上 下
9 / 43

魔女と男

しおりを挟む
 結局僕は彼女と二人で駅へと帰る道すがらにおいて病院でのことを聞けずに別れることになってしまった。

 正直ものすごく気になって、彼女に聞くタイミングを見計らっていたけれど彼女の言動がただの女の子にしか感じられなかった。

 だからかどうしても切り出すことができず、そして『次』があると彼女の口から言われてもいたものだから、その次に期待して僕はただの女の子とおしゃべりをすることを選んだ。

 電車の中で病院でのことがちらついて気になってしょうがなかった、やっぱり聞くんだったと後悔しながら普段使わない気や出来事に疲れたのかウトウトとし始めた。


 カッ、カッ、カッ――


 音が僕へと少しずつ近づいてくる。

 電車の走る音の方がまだ大きく、確証はないが誰かが僕の方に歩いて来ている気がする。

 徐々に電車の走行音より、足音の方が大きくなる。

 その音が突然止むと僕の隣へ腰かけたのだろう衝撃が少し伝わってきた。

『少しは彼女のことが分かったかね』

 そう僕の隣で、おそらく僕に向かって言ったのだろう。

『君のおかげで、もしかしたら彼女の望みを叶えてあげられるかもしれない。僕には出来なかった望みを叶えることが』

 僕はその言葉を発する方へ、眠たい目を必死に見開いて見た。

 そこには真っ白な長髪を垂らした、西洋っぽさがある顔をした若いイケメンがいる。

 僕は必死に彼を見るが、それだけで言葉まではうまく出せなかった。

 僕を見るその青い瞳は、僕が見るなり大きな丸になる。

『二度目で私を見られるなんて、君はやっぱり才能があるんだね』

 そう優しく笑った。

『頼むよ、これはやっぱり君にしか頼めそうもない』

 そう穏やかな顔で僕に言うと、肩をポンッっと叩き立ち上がった。

 そのまま車両の連結部分へと向かって歩いて行く。

 今度は足音が遠ざかり、走行音の方が大きくなっていく。
 
 カッ、カッ、カッ――

 その音を聞いていると今度は本当に眠りに落ちてしまった。
 
 「――駅、――駅」

 はっ、と目が覚めると自宅への最寄り駅のひとつ前の駅だった。

 彼は彼女とどういう関係なのだろうか。

 それがただただ気になりながら、一駅分過ごして帰路についた。
しおりを挟む

処理中です...