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魔女の住む世界

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 彼女と共に部屋を出ると二人で入院棟へ向かった。

 そこにはさっき彼女を武器で八つ裂きにしていたおじいさん、おばあさんたちが何事もなかったかのように入院生活を送っていた。

「その子は彼氏かな」

 彼女におばあさんが声を掛けた。

「違いますよぉ~、お友達です」

 彼女は先ほどまで自身を攻撃していた相手に何事もなかったかのように返している。

「そうか、そうか。お前さんも彼女を離すんじゃないよ、わはははは」

 と人の話も聞かないといった風に去っていった。

「根茂さんはいつもああなの」

 彼女のちょっとどこか困ったような顔はどこにでもいる女の子だった。

「おい、さっきのボウズじゃねぇか、今日はデートか。なにもこんな死にぞこないのジジィとババァしかいねぇところでしなくても良いだろうに、ガハハハ」

 突然後ろから声をかけられたかと思うと先程ドアですれ違ったおじいさんだった。

「おめぇも選ばれたヤツか?でも、またなんで若いヤツなんだ」

 おじいさんの独り言に僕が反応出来ないでいると。

「年寄りから選ぶって取り決めじゃねぇか、あまりにもしんどいからって」

 先ほど僕の肩を叩いた、爺さんが頭を搔きながら困惑していた。

「錬さん、次は彼も参加するからよろしくね」

 と、彼女はそのおじいさんに向かって言う。

「おいおい、ホントかよ。良いのか若いの参加させて」

「彼は特別」

「そうかい、そうかい。お熱いね、まぁ任せとけ」

 そういうとおじいさんも去っていった。

「君にも次は参加して貰うつもりだから」

 そう彼女は僕に言った。

 僕が疑問符を浮かべていると、彼女はそのときにわかるよとだけ言ってそれ以上は答えてはくれなかった。
 
 僕らはそれからもう少しだけそこで暮らしてる老人たちと彼女を通して関わって、それから二人して帰った。

 道中僕らはなんでもないことを話しながら歩いた。

 好きな食べ物とか、最近よく見るテレビだったり、愛読してる雑誌だったり、はまってるコンビニスイーツだったり。

 そんなたわいもない会話をしてるうちに駅に着いた。

「じゃあね、また会いましょう」

 彼女は僕にそういうと、僕の右手を取って両手で握った。

 彼女の柔らかい手の感覚にちょっとドキッとしつつ、けど何も発することはできなかった。

 彼女が僕の手を開放する頃にはうしろに電車が来ていて。

 ぷしゅーっという音とともに僕の真後ろでドアが開いた。

「私は次の電車に乗るわ」

 そう彼女は僕に告げると、踵を返して歩いて行く。

 僕はその彼女の背中を見送りながら電車に乗った。
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