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第四章 もふもふはサラサラ

50.お互いに頑張ったようです

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 僕はモススを見て、"秘技モスモスビーム"をしているとすぐにわかった。モススの目を見ると、何かしらの異常をきたすのは知っている。

「おい、俺に今何をしたんだ?」

 秘技モスモスビームが効いていないのかオオバッカは変わりない。僕の顔を見て何か思ったのだろう。

 オオバッカは首にかけているペンダントを取り出した。

「ああ、俺にはどんな状態異常も防ぐアーティファクトがあるからな」

 また聞いたこともない言葉に僕は何も言い返せないでいた。そもそも痛みで頭が回らないのだ。

「スラム街のやつらにはわからないか。アーティファクトは、この国に二つは存在しない魔道具のことだな」

 サゲスーム公爵家では、首にかけているアーティファクトを代々受け継いでいるらしい。そういえば、モススは状態異常付与のスキルを持っていた。

 いつも"秘技モスモスビーム"と思っていた、目が光る行動は状態異常を付与していたのだろう。

 効かないと気づいたモススは羽をバタつかせて走ってきた。

「そんな小さい体で追いつけるはずがないだろ!」

 ナイフが足に刺さる。

 僕は怖くなり目を閉じた。

 だが、オオバッカの手は止まっていた。

『聖なるテイマーにお前如きが何をするつもりだ!』

 城の上でワシが威嚇してこっちを見ていた。さっき帰ったはずが、今まで見ていたのだろうか。

「おい、何だあれ……」

 ワシは大きく跳ぶと僕の目の前に来た。

 そのまま服を咥えて、マリアのところまで運んだ。ついでに背中にはモススが落とされないようにしがみついている。

『お主、なぜワシを呼ばないのだ?』

 ワシは呼んで欲しかったのだろうか。まだもふもふが足りないのかと思い、痛みに堪えながらも僕はワシをもふもふする。

『うおおおーん! ってそんなことをしてる場合じゃないだろ!』

 もふもふする手をワシは押さえる。プニプニとするワシの手は心地良くて、つい微笑んでしまう。

『こんな時に笑う奴があるか!』

 頭を叩かれてなぜか怒られてしまった。ただ、プニプニの手は気持ち良かった。

 どことなくワシってオーブナーに似ている。

「おい、お前ら大丈夫か!?」

 そんなことを思っていると、オーブナーとソフィアが飛んできた。本当にソフィアは飛んでおり驚きだ。

 オーブナーは僕を見ると、眉間に皺を寄せて近づいてきた。今にも怒鳴りそうな顔をしている。

 手を上げたオーブナーについ怒られると思った僕は急いで目を瞑る。

「二人を残してすまなかった」

 オーブナーの大きくて長い腕は僕の体を包み込み、優しく温かい気持ちが伝わってくる。僕はオーブナーに優しく抱きしめられていた。

「また殺されるんかと思ったよ」

「ごめんな」

「それでもマリアは守ったよ。僕はお兄ちゃんだから」

「ああ、えらいな。リックは立派なお兄ちゃんだ」

 僕の目からは涙が溢れ出てくる。

 貴族冒険者に会って、体が震えるほど怖かった。ただ、それよりもマリアが酷い目に遭う方が怖かった。

「ドレスが破れているけど、マリアちゃんは怪我していない?」

 ソフィアはマリアが何かされていないか、体を見ていた。僕でもマリアを守ることができたようだ。

「私は大丈夫です。でもお兄ちゃんはあの人にたくさん殴られて、私は何もできなくて……私の体が弱いから、私のせいでお兄ちゃんが死んじゃうと思って――」

「私達が来たから大丈夫よ」

 マリアも泣いてなかったが、ずっと頑張って耐えていたのだろう。戦っていたのは僕だけではなかった。

 優しく抱きしめていたオーブナーの腕は強く締められる。

「あいつは俺の大事なリックを一度では足りず二度も殺す気だったのか。大事な息子を切り取って、一生世継ぎを作れないようにされたいようだな」

『おい、小僧。あいつを噛み砕いて、腸を引きずり出して、鳩の餌にしてもいいか?』

 オーブナーとワシはゆっくりとオオバッカに近づいていく。言葉だけ聞くと僕でも震えが止まらない。現にオオバッカはその場で震えていた。

 それにしても鳩って人間を食べるのか?

 ひょっとしたら変わった鳩もいるのだろうか。

 人を食べるのは怖いけど、一度会ってみたい。

「おい、俺は殺す気なんて――」

「生きている価値のないやつは黙れ!」

『臭い口で喚くな!』

 冷や汗が額を滴り落ち、足元には恥ずかしい痕跡が広がる。いや、あれは股からポタポタと落ちているようだ。

 オオバッカは恐怖のあまり、失禁してしまった。

 恐怖のあまりオオバッカは腰が抜けたのだろう。その場に崩れ落ちる。

「おい、一体何があったんだ?」

 騒ぎに駆けつけたのか、パーティー会場からは次々と人が出てきた。

 オーブナーとワシに注目が集まる中、オオバッカにも視線が集まっていた。
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