21 / 141

21.新しい能力

しおりを挟む
 俺は普段通りに目を覚ますと妙に体の重さを感じていた。昨日の影響なのか体を起こそうとしても、全然起き上がれないのだ。

「うーん」

 なぜか俺のお腹の方から声が聞こえてくる。俺は手を近づけると、どこかふさふさとする感触が手に伝わってきた。

「ふにゃあ?」
「にゃあ!?」

 同じタイミングで声が聞こえてきた。俺は頭を少し上げると、ちょうど俺のお腹を枕にして寝ているロンとニアがいた。

「おーい、二人ともなんでここで寝ているんだ?」

 軽く揺すると二人は耳をピクピクさせて起きてきた。

「お兄ちゃんおはよう」
「にいちゃ!」

 ロンはどこか舌足らずなのか俺のことを"にいちゃ"と呼んでいた。

 兄弟がいなかった俺にとっては、お兄ちゃんと呼ばれてどこか恥ずかしい感じがする。

「なんで二人とも一緒に寝てるんだ?」

「それは……」

「にいちゃが温かいから!」

 どうやら単純に温もりを求めていたのだろう。

 そのまま二人を抱えるとベットから下ろした。まだ眠たいのか二人ともぼーっとしている。

 俺は眠たい体を起こすように大きく背伸びをした。

「水をもらってくるよ」

 支度をするために桶に水を入れてもらい、顔を洗おうと俺は桶の中を覗くと何か文字が浮かび上がっていた。

――――――――――――――――――――

《ステータス》
[名前] ウォーレン
[種族] 人間/男
[能力値] 力D/B 魔力D/B 速度C/B
[スキル] 証券口座、吸収、鑑定、回復魔法
[状態] 寝不足

――――――――――――――――――――

「うぉ!? なんだこれは!」

 突然の出来事に俺は戸惑っていた。手元を見てもスキル玉を使っていないのにスキル玉の【鑑定】が発動されていた。

「朝から騒がし……」

――――――――――――――――――――

《ステータス》
[名前] ロビン
[種族] 人間/男
[能力値] 力?/A 魔力?/A 速度?/S
[スキル] e3:gdu&
[状態] 空腹

――――――――――――――――――――

 振り返るとそこにはお腹を掻きながら歩くおっさんがいた。

「お前朝から変態だな」

「はぁん!?」

 俺は突然何を言われているのか分からなかった。それよりも意味もわからずに鑑定が発動していることに俺はどうすればいいのかわからなくなっていた。

「俺のこと覗いて何やってるんだか……」

 いやいや、別におっさんのことを覗こうと思っているわけではない。そもそもスキル玉の時と違って鑑定の切り方がわからないのだ。

「これってどうすればいいんだ」

 俺が戸惑っているとおっさんが近づいてきた。そういえばおっさんの名前はロビンと言うらしい。

 鑑定を使って初めて名前を知ることができた。

「目をつぶって気持ちを落ち着かせろ。意識を目にもってくるな」

 ロビンは俺の目に自身の手を覆い被せた。視界が真っ暗になると自然と落ち着き、手を離した時には鑑定の表示は消えていた。

「自分のスキルならちゃんと使いこなせよ。そもそもお前って鑑定スキル持ちだったんだな」

 ロビンは驚く様子もなくそのまま食堂に向かった。鑑定のスキル持ちってどういうことだろうか。

 しばらく休憩すると、俺も落ち着いてきたためロンとニアを呼びに行った。

「ロンー! ニアー!」

 俺が部屋に戻ると二人はまた布団に包まって寝ていた。やはり子供はたくさん寝たいのだろう。

 俺はそのまま二人を抱えて食堂に向かうと宿屋で働く女性が微笑ましい顔をしてこちらを見ていた。

 なぜかロビンと同じ席に俺と子供達のご飯が用意されている。

「少し話があるから一緒に食うぞ」

 俺はそのまま二人を席に座らせると、匂いに釣られて目を覚ました。

「食べていいの?」

「ニック! ニック!」

 ニアはどこか遠慮気味だがロンは待ち遠しいのかフォークを持って小刻みに揺れていた。

「ああ、食べていいぞ」

 ロビンの一言で子供達はご飯を口に放り込むようにかき込んでいた。

「あちゃちゃ!」

「ほらほら、昨日も火傷してたんだから」

 ロンは猫舌なのかシチューをすぐに口に入れた瞬間に火傷をしていた。

 宿屋の女性がコップに水を持ってきてロンに飲ませている。本当にここの宿屋の人達は優しい人ばかりだ。

「それで話ってなんですか?」

「お前はこいつらをどうするつもりだ?」

 ロビンが聞いてきたのはロンとニアについてだった。

「獣人があまり良い風に思われてないのはしっているよな?」

「知ってます」

 獣人は人間より能力が低いと言われている。そのため人間は獣人を馬鹿にしたり、おとしいれて奴隷として扱う奴らも少なくはない。

 あの女好きのアドルでさえも人間に誘われれば断らないが、獣人とは絶対に関係を持たないのだ。

「なら、なおさらお前はこいつらをどうするつもりだ?」

 俺は考えるまでもなく即答した。だって、前から答えは出ていたのだ。

「一緒に生活するつもりです。ただ、子供達の意思を尊重します」

 ロンとニアが森の中で二人でいた理由はわからない。そもそも世の中もわからないような子供達だけで、森の中にいること自体がおかしかった。

「ふっ、そうか」

 ロビンは俺の言葉を聞くと何も言わずに食事を続けた。

 俺の中で獣人だからといって、人間達から軽蔑される子供達と、ポーターで馬鹿にされている俺がどことなく被ったのだろう。

「お兄ちゃん食べないの?」

 みんなが食べている中、まだ何も手をつけていない俺をニアは心配そうに見ていた。

「これからは一緒だな」

 俺はニアを優しく撫でると、気持ち良さそうに喉を鳴らしていた。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...