121 / 141
121.荒野
しおりを挟む
俺が住んでいたジェラリー村に近づいてきた。時折馬車乗り継いで移動したり歩いたりと道のりは大変だ。
「お兄ちゃんおはよう!」
「ああ」
「最近悪い夢ばかり見てる?」
「疲れが溜まっているんだな」
ここ最近故郷に近づいてきているからなのか、妙に昔のことを思い出す。
あいつと遊んだ日々やスキルを授かった日、勇者として諦めた日、ポーターとして誘われた日など全ての記憶が蘇るようにリアルな夢を見る。
いつになってもあいつに縛られてばかりなんだと俺は思った。
「ねえ、にいちゃ……あの先何にもないけど……」
ロンは俺の肩を叩き、どこかを指差していた。
急に何もない荒野が現れた。ああ、俺が拾われた馬車だとすぐに実感した。
「ここは昔魔王が山を吹き飛ばしたって言われているところなんだ」
「魔物!?」
「そう、魔王は実在していたらしいよ」
魔王と勇者は物語でも語られるほど有名な話だ。そもそも冒険者ギルドの勇者という称号は功績を残したという意味だけではない。
魔王に対抗する手段がある人と国も認めた人にもらえる意味合いも含まれている。
「魔王はそんなに現れるものなの?」
「あー、どうなんだろうね。 最近現れたのは俺が小さい時でその前はずっといなかったらしいからね」
俺は生まれたばかりの時に魔王の襲撃に巻き込まれたらしい。その時近くにいた勇者が魔王を倒したと聞いている。
「でも山を吹き飛ばした魔王にお兄ちゃん戦える?」
うん、どう考えても山を吹き飛ばすやつに会ったら即死だろう。
「無理だな」
できても山を削るぐらいだ。金属なら俺の出番だしな。
「じゃあ、なるべく魔王には出会わないように気をつけないとね」
「そんなにポンポン出てきたら生きていけないだろ」
「確かにそうだね」
何もない荒野はどこか怖いほど虚しい風が吹いていた。
♢
荒野から一日馬車を進めると俺の故郷であるジェラリー村が見えてきた。
「にいちゃ、村が見えてきたよ」
「懐かしいな」
村は特に変わった様子もなく、昔と変わらない静かな雰囲気を出していた。
俺達は馬車から降りるとやけに視線が集まっていた。そういえばこの村に来る人は商人ぐらいだった。
「おい、そこの男と獣人止まれ!」
男は肉屋なのか大きな包丁を持っている。無愛想な顔だが面倒見が良く、奥さんの手料理が美味しかった……。
「ダンデさぁーん!」
俺は男に飛びつくと困惑していた。
「おい、お前……」
「あら、ウォーレンちゃんじゃないの」
奥からはいつも俺に手料理を作ってくれた奥さんとその隣には子どもが立っていた。
「ヘレンさん!? 子どもが出来てる」
「それはこっちのセリフよ? いつのまにかお父さんになったの?」
きっとロンとニアのことを言っているのだろう。
「ロンとニアは――」
「ウォーレンの彼女です」
「えっ!?」
ニアの発言に俺とロンは驚いて時が止まった。まさか"彼女"という言葉聞こえるとは思わなかった。
「ふふふ、ウォーレンちゃんも大人になったのね? そんなところでむさ苦しいおっさんに抱きついてないでこちらにおいで」
しばらく会わないうちにヘレンは変わっていた。あの当時は結婚したばかりだったが、数年経ってしまえばこんなに変わるのだろう。
ダンデも少し気まずそうにしている。
「ダンデさんも大変でしたね」
「ウォーレン……こんなに大きくなって――」
「あなた達早く来なさい?」
エレンの冷たい視線はダンデに向けられていた。
「女の人を怒らせたらだめですよ?」
ロンの一言にダンデは胸を押さえていた。やはり家族を作るって大変なんだと改めて勉強になった。
「お兄ちゃんおはよう!」
「ああ」
「最近悪い夢ばかり見てる?」
「疲れが溜まっているんだな」
ここ最近故郷に近づいてきているからなのか、妙に昔のことを思い出す。
あいつと遊んだ日々やスキルを授かった日、勇者として諦めた日、ポーターとして誘われた日など全ての記憶が蘇るようにリアルな夢を見る。
いつになってもあいつに縛られてばかりなんだと俺は思った。
「ねえ、にいちゃ……あの先何にもないけど……」
ロンは俺の肩を叩き、どこかを指差していた。
急に何もない荒野が現れた。ああ、俺が拾われた馬車だとすぐに実感した。
「ここは昔魔王が山を吹き飛ばしたって言われているところなんだ」
「魔物!?」
「そう、魔王は実在していたらしいよ」
魔王と勇者は物語でも語られるほど有名な話だ。そもそも冒険者ギルドの勇者という称号は功績を残したという意味だけではない。
魔王に対抗する手段がある人と国も認めた人にもらえる意味合いも含まれている。
「魔王はそんなに現れるものなの?」
「あー、どうなんだろうね。 最近現れたのは俺が小さい時でその前はずっといなかったらしいからね」
俺は生まれたばかりの時に魔王の襲撃に巻き込まれたらしい。その時近くにいた勇者が魔王を倒したと聞いている。
「でも山を吹き飛ばした魔王にお兄ちゃん戦える?」
うん、どう考えても山を吹き飛ばすやつに会ったら即死だろう。
「無理だな」
できても山を削るぐらいだ。金属なら俺の出番だしな。
「じゃあ、なるべく魔王には出会わないように気をつけないとね」
「そんなにポンポン出てきたら生きていけないだろ」
「確かにそうだね」
何もない荒野はどこか怖いほど虚しい風が吹いていた。
♢
荒野から一日馬車を進めると俺の故郷であるジェラリー村が見えてきた。
「にいちゃ、村が見えてきたよ」
「懐かしいな」
村は特に変わった様子もなく、昔と変わらない静かな雰囲気を出していた。
俺達は馬車から降りるとやけに視線が集まっていた。そういえばこの村に来る人は商人ぐらいだった。
「おい、そこの男と獣人止まれ!」
男は肉屋なのか大きな包丁を持っている。無愛想な顔だが面倒見が良く、奥さんの手料理が美味しかった……。
「ダンデさぁーん!」
俺は男に飛びつくと困惑していた。
「おい、お前……」
「あら、ウォーレンちゃんじゃないの」
奥からはいつも俺に手料理を作ってくれた奥さんとその隣には子どもが立っていた。
「ヘレンさん!? 子どもが出来てる」
「それはこっちのセリフよ? いつのまにかお父さんになったの?」
きっとロンとニアのことを言っているのだろう。
「ロンとニアは――」
「ウォーレンの彼女です」
「えっ!?」
ニアの発言に俺とロンは驚いて時が止まった。まさか"彼女"という言葉聞こえるとは思わなかった。
「ふふふ、ウォーレンちゃんも大人になったのね? そんなところでむさ苦しいおっさんに抱きついてないでこちらにおいで」
しばらく会わないうちにヘレンは変わっていた。あの当時は結婚したばかりだったが、数年経ってしまえばこんなに変わるのだろう。
ダンデも少し気まずそうにしている。
「ダンデさんも大変でしたね」
「ウォーレン……こんなに大きくなって――」
「あなた達早く来なさい?」
エレンの冷たい視線はダンデに向けられていた。
「女の人を怒らせたらだめですよ?」
ロンの一言にダンデは胸を押さえていた。やはり家族を作るって大変なんだと改めて勉強になった。
12
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる