【完結】ダンジョンに閉じ込められたら社畜と可愛い幼子ゴブリンの敵はダンジョン探索者だった

k-ing /きんぐ★商業5作品

文字の大きさ
14 / 52
第一章 社畜、パパになる

14.社畜、飼い主も大変でした

しおりを挟む
 ガソリンが切れたスクーターを拠点予定のところまで持っていくと、早速椅子の部分を持ち上げる。

 どうやら収納場所の変化はなく、単純に走らないだけだろう。

 それなら倉庫としては使えそうだ。

 スクーターも摩訶不思議に変わってしまったため、何がどう変化するのかは確認しておかないとダメだと思っていた。

 倉庫として使えるなら、問題は特にないだろう。

「ボスゥ……」

「ああ、気にするな。スクーターがなくても、歩いて移動すれば良いからな」

 リーゼントは動かなくなったスクーターを悲しそうに見ていた。

 ガソリンを手に入れればまた走るからな。

 ただ、この世界でガソリンはどうやったら手に入るのだろうか。

 ガソリンは石油を熱して、気体にしてからまた液体に戻す。

 まずは石油がなければ、ガソリンは使えないだろう。

「よし、まずは飲み水の確保だな」

 俺はゴボタに頼んで、薬草もどきが生えている地面をスコップで掘ってもらう。

「やっぱり水が流れているのは間違いないよな」

 掘り進めていくと、この間と同じで水が湧き出てくる。

 普通の地面を掘っても何も出てこないが、何か性質の違いがあるのだろう。

 それともスコップが何か影響しているのだろうか。

 そのままゴボタには池を作ってもらうことにした。

「ボスゥ!」

 リーゼントは俺をキラキラした目で見ていた。

 きっと何か役割がもらえると思っているのだろうか。

「あー、リーゼントには何をしてもらおうかな」

「ボッ……スゥ……」

 いざ拠点を作ろうとなったが、何を用意すれば良いのかは全く考えていない。

「んー、なにかあるかな? あっ、枝とロープになるようなツルを探そうか」

 集落に行った時に壁を作っていたのを思い出した。

 森の奥とは違い日差しが木に遮られていないところは、直接当たるため屋根は必要になるだろう。

「俺達は森の中に入るけど、一人で大丈夫そうか?」

「ゴボッ!」

 ゴボタは一人でお留守番をしてくれるらしい。

 スコップと手押し車を持っている姿が、どこか建築現場の人ぽくて頼もしく感じる。

 今もスコップで土を手押し車に入れて運んでいるからな。

 リーゼントと共に森に入った俺はロープになりそうなツルを探すことにした。

「そういえばリーゼントはにおいとかには敏感なのか?」

 犬といえば嗅覚が人よりも敏感なはずだ。

 その鼻を少しでも生活に使えたら便利そうな気がした。

「オラは生粋のツッパリだからな。嗅覚は犬並みだぜ!」

 それは鼻が良いってことだろうか。

 試しににおいを知っている薬草もどきを探してもらった。

 走り出すリーゼントに付いていくと、そこには薬草もどきの群生地帯があった。

 どうやらリーゼントの鼻は、生粋の犬鼻らしい。

 ひょっとしたら全て掘り起こすと川とかになるのではないかと思うほど、薬草もどきが生えている。

 それにさまざまな葉や花が生えていたため、一通り持って帰ることにした。

 これで奥の方に行っても、ゴボタがいる拠点に帰ることができそうな気がした。

「ツルはどこにあるのかな?」

 果実や薬草もどきはみつけやすくなったが、ツルは中々見当たらなかった。

 どこか違うところにあるのだろうか。

 ただ、集落にいた人達はほとんど森の中で生活をしていた。

 それを考えると森の奥深くにありそうな気がする。

 森の奥に行ったら、すぐには戻って来れなくなるだろう。

 ここは一度諦めた方が良さそうだ。

「ツル? それなら上にあるよ?」

 そう言ってリーゼントは、軽々と木を登っていく。

 ゴボタも木登りが得意だったが、ここに住んでいるやつらはみんな得意なんだろうか。

「ボスゥー、これは使えるかー?」

 リーゼントは木の上で、歯を使ってツルをガシガシと切っていた。

 しばらく待っていると、いくつか目の前にツルが落ちてきた。

 手に持って引っ張ってみると、ちぎれる心配はなさそうだ。

 実際に木に巻きつけて、まとめるぐらいだからそこまで問題はないだろう。

 その後もリーゼントにツルを落として、俺が拾っていく。

「ボスウウウウ!」

「なんだー?」

 上からリーゼントの叫び声が聞こえてきた。

「オラ、高いところがダメだったあああ!」

 まさかあれだけ身軽に木に登って行ったのに、まさか高所恐怖症だとは思いもしなかった。

「落ちてきても俺が捕まえるから、ゆっくり降りてこいよ!」

 大きさ的には捕まえられる気がする。

 ただ、どこかにぶつかって軌道がズレたら俺でも無理だろう。

「ボスウウウウ、足がガタガタするよー」

 俺も下から聞こえるぐらい足がガタガタと震えていた。

 二足立ちしている犬が足を震えている光景なんて、この先見ることはないだろう。

 本人は怖がっているが、正直言って俺はその姿に癒されている。

「ボスウウウウ、無理だああああ!」

 リーゼントはその場で泣き崩れていた。

 あまりにも可哀想に思い、俺は木に登っていくことにした。

 だが、掴むところが遠ければズルズルと落ちて行ってしまう。

「ボスウウウウ、なんでそんなに下手くそなんだよー」

「お前らが登るのが上手いんだよ! ってか登ったなら降りてこいよ!」

「無理だよおおおお! ボスがうんこみたいに小さいもん」

「俺をうんこと同じにするな!」

 ずっと泣いているリーゼントのために、俺は一生懸命考えていた。

 そもそも犬が二足立ちしているから、バランスが取りにくいのが原因のような気がしてきた。

 恐怖心もあるが、足場が狭い場所で立っているから震えている可能性もある。

「おい、手を付いたら降りやすくなるんじゃないか?」

「うんこにはオラの気持ちわからないんだよおー」

 ついに俺のことをうんこと言うようになった。

 あれは降りてきた時に仕返しが必要になるだろう。

「いいからつべこべ言わずに降りてこい!」

「ボスウウウウ、怒らないでよー」

 俺が怒っていると思ったのだろう。

 言われた通りにリーゼントは前足を枝につけると、驚いた表情をしていた。

「これは犬界の画期的なアイデアだ!」

 今まで犬達は思わなかったのだろうか。

 そもそも犬は四本足で歩くのが当たり前だ。

 変わっているのはリーゼント達だからな。

「見て見て! オラ全然震えずに降りてこれるぞ!」

 リーゼントは身軽に周囲の枝を伝って、少しずつ降りてくる。

 ただ、同じ木から降りてくるわけではないため、俺はあっちこっちへとあたふたとしている。

 途中で足を滑らせたら、俺がいなければそのまま地面に当たってしまうからな。

「あっ……」

 そんなことを思っていたら、やはりリーゼントが足を滑らせた。

「ワオオオォォォ!」

 勢いよく落ちてくるリーゼントの元へ、俺は急いで走る。

 もはや高校球児のスライディング並みに、俺はリーゼントが落ちてくるところへ滑り込んだ。

 背中から落ちてきたリーゼントは、途中で体の向きを変えていく。

――トンッ!

「ボス今見ましたか? シュッ、スパーンってオラ着地しましたよ」

 体の向きを変えたリーゼントは俺を下敷きにしたが、綺麗に着地していた。

 ひとまず安心したが、俺の上でリーゼントは嬉しそうに足踏みをしていた。

「誰がお前の下敷きになっていると思ってるんだ!」

「ごめんなしゃああああい!」

 すぐに降りたリーゼントは正座して、頭を何度も下げていた。

 犬に土下座をさせている飼い主。

 側から見たら俺は最悪なやつになるだろう。

 んー、子育ても難しいが飼い主も難しいようだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました

黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。 これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

処理中です...