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第三章
69.渡人の存在
みんなの看病のおかげで俺は少しずつ体を動かせるようになってきた。
回復魔法を追加でかけようとしたが、魔果の実を食べた時みたいに熱がこもりやすいことがわかった。
体が動かせない俺はニャンタに恥ずかしい思いをしながら、助けてもらった。
きっと魔果の実と回復魔法に共通していることがあるのだろう。
それなのに裏でニャンタは何度も回復魔法をかけるように、アルベルトに頼んでいたらしい。
あのネコ野郎には躾が必要なようだな。
そして、俺は現在リハビリに明け暮れている。
体が動かせるようになっても、落ちた筋力は簡単には戻ってこない。
立った瞬間に膝はガクガクするし、少し歩いただけで息切れが止まらない。
「はぁはぁ……リッパーおはよう」
「大丈夫か?」
「まだまだ体力がないな」
俺の日課はリッパーの肉屋まで歩くことだ。
あれだけ往復していた道も、いつのまにか片道だけで息切れがして動けないでいた。
「少し休憩するといい」
リッパーは俺を椅子に座らせると、仕事に戻って行く。
初めの時はずっと立っていたが、あまりにもふらふらしていたため椅子に座らされた。
いわゆる看板人間の状態だ。
実際、俺自身に集客性があるのか、馴染みの人達は声をかけてくれる。
「トモヤ、元気か?」
「そこそこ元気ですね。お店閉めててすみません」
「あー、俺がやってても閉めてたから問題ない」
声をかけてくれたのはオーナーだ。
あれから一時的に焼肉屋は閉店している。
自身も積極的には働けないため、開店する気もないらしい。
俺も早く復帰しないといけないな。
「そういえば、今度俺の弟が王都に来るんだけどタレを作ってもらってもいいか?」
「大丈夫ですよ! たくさん用意した方がいいですか?」
俺は肘を曲げ元気なのをアピールした。
全く筋肉のない俺の腕はひょろひょろだった。
「トモヤが作れる範囲内で大丈夫だぞ。また、その時に店を借りるけどいいか?」
「あそこはオーナー店なので大丈夫ですよ」
「ありがとう」
オーナーの店だから俺に許可を取らなくてもいい気がする。
店を管理している人に対しての礼儀だろうか。
「そういえば、帝国だったか? 渡人が現れたらしいぞ」
そんな中である噂が流れてきたようだ。
どこかの国で渡人が現れたという噂だった。
「そうなんですね」
「トモヤくんは反応が薄いなー」
その渡人がどのように生活するのかは、今後の参考になるだろう。
決して目の前に渡人がいるとは言えないな。
「渡人って歴史上の存在かと思いました」
「ははは、稀に現れるっていうからな。でも本当に帝国だったらまずいことになるな」
「何か理由があるんですか?」
「渡人って子どもをたくさん産めるから重要な役割なんだよ。だから安全に保護されるぞ」
国に保護されて安全な生活ができるなら、それも一つの手だろう。
しかし、それが問題だった。
帝国は安全に保護すると言っているが、子供を生むために屋敷に入れ、外に出られないように閉じ込めてしまうようだ。
不自由なことはないが子供を生むための高価なアクセサリーという位置付けだな。
精神的におかしくなってしまう人も少なくないらしい。
それほど子どもを生むのも大変だし、王族の世継ぎ問題があるのだろう。
今後もバレないように生活することにしよう。
「じゃあ、また来るよ!」
オーナーは肉を買いに来たわけでもなく、俺と会話するためだけに来たのだろう。
俺は渡人なのに人に恵まれているな。
「俺も休憩したから帰るね」
リッパーに告げると少し悲しそうな顔をしていた。
「また来いよ」
以前は無表情だったリッパーも、俺がいなくなってからは少し明るくなった気がする。
肉屋に買い物に来る人も増えて、リッパーが自分で接客しているからな。
まぁ、相変わらず無口で接客しているのは変わらないけどね。
俺も必死にリハビリとして歩き始めた。
───────────────────
【あとがき】
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初めの投票が大事になるので、ぜひよければ投票よろしくお願いします!
回復魔法を追加でかけようとしたが、魔果の実を食べた時みたいに熱がこもりやすいことがわかった。
体が動かせない俺はニャンタに恥ずかしい思いをしながら、助けてもらった。
きっと魔果の実と回復魔法に共通していることがあるのだろう。
それなのに裏でニャンタは何度も回復魔法をかけるように、アルベルトに頼んでいたらしい。
あのネコ野郎には躾が必要なようだな。
そして、俺は現在リハビリに明け暮れている。
体が動かせるようになっても、落ちた筋力は簡単には戻ってこない。
立った瞬間に膝はガクガクするし、少し歩いただけで息切れが止まらない。
「はぁはぁ……リッパーおはよう」
「大丈夫か?」
「まだまだ体力がないな」
俺の日課はリッパーの肉屋まで歩くことだ。
あれだけ往復していた道も、いつのまにか片道だけで息切れがして動けないでいた。
「少し休憩するといい」
リッパーは俺を椅子に座らせると、仕事に戻って行く。
初めの時はずっと立っていたが、あまりにもふらふらしていたため椅子に座らされた。
いわゆる看板人間の状態だ。
実際、俺自身に集客性があるのか、馴染みの人達は声をかけてくれる。
「トモヤ、元気か?」
「そこそこ元気ですね。お店閉めててすみません」
「あー、俺がやってても閉めてたから問題ない」
声をかけてくれたのはオーナーだ。
あれから一時的に焼肉屋は閉店している。
自身も積極的には働けないため、開店する気もないらしい。
俺も早く復帰しないといけないな。
「そういえば、今度俺の弟が王都に来るんだけどタレを作ってもらってもいいか?」
「大丈夫ですよ! たくさん用意した方がいいですか?」
俺は肘を曲げ元気なのをアピールした。
全く筋肉のない俺の腕はひょろひょろだった。
「トモヤが作れる範囲内で大丈夫だぞ。また、その時に店を借りるけどいいか?」
「あそこはオーナー店なので大丈夫ですよ」
「ありがとう」
オーナーの店だから俺に許可を取らなくてもいい気がする。
店を管理している人に対しての礼儀だろうか。
「そういえば、帝国だったか? 渡人が現れたらしいぞ」
そんな中である噂が流れてきたようだ。
どこかの国で渡人が現れたという噂だった。
「そうなんですね」
「トモヤくんは反応が薄いなー」
その渡人がどのように生活するのかは、今後の参考になるだろう。
決して目の前に渡人がいるとは言えないな。
「渡人って歴史上の存在かと思いました」
「ははは、稀に現れるっていうからな。でも本当に帝国だったらまずいことになるな」
「何か理由があるんですか?」
「渡人って子どもをたくさん産めるから重要な役割なんだよ。だから安全に保護されるぞ」
国に保護されて安全な生活ができるなら、それも一つの手だろう。
しかし、それが問題だった。
帝国は安全に保護すると言っているが、子供を生むために屋敷に入れ、外に出られないように閉じ込めてしまうようだ。
不自由なことはないが子供を生むための高価なアクセサリーという位置付けだな。
精神的におかしくなってしまう人も少なくないらしい。
それほど子どもを生むのも大変だし、王族の世継ぎ問題があるのだろう。
今後もバレないように生活することにしよう。
「じゃあ、また来るよ!」
オーナーは肉を買いに来たわけでもなく、俺と会話するためだけに来たのだろう。
俺は渡人なのに人に恵まれているな。
「俺も休憩したから帰るね」
リッパーに告げると少し悲しそうな顔をしていた。
「また来いよ」
以前は無表情だったリッパーも、俺がいなくなってからは少し明るくなった気がする。
肉屋に買い物に来る人も増えて、リッパーが自分で接客しているからな。
まぁ、相変わらず無口で接客しているのは変わらないけどね。
俺も必死にリハビリとして歩き始めた。
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【あとがき】
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