真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ

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第二章

8-2

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そして翌日の放課後、俺と藤原は風紀室のドアの前にいた。

「うー、嫌だ。怖い」
「んな事言っても俺はただの付添いだからな。自分で入れよ」

俺の後ろに立って服の裾を握りしめる藤原を不憫に思わない事も無いが俺にはどうしようも無い事だ。

「お前は何でそんな肝が据わってるんだよ……」
「まぁ他人事だからな」

ジトっと恨みがましい目で見られたがまぁ俺の情なんてそんなモンだ。
だいたい風紀だってそう怖い組織じゃあ無いだろう。報道よりマシだよ、多分。もしもアレより嫌な組織があったら嫌だ。

そんなこんなで廊下でうだうだしていると不意にドアの方から音がした。

「入るならさっさと入れっ!!」

スパン! とキレの良い音と共に少し高めの怒鳴り声。
目の前には身長は小さめの黒髪の吊り目。

なかなかの美少年であるが俺はその人物に覚えがあった。

「あ、風紀委員長こんにちは」

正真正銘、この学校の風紀委員長様である。

「……藤原か?」
「いえ、藤原はこっちです。俺は付添いです」

怪訝そうにする風紀委員長に俺の背後に隠れていた藤原をズイっと差出す。
恐らく聞いていたアイドル系美少年と俺が似ても似つかないからだろう。

「連れなんか要るのか……?」
「基本的に一人で行動はしない方が良い状況ですのでソコは風紀委員としてご了承ください」

まぁそんな理由が妥当だろう。
実際は藤原が怖気づいているだけなのだけれど……。

「まぁ良い。入れ」
「行くぞ、藤原」
「う……はい」

藤原を連れて中に入るとソファに座らされた。

「はい、お茶で良かった?」
「あ、ありがとうございます」

正面に風紀委員長が座り、それよりも少し身長が高いぐらいの人が俺と藤原、そして風紀委員長の前に緑茶を置いて風紀委員長の横に座った。

「一応、自己紹介をしておく。俺は風紀委員長で3年A組、園田凛ソノダリンだ。で、こいつが……」
「同じく3年A組、風紀副委員長の田口昴タグチスバルです」

仏頂面の美少年の後に続き穏和な笑顔の青年が自己紹介する。
横を見ると藤原は緊張でガチガチで何も言えない様なので軽く脇腹を小突いてやる。もしかしたら俺は連れてこられて正解だったのかもしれない。

何かもう藤原が哀れだ。

「1年A組、藤原雪華です」
「同じく1年A組、倉科誠です」

軽く頭を下げると慌てて藤原も頭を下げた。

「今回は親衛隊の制裁について話をするために呼び出したのだが……。藤原は何故そんなに怯えているんだ? 対人恐怖症になっているとは聞いていないのだが」
「風紀委員会に呼び出しという事で、気付かぬうちに何かやらかしていて叱られるのを恐れているらしいです」

仕方なく横で解説すると風紀委員長は呆れた様に溜息を漏らし、副委員長は苦笑いをした。

「今日はお前を叱るために呼び出したワケじゃないから落ち着け」
「何なら茶菓子もだすよー、煎餅と羊羹どっちが好き?」
「い、いえ。そんな……お構いなく」

完全に委縮はしているが何とか話は出来そうである。

「まずは奴らのやり口について教えてもらいたい」
「あ、話し難い事もあるかもしれないから無理矢理言う必要はないからね。今後の対策にしたいから出来るだけ話を聞きたいけど辛いなら言わなくても……」
「いえ、大丈夫です」

本格的に俺は要らなさそうだ。
藤原が話している間、俺は何となく風紀委員長や副委員長、風紀委員室を観察していた。
こんな所なかなか来ることは無いだろうから少し物珍しい。

今、室内にいるのは俺と藤原、風紀委員長に副委員長だけで、他のメンバーはいなかった。恐らく、親衛隊から制裁を受けた藤原に話を聞くという事からの配慮だろう。
風紀委員長はやはり小柄で美少年だ。しかし、田中の様な感じでは無くとても日本人的な美しさを持っている。

黒髪は鴉の濡れ羽色というべき艶をもっているし吊り気味の目はびっしりと睫毛で縁取られている。厳格な性格を表すように厳しい表情をしている。

次に、副委員長。こちらは最初からずっと柔和な笑みを浮かべている。
中肉中背と言うか、割と平均的な体系だがさすが役職持ちというべきか顔立ちは整っている。
委員長が鞭なら副委員長はアメなのだろうか……。
髪はやはり黒いけれど隣の委員長と比べると柔らかい色合いに見える。

今回のようなケアが必要そうな事案はこの人一人で受け持った方が良いのではないのだろうか……。
大きなお世話ではあると思うが。

まぁ藤原はほとんどダメージを受けてはいない様なので委員長もあたっているのかもしれないけれど。

本当に藤原がダメージを受けていないかは俺にも分からないけれど、だとしてもソレを癒すのは俺の役目では無いだろう。

手持無沙汰に室内を見回してみるも特に面白そうなものは無かった。
机の数は5つだからあと3人程風紀委員はいるのかもしれない。まぁ、クラスに1人は風紀委員はいるから風紀委員の中でも組織を動かす役職を持っている人物がだけれど。

珍しがってキョロキョロしているうちに藤原のインタビューは終わっていた。

「……こんな所か。今までの中でも状況は良くない方だが、風紀から護衛を出す必要性はなさそうだな」

なるほど、必要なら風紀から人員を派遣してくれるのか。
普通の学校の風紀なんて持ち物検査や頭髪検査くらいしかしないが、この学校においては警察みたいな事もしてくれているのか。

「あ、はい。極力一人になるのは避けていますし、まだ喧嘩で負けた事も無いので大丈夫です」
「……」

風紀委員長に喧嘩とか言っちゃう藤原はそんな所が藤原であると思う。
しかし喧嘩が強いとか転入前は何をしていたのか……。まぁ俺には関係が無い事だけれど。
喧嘩とか不良とか俺からは遠い世界だし。

「まだ負けた事は無いかもしれないけど、油断はしないようにね。あと、喧嘩は極力避けること」

副委員長からお小言をいただいたが絶対とは言わない辺り現状が見えているのだろう。
暴力に理論は敵わないし、感情は理論には意味をなさない。

避けられない時は相応のものを返す必要はあるのだろう。

目には目を、歯には歯を……。
ハンムラビ法典とまではいかずとも自身を守る事は正義よりも大切だ。

「あ、倉科君だっけ、前期に藤原君の危機を救った子だよね。これからも万が一の事が起きないように気に掛けてあげてね」
「はい」

ふんわりと俺に笑いかける副委員長。

「(……俺の名前風紀委員にバレてるのか)」

まぁあの時やらかした自覚はあるけれど。
でも、俺自身は大したことしてねぇんだよなぁ。お面の力ですよ。

口が裂けてもそんな事は言えねぇけど。

「では、お暇させていただきま……」
「ただいま戻りました!!」

突然、バンッと乱暴な音を立ててドアが開いた。
少しびっくりしてそちらを見ればいつぞやの風紀委員がいた。



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