辺に――」
「普段ならすぐに出てくるのにおかしいね」

 アシュレイとルシアン様は周囲を警戒しながら、見渡していた。
 森の中にはそんなに魔物がいるのだろうか。

「この間来た時も魔物はいなかったですよ?」

 魔物は一体も見ていない。
 近づいてきたのも、変な見た目をした虫ぐらいだ。

「まぁー、お前がいたらな……」
「リリナだもんね」

 ここに来て私がしたのは心を落ち着かせることだけ。
 まるで私が魔物を追い払ったかのように言われた。
 ルシアン様は許すけど、アシュレイは許さないからね。
 私はジーッとアシュレイを睨みつけると、なぜか顔を赤くしながら、チラチラとこっちを見ていた。
 その後も山に向かうまでは、魔物を探しながら歩くが、魔物の姿は一体も見当たらなかった。
 森の木々が徐々にまばらになり、足元には緩やかな傾斜が現れてきた。

「おっと、ここが唯一知ってる山かな」
「アシュレイ……山を知ってる?」
「お前に言われたくないわ!」

 またアシュレイに頭をペシペシとされた。
 どこからどう見ても目の前にあるものが山には見えない。

「アシュレイ……いくら何でも私にも丘に見えるぞ?」
「さすが、ルシアン様! これは完全に丘です!」

 どうやら私とルシアン様の考えは一致していたようだ。
 どこからどう見ても、山ではなく丘にしか見えない。
 それをずっとアシュレイは山だと思っていたのだろう。

「俺も小さい山と言っただろ!」
「ぷぷぷ、小さい山と丘の区別がつかないなんて、まだまだルシアン様の隣にはふさわしくないわね」

 ここでアシュレイにルシアン様から離れてもらえれば、ライバルはガレスさんのみになる。
 ルシアン様の側付きは私だけでいいからね。

「お前に言われるとムカつくな……」
「さぁさぁ、早くアダマンタイトを見つけて帰りますよ!」

 私はその場で構えて、山の……いや、丘の麓に向かって拳を放つ。

――ドォン!

 あまり勢いよくやると、すぐに貫通させてしまうから少しずつやるのにコツがいる。
 力のコントロールに役立つ鉱石採取はおすすめの訓練方法なのよね。

――ドォン! ドォン!

 今度は二発連続で拳を放ってみた。
 さっきよりも大きく丘の麓がえぐれてきた。

「やっぱりあいつは人間離れしているな……」
「もはや人間ではないのかもね」

 アシュレイとルシアン様は小声で話していた。
 もしかして鉱石採取がしたいのだろうか?

「アシュレイもやってみる?」
「いや、俺はいい……」
「残念だね。ルシアン様も見ててくださいね!」

 アシュレイが参加しないなら、ここはルシアン様にアピールする場になる。

――ドォン! ドォン! ドォン!

 少しだけ威力を加えて、何度も叩くと手に返ってくる反応を確かめていく。
 その跳ね返りで鉱石のある場所を私は感知している。
 これもプロテイン公爵家に伝わる生きる術の一つだ。

「これぐらい硬いところにきっとありそうね」

 私はすぐに叩いたばかりの丘に近づき、硬い部分を思いっきり指で掴んで引き抜く。
 手には黒く輝くアダマンタイトが握られていた。

「やっぱりありましたよ!」

 私は嬉しくなって振りながら、ルシアン様の元へ戻る。
 その時も輝きを放って光の粒子が周囲に降り注いでいる。

「そんな簡単に……何だこれ!?」

 アシュレイはアダマンタイトを見て驚きを隠せないようだ。

「この粒子がアダマンタイトの特徴だよ!」

 アダマンタイトって珍しいって言ってたもんね。
 初めて見るなら知らなくても仕方ない。
 私は隣にいるルシアン様の顔を覗く。

「ルシアン様……?」

 喜んでくれると思っていたのに、なぜか難しい顔をしていた。

「ああ、すまない。これはリリナが言うアダマンタイトかな?」

 私はゆっくりと頷く。
 ひょっとして私の知っているアダマンタイトと別物で、実はただの石ころって結末だろうか。
 そんな失敗をするものには、側付きマッチョとしてルシアン様の隣にいる資格はない。
 私は急いで片膝をついて首を差し出す。

「側付きマッチョ失格……いや、首切りの覚悟――」
「これはアダマンタイトではなくて、伝説のネザライトコアだと思う……。んっ……リリナどうしたの?」
 
 どうやら首切りはしなくても良さそうだ。

「ネザライトコアだって!?」

 私がゆっくりと立ち上がっていると、隣でアシュレイは驚いていた。
 聞いたことない言葉に私は首を傾げていたが、アシュレイは知っているのだろう。
 ただの石ころじゃなくてまずは一安心だが、アダマンタイトじゃないなら、使い道はなさそうだ。

「今すぐに捨てて――」
「「いやいや、待て待て!」」

 放り投げようとしたら、二人に止められてしまった。
 そこまでして価値があるのだろうか。
 ルシアン様の表情が、ふと真剣なものに変わる。
 先ほどまでの和やかな雰囲気が、ピリッと張り詰めた空気へと変わったのがわかった。

「リリナ、よく聞いて?」
「ルシアン様の話ならいつでも聞きますよ!」

 私に神々しいルシアン様のお言葉をいただけるようだ。
 再び片膝をついて、ルシアン様に祈りを捧げる。

「君は反省している時、話を聞く時の態度が同じなんだね」
「ルシアン様に敬意を払っていますからね!」

 ルシアン様としばらく目が合うと、大きくため息をついた。
 さっきよりも雰囲気が和やかになり、続きを話し出した。

「アダマンタイトは過去に見つけた人物は何人かいるんだ」
「はい」 

 私もアダマンタイトを見つけた一人だからね。
 ただ、プロテイン公爵家は毎日のように執事やメイドもアダマンタイトを持ってくるけど、合わせると軽く数十人はいるよ?

「ただ、ネザライトコアを見つけたものはいない」
「そうなんですね……。えっ……これがそのネザライトコアですか?」

 見た目はアダマンタイトとあまり変わらない。
 だから、そんな高価な鉱石が混ざっているとは思いもしなかった。

「伝説の鉱石とも言われていて、見たものはいないとされている」
「なら私たちすごいですね!」

 長年生きていても見る可能性がない鉱石を見るとは思わなかった。

「ただ、過去の文献ではネザライトコアを加工したら、どんな攻撃でも跳ね返す鉄壁な保護魔法が付与されるって……」
「ははは……それは隠しましょうか!」

 私はすぐに元にあったところに戻すことにした。
 だって、そんな鉱石があったら手合わせができなくなってしまう。
 少し触ったら跳ね返されちゃうってことだもんね。
 それに今まで存在しているかわからない鉱石が、目の前にたくさんあったらダメな気がする。
 あの拳の跳ね返りからして、確実にたくさんのネザライトコアがあるわ。

 ただ、プロテイン公爵家の外壁も攻撃を弾いていた気がするけど……きっと気のせいだよね?
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