【完結】ダンジョンに閉じ込められたら社畜と可愛い幼子ゴブリンの敵はダンジョン探索者だった

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第二章 社畜、現実を知る

44.社畜、初恋を見届ける

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 俺達はそのままショッピングモールに向かった。

 20年後も存在していると聞いていたが、外装はどこかドームのような構造で覆われていた。

 町並みは俺の知ってるあの頃とは違う。

 高い建物は無くなっており、全てが3階か4階程度しかない。

 以前空を飛ぶ魔物がダンジョンから飛び出した時に、法律が変わったらしい。

 さすがに背の高いビルが襲われたら、逃げる場所もなく飛び降りるしかない。

 ほぼ死ねって言われているようなものだ。

 それからは高い建物がなくなった。

 それに家も古い家ばかりで、新しい家が建っている様子はなかった。

 その辺はエネルギーや資材不足が関係するのだろう。

「とりあえずリーゼントは犬を演じろよ」

「ボス、オラをなんだと思っているんだ? 生粋のツッパリだぞ」

「ああ、それが心配だ」

 ゴボタは俺と手を繋いで移動すれば良いが、リーゼントはリードもなければ、手を繋ぐこともできない。

 抱えて移動するのにも、そこそこ重いため疲れてしまう。

「それならカートに乗せれば大丈夫ですよ」

 心菜がカートを持ってくると、リーゼントはそのまま中に入れられてしまった。

「はっ!? これじゃあ、オラが動けない――」

「シィー! そもそも話す方がおかしいだろ!」

 周囲を見渡すと誰も見ていないようだ。

 まだ店内にも入っていないのに、ヒヤヒヤしてしまう。

「とーたん!」

「どうした?」

 ゴボタを見ると目をキラキラと輝かせていた。

「おしゅ!」

 ゴボタは手押し車だと思ったのだろう。

 タイヤも付いているため、そこまで変化はないからな。

「ゆっくり押すんだぞ!」

 手押し車で乗用車のような速度をいつも出すため、俺は事前に注意しておいた。

 手押し車を押している時のゴボタはテンションが高いからな。

「ゴボォ!」

 ゴボタはゆっくりと押し出した。

 手押し車と違って、左右に動きやすい。

 必死にコントロールしている姿を見ると可愛く見えてくる。

 俺達は一番はじめにペットショップに向かうことにした。


「とーたん、りーじぇっとがいっぱい!」

 ゴボタは展示ケースに入っている犬を指さしていた。

 たしかに犬種は色々いるが、全てリーゼントに見えるのだろう。

「はぁ、生粋のツッパリどもが簡単に尻尾を振りやが――」

「だから静かにしろって!」

 俺はリーゼントの頬を持ってぐるぐると回す。

 さすがにこんなところで話されたら、怪しい人達だと思われ――。

 すでに注目の的になっていた。

「お客様どうされましたか?」

「いえ、リードを買いに――」

 声をかけられたと思い、俺が答えるが店員は俺ではなく心菜の顔を見ていた。

「ひょっとして……Sランク探索者の心菜さんですか!?」

 店員は心菜のことを知っているようだ。

 いや、これは店内の人達みんなが心菜を知っているような気がする。

 明らかに俺より心菜が注目されていた。

「すみません、今はプライベートなので……」

 おいおい、心菜よ。

 そんな言い方をしたら、男と子どもが一緒にいたらどうなるかぐらいわかるだろ。

「ひょっとして彼氏さん?」

「いや、心菜の相手があんな貧相な男のはずがないぞ」

「前に噂になっていた雷鳴の魔剣士でもないもんね」

 やっぱり俺と噂になっていた。

 それに俺のことが地味にディスられている気がするぞ。

 貧相な体をしていて悪かったな。

「お兄ちゃん行こ!」

「あっ、ああ」

 心菜は気を利かせたのだろう。

 俺のことをお兄ちゃんと少し大きめに呼んだら、周りの客も興味がなくなっていた。

 知らぬ間に心菜は有名人のようになっていた。

 心菜が自分で高級取りって言うぐらいだから、探索者以外の仕事もしているのかもしれない。

「ボス、ちょっといい?」

「なんだ?」

 そんな中、リーゼントが俺の服を引っ張って小さな声で話しかけてきた。

 リーゼントはどこかをジッと見つめている。

「あのエレガントな女犬はどこから来たんだ?」

 遠くから毛並みが綺麗なスラッとした犬が歩いていた。

 飼い主も綺麗な服装をしているため、裕福な家庭の人なんだろう。

 きっと性格も穏やかで優雅な人なんだろうな。

 俺はゆっくりと女性に近づいていく。

「すみません、そのワンちゃんの名前を聞いてもいいですか?」

 俺はリーゼントのために声をかけた。

「はぁん!?」

 だが、返ってきた第一声は全然優雅ではなかった。

 それに隣にいた犬も警戒している。

「お兄ちゃんどうしたの?」

 リードを持った心菜が俺に声をかけてきた。

「いや、リーゼントがあの犬に興味があるみたいで」

 心菜はリーゼントを見ると、カートと一緒に連れてきた。

「よかったら名前を教えてもらえませんか?」

「ひょ……ひょっとして、探索者の心菜様ですか?」

 この人も心菜のことを知っているようだ。

 笑顔で心菜はにこりと微笑むと、女性はその場で震えていた。

 心菜の笑顔って地味に怖いからな。

 そんなことを思っていると心菜はこっちを見ていた。

 今のは声に出ていないはずだぞ。

「えっと……アフガン・ハウンドのマリリンと申します!」

 女性も緊張しているのだろう。

 心菜なんかに緊張しなくても良いのに、声が裏返っていた。

「リーゼント、マリリンちゃんって言うんだって」

 俺はリーゼントを下ろして、マリリンの前に連れていく。

「ファン!」

 きっと〝ワン〟と鳴きたかったのに、声が高くなってしまったのだろう。

 マリリンはリーゼントをジーッと見つめると、顔ごと目を背けて無視した。

 きっとマリリンはリーゼントに興味なかったのだろう。

 犬も飼い主に似てるって言うからな。

 俺もさっきまで女性に変な目で見られていた。

「ワオオオオオン!」

 リーゼントの悲しい鳴き声はペットショップの中に響いていた。
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