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55.お別れ

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 突然の別れは朝食が終わった時に伝えられた。

「ウォーレン達に話がある」

「どうかしたんですか?」
 いつもより食事中の会話がないと思ったらモーリンから報告があるようだ。

「今日私とメジストは帰ろうかと思う」

「なら僕達も一緒に──」

「あなた達はこのままここに残りなさい」
 俺は一瞬何を言っているのか分からなかった。俺達はモーリンとメジストも含めて家族なのだ。

「えっ? どういうことですか?」
 隣を見るとロンとニアはすでに離れることを理解していたのか泣いていた。急に帰ると言われたら幼い2人には辛いだろう。

「じいじとばあばはオラのこと嫌いになったの?」

「なんで私達は一緒に行ったらダメなの?」
 2人の言葉にモーリンも言葉を詰まらせていた。そんな中話し出したのはメジストだった。

「わしは2人のことが好きじゃよ? ずっと離れたくないほどじゃ。 ただ、ロンとニアはCランクの冒険者になったんじゃ」

「それならランクなんてい──」

──バンッ!

 ロンが話している途中でメジストは机を大きく叩いた。

「ロンそれは言っちゃなダメな言葉だ。 みんな命がけで冒険者になって誇りを持っている。 俺はロンをそんな男に育てたつもりはないぞ!」

「じいじ……」
 確かに冒険者としては一人前と言われているCランクになりたくてもなれない人は一定数いる。そのランクに幼いながらもなれたロンとニアは冒険者としての才能を持っていた。

 忘れていたが2人とも攻撃スキルを持っていないポーターなのだ。普通でも考えられないのにCランクになれるということは天職なんだろう。

「私達に会えないってことではないのよ。 また立派になって大きくなった姿を見せておくれ」

「ばあば……」
 ロンとニアは椅子から立ち上がりモーリンとメジストのところへ駆け寄った。

「ウォーレンも行かなくていいのか?」
 そんな様子を見ていたロビンが行くタイミングを失っていた俺の肩をそっと叩いた。

 俺も椅子から立ち上がるとモーリンとメジストは優しい顔でこちらを見ていた。


 アドルにパーティーを追放された時は本当に人生の終わりだと思っていた。俺は2人に出会えて人生が一瞬にして変わったのだ。

 あんなに嫌いだったのに何もなかった俺に巡り合わせてくれたのはスキル【証券口座】のおかげだった。

「そういえばウォーレンに渡すものがあるのじゃ」
 メジストはアイテムボックスから何かを取り出すと俺の腕にそっとつけた。

 俺に腕についていたのはスキルホルダーだった。

 よく見たらモーリンとロビンも腕にスキルホルダーをつけていた。

「これでみんなお揃いだな」
 ロビンも近寄り最後の談笑をした。その後の別れはどこかあっさりとしていてモーリンとメジストは馬車に乗って都市ガイアスに帰って行った。





 帰り際にメジストから渡されたのは大きな箱だった。俺達はそれを開けると中には大量にスキル玉が入っていた。

「それにしてもすごい量のスキル玉だな」

 基本的には自分達が倒せる魔物の種類が増え、提供した魔石で作ってもらったスキル玉が多かったがその中でも見たことないスキル玉も含まれていた。

 俺達は自身で戦いのスタイルに合わせてスキル玉を装着した。 

 そして俺達も自分達の荷物をまとめることにした。ロンとニアと話し合った結果、俺達も一人前の冒険者になったためロビンの屋敷から宿屋に変えることにしたのだ。

 俺としては屋敷でまだゆったりとした生活をしたかったが、ロンとニアが出ていくと言い出して決めたことだった。

 2人の中で自立心が芽生えてきたのだろう。そのうちお兄ちゃんと一緒に居たくないって言われることを考えるだけでどことなく悲しくなってくる。

「にいちゃ準備はできた?」
「ほらお兄ちゃん! ベットから降りて出て行くよ」
 俺は最後に柔らかいベットの感触を味わってロビンの屋敷を出ることにした。

 突然のことでロビンはびっくりしていたがお世話になった執事やメイド達に挨拶をして俺達は屋敷を後にした。
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