最弱の荷物持ちは謎のスキル【証券口座】で成り上がる〜配当で伝説の武器やスキルやアイテムを手に入れた。それでも一番幸せなのは家族ができたこと〜

100.選択肢 ※別視点

「パパ起きて！」
　空の声に目を覚ました。どうやら俺は寝ていたようだ。

「おい、空大丈夫か！」
　真っ白で何もない空間だが空の存在ははっきりと理解できた。

「どうしたの？」
　目の前にいる空はなぜか元気に微笑んでいる。俺は強く抱きしめると痛そうにしていた。

「あなた……」

「恵美！　海！」
　声がする方に目を向けるとそこには恵美と海の姿もあった。

「その姿どうしたの？」

「えっ？」

「父ちゃんはなんで血だらけなの？」
　俺はみんなが何を言っているのかわからなかった。

　俺は自分の手を見るとなぜか血だらけになっていた。

「なんだこれ？」

「ははは、面白いこと言うな。　お前があの男を殺したからだろ？」
　何もない真っ白な空間から突然男が現れた。どこか造形品のような表情が全くない男は俺達に近づいてきた。

「どういうことだ？」

「そのままの意味だ。　じゃあ、死んだ君達には選択肢を与えよう」

「やっぱり私達は死んだようね」
　妻の恵美はやっと自分の死を理解したのだろう。

「ねぇ、パパ早くケーキ食べようよ」

「父ちゃん帰って来るまで待ってたんだよ？」
　子ども達はまだこの状況を理解出来ていないのか誕生日のことを考えていた。すごく胸の中が苦しくなった。

「早くケーキを食べないといけないから帰る方法を考えなくちゃね」
　恵美が優しく子ども達は撫でると空と海は大きな声で返事をした。

「まず君達3人の選択肢だ」
　男はどこからか3枚のカードを取り出す。

「ここに3枚のカードがある。　1枚目は元の世界に生まれ変われるカード、2枚目は違う世界に生まれ変われるカード、最後は記憶を持ったままどちらかの世界に生まれるカードだ」

「あのー、それは私達が同じところに行けるのでしょうか」
　たしかに恵美の言う通りだ。生まれ変わるのであれば俺もまた同じように家族になりたい。

「ああ、子ども達は何も悪いことをしていないからな。　本来は己自身で選んでもらうところを母親と同じところに生まれ変わるようにしよう」

「わかりました」
　恵美は男に近づくと3枚ある内の1枚を引いた。

「あなた達は元の世界に生まれ変わるでしょう」

「ママ？　生まれた変わるってどういうこと？」

「名前と見た目は変わっちゃうけどお家に帰れるってことかな？」

「えー、見た目変わったらママとパパがわかんないじゃ」

「そうかもしれないね」

「最後に各々この箱からカードを引いてくれ。　この中には己の才能が刻まれている。　記憶には残らないがその才能が開花できるよう健闘を祈る」
　男はそう告げると足元に何か模様が浮かび出てきた。

「えっ、パパは？」
「父ちゃん？」
　2人は俺の足元に模様が浮かんでいないことに気づいたようだ。

「父ちゃんはまだ仕事が終わってないからな」

「私パパと一緒に帰りたいー！」
　子ども達は俺と一緒に家へ帰りたいと泣き叫んでいる。俺も一緒に行けるなら行きたかった。

　でも俺はこの男に会った時に一緒に帰れないことを感じている。

「恵美、子ども達を頼んだぞ」

「わかったわ」

「俺と出会ってくれてありがとう。　空と海を生んでくれてありがとう。　俺もすぐに行くから元気に待っててくれ」
　俺は優しく恵美の頬を伝う涙を拭き、泣き叫ぶ子ども達の頭を撫でた。

「ちゃんとプレゼントを買ってくから待っとけよ！」

「ほんと？」

「ああ」

「2人とも生まれてきてくれてありがとう」
　俺は3人に抱きつくと次第に薄くなり俺だけ真っ白な空間に残された。

「あああぁぁぁぁ」
　響くのは俺の嗚咽混じりの泣き叫ぶ声だった。