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第二章
12メッセージ
しおりを挟む部屋に着くと室内は真っ暗で電気は消されていた。
そういえば今の時間、藤原は何をしているのだろう。
藤原が生徒会の手伝いを始めてから会う時間は以前よりも減った。それでも同室だから他の人よりも一緒に過ごす時間は多いとは思うけれど。
クラスでは割とみんなと仲良くできてるし、生徒会ともうまくいっている。後は親衛隊との問題だけか。
「(アイツの親衛隊早くできないかなぁ……。そしたら生徒会の親衛隊も手出ししにくくなるんだけれど)」
あぁ、この時間は大体生徒会メンバーの夕食時か。もしかしたら藤原も一緒にいるのかもしれない。
もしくは田中や中島と一緒にいるのかも。一人でいる事がめっきり減ったから以前のような心配はもうしないけれど。
「……」
こんな事ばかり考えてるから風紀から声がかかってしまうのかもしれない。
俺はもう少し他人に興味を持たないようにした方がいいのか……。
ふと、ベッドに投げ出した携帯端末が光っているのが目に入った。
帰り道でバイブが鳴っていたかもしれない。何となく無視してしまったが。
まぁ緊急ならメールじゃなくて電話してくるだろう。
メッセージタイトルは「OZ」
差出人は知らないアドレス。
タイトルがコレならおそらくスパムとかそういうモノじゃないだろう。
そう思ってメールを開く。
それは丁寧なメール文だった。
『一年A組 クラス委員 倉科誠さま
こんばんは。
私は、OZのリーダー ドロシーです。
大変お忙しいところに、申し訳ございません。
この度は貴方が持っている私の面についてお話ししたいことがありメールをさせていただきました。
まず、狐面についてですが、そちらはまだ貴方にお持ちいただきたく存じます。
既にご存知の事とは思いますが、私たちは日々学内で起こる事件に暴力を以て対処していくことを主な活動としております。
このように乱暴な行いに賛同していただけるとは思えません。
しかし、暴力には暴力でしか対抗はできません。もし貴方が今までの様に人を助けたいと思うのなら、この面は貴方にとって有用なものとなります。
倉科さまに今一度、この学園の現状を考えて頂きたく思いこの文章を送らせて頂きました。
OZ リーダー ドロシー
×××@××.jp』
丁寧な所が逆に気持ち悪い。慇懃無礼というのか。
自分が間違っているとは欠片も思わず人にその価値観を押し付ける感じ……。
しかし、俺も似たような思想は持っている事を否定はできない。
暴力には暴力でしか対抗できない。
どんな正論も人の心を動かさなければ意味は無い。
正しいからと動く人間なんてなかなかいないだろう。その論だけにではなく、論じる人に感銘を受けて人の心は動くのだ。
それは論の送り手だけでなんとか出来るものではない。受け手や双方がいる環境、いろんな要因に影響される。そして、この学校の受け手や環境はこの環境が間違っているという論を受け入れる準備はできていないだろう。
だから、現状で被害者を助ける最も有効な手段は鉄拳制裁。それは分かる。
「(でもなぁ……)」
俺は返信のボタンを押して返信を書いた。
『OZ リーダー ドロシーさま
こんばんは。
メール拝読させて頂きました。
まず、狐面についてですが、こちらで持っていて欲しいというのはこの面を使う時が来るという事でしょうか?
貴方のおっしゃる通り、私は貴方方の行動を快くは思っておりません。
申し訳ありませんが、現在、あまり貴方方の行いに深入りをしたくありません。
もし貴方方が私をOZの関係者にしたいと思っているのでしたら諦めて下さい。
一年A組 学級委員 倉科誠
××××@××.ac.jp』
こんなモノか……。もともとOZとの縁を来るつもりで案山子と話をしたのだ。
俺には、裏切れない人がたくさんいる。
送信ボタンを押す前にもう一度、文章を見た。
一瞬、OZになれば風紀にもならずに今の行動を続けていけるとか考えてしまった自分がいやだ。
まず、OZが本当に自分を引き込みたがっているかもまだ分からない。ドロシーからのメールではそんな雰囲気が読み取れたがソレが真意なのかは不明だ。
ジン先輩はどういうつもりなんだろう……。
そういえば、最初に俺が顔出して人助けしちゃったのは先輩のせいなんだよなぁ……。
情報屋。
本当に、どんなつもりで俺にあの面を渡したのか。先輩とOZはどういう関係なのか。
謎は多い。
溜め息をついて、そのまま送信ボタンをおした。
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