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119.同志

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 マンドラゴラの魔石をメジストにたくさん預けると彼は喜んでいた。

 俺達は先にルーン街に向かうことになっているため、乗り合い馬車で移動した。お尻は相変わらず痛かったが、特に何か起きることもなく無事に着いた。

 俺が冒険者として活動した初めての街。懐かしい気持ちととともに俺はあの人に会いに行った。

「リーチェただいま!」

「えっ、ウォーくん?」
 突然来た俺にリーチェは驚いていた。

「お兄ちゃん誰なの?」
 どこか後ろにいたニアは怒っていた。

「私の姉に会ってなかったかしら?」

「ああ、この人は王都の冒険者ギルドにいたルーチェさんの妹だよ」
 俺が紹介すると彼女は2人に手を振っていた。
 ロンとニアに会ったのは、ガイアスにいた時だからリーチェのことを知らないだろう。

「にいちゃ……」
 ロンは俺の服を一生懸命引っ張っていた。

「耳を貸して」

「どうしたの?」

「女の人を怒らせたらだめだよ?」

「えっ?」
 リーチェとニアの顔を見ると、どこかバチバチと電気が走っている気がした。

「ほら、にいちゃが遊び歩いて――」

「ロン何を――」

「ウォーくん?」
「お兄ちゃん?」
 俺はロンの口を塞いだが2人には聞こえていたようだ。

「詳しい話はあっちで聞こうかしら?」
 さっきまで仲の悪そうな2人がいつのまにか協力関係になっていた。





「それで遊び歩いていたってどういうことなの? しかも幼女の趣味があったなんて……」

「幼女じゃないニアだもん!」

「そう」
 リーチェはニアを一通り見ると少し鼻で笑っていた。これが女性同士の戦いというものなのか。

「えーっとこっちは俺の家族でニアです」

「それでこちらは俺がパーティーを追放された時に助けてくれたリーチェです」
 2人はない胸をお互いに張っている。ロンをチラチラと見るが、その頃彼は冒険者ギルドにあった本を読んでいた。

「それでウォーくんはどっちが本命なの?」
 リーチェの唐突な質問に俺は戸惑った。今までそんなに女性と付き合うことを考えて来なかった。むしろ今も生きることに必死なのだ。

「いやー、俺は――」

「おお、ここに居たのか!」
 部屋の扉を開けたのは門番のライオだ。今日は非番だったため他の人からウォーレンが帰ってきたのを聞きつけた。

「ライオさん!」

「あー、えーっとこれはどういう状況なんだ?」
 ライオに助けを求めることにしたが、彼も状況を飲み込めていない。

「俺を一番初めに助けてくれた命の恩人です」
 とりあえずライオを紹介することにした。

「あー、あの時は急に倒れたからびっくりしたぞ! ずいぶん大きくなったな」
 ライオは俺の肩を叩いた。能力が上がってもやはり体が大きい人のスキンシップは痛かった。

「これでもポーターで初の勇者ですからね」

「おおお、あのウォーレンが勇者になるって思いもしなかったな。 そうだこの後飯とかどうだ?」

「いいですよ」
 2人からの圧を避けるために俺はライオと共に逃げることにした。

「にいちゃって男の人からもモテるよね」
 
「確かに王都のギルド長にも好かれて――」

「あのおっさんにですか!?」

「リーチェさんは知っているんですね」

「だってあの人は昔から狙った獲物は逃さないって有名なのよ」

「……」
 俺もその噂は知らなかった。どこか毎回寒気がしていたのは俺が狙われていたからだろうか。

「おい、ウォーレン行くぞ!」
 先に行っていたライオに呼ばれた。

「今行きます」
 俺はライオを追いかけるように冒険者ギルドを後にした。

「ニアちゃん」
「リーチェさん」

「ここはまず敵から守るのが先ね」
 リーチェとニアは女としての同志を手に入れた。

 後に"伝説ポーターの守護神"と言われたかどうかはこの先の物語でわかるだろう。
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