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87.獣人の力

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 子ども達と共にゴードンの商会がやっている宿屋に行くとあまりの綺麗さに驚いた。比較的値段も高くないのに豪華に見える家具や従業員の対応に管理が行き届いているのを実感した。

 子ども達はやはり普段から食事を食べていなかったのか泣きながら食べている姿が印象的だった。

 それにしても食べる早さと量に俺は驚くことばかりだ。

 その後子ども達が落ち着いた頃にゴードンは俺の部屋に訪ねてきた。

「今回のことで少しいいかい?」
 俺はゴードンを部屋に入れると子ども達を救出した後のことを話し出した。途中からどかへ行っていたのは船について聞いてきたのだろう。

 船から煙が出ていたのを街の住人が発見したことですぐに警備隊が駆けつけたらしい。

 船の中を見に来た警備隊は犯罪者が必死に火の鎮火しているタイミングに遭遇し、大量に捕まるという大騒ぎで幕を閉じた。

 売るはずだった獣人も勝手にいなくなったこともあり、彼らは口を揃えて"幽霊が出た"と言っていたらしい。最終的には何か幻覚を見せる薬物をやっていたのではないかということで調べることとなった。

 どうやら俺達の脱走はバレずに済んだということだ。





 王都に戻るまでは子ども達の服も含めてゴードンが準備をしていた。

 帰るときには馬車の中身は特になかったため窮屈ではあるが子ども達と一緒に王都へ帰ることとなった。

「私も冒険者になりたかったな」
 子ども達の中で俺の姿が印象的だったのか冒険者になりたいと声を上げる者も出てきた。

「ミンちゃんもハリスちゃんもしっかり考えたほうがいいよ?」
 身近な俺達が冒険者をやっているため、将来は冒険者になりたいと思っている子達が多かった。

 その中でもミン、ハリス、そして少年のホークスが冒険者への希望が強かった。

「でもニアちゃんができるなら私達もできるよね?」

「いや、こう見えてニアってめちゃくちゃ強いからな」

「それはないだろう! 俺の方が絶対つよいぞ」
 ホークスは男の子だから体格的にニアよりは大きかった。それでも魔法だと俺でもニアには勝てないのが現実だ。

「どこかで魔物が出てこればいいんだけどな」
 実際にニアが戦っているところを見たら実力がわかるはずだが、やはり帰り道も中々魔物に会うことがなかった。

 その後も王都に近づいても魔物の姿を見ることはなかった。

「お兄さん……王都ってこんなに気持ち悪いの?」

「私も何か嫌な感じがする」
 王都に近づくにつれどこか獣人の子ども達はそわそわとしていた。

 ミンとハリスを鑑定すると状態が不安になっていた。

《ステータス》
[名前] ミン
[種族] 獣人/女
[能力値] 力E/C 魔力E/C 速度C/A
[スキル] 獣化(兎)
[状態] 不安

《ステータス》
[名前] ハリス
[種族] 獣人/女
[能力値] 力E/C 魔力E/C 速度C/A
[スキル] 獣化(鷹)
[状態] 不安

 ロンとニア以外は何かを感じていたのもスキルが【獣化】とどこか獣人特有のスキルが影響しているのだろう。

 聴覚や嗅覚などの感覚が一際鋭いのもその特徴だった。

「お兄ちゃん! 王都の方から火が出ているよ!」

「オラも煙は見えているよ!」
 俺には見えなかったがロンとニアには王都が燃えているように見えたらしい。

「ここは俺達の出番だな!」

「私達が見てくるよ!」
 ホークスとハリスは馬車の上に登ると大きく手を広げた。その瞬間、腕がいきなり翼に変化した。きっとこれがスキル【獣化】の力なんだろう。

 2人は大きく翼を動かすと王都に向かって羽ばたいて行った。
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