異能力者の異世界冒険譚 〜能力は一人一つまでのはず…え?魔法使い?〜

空の小説マン

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序章 異能力者転生編

第28話 進軍

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オークとの戦いを終えた二階堂達の前に、とうとうオリエリンが姿を現した。

「私の可愛いアンデット軍団に、弱い奴はいらないわ。
 敵前逃亡なんて失態晒される前に、私が始末しておいて正解だったわね」

「お…お前…!」

巨大なアンデットと化したオークへ、オリエリンは後ろからトドメを刺した。
歯を食いしばる二階堂を他所に、ノアは怒りを激らせていた。

「つ、ついに姿を見せたわねっ!アンタがご主人様を殺して!死霊術網羅書を奪った!!
 今ここで全てに決着をつけてあげるわ!!」

「あら、中には知ってる顔もいるじゃない、屋敷が襲われても何も出来ずに逃げた吸血鬼さん?」

怒り狂ったノアが、宙に浮いたオリエリンの元へ飛びかかる。
しかしオリエリンは、さらに上空へ高度を上げ、光線魔法でノアを迎撃する。

「きゃああああ!!!」

ダメージを負ったノアは、悲鳴を上げながら地面に墜落した。

「っ!!ノアちゃん!!大丈夫!?」

「くっ!!アイツ!!空を飛ぶ能力者か!?光線は持ってる杖から撃っているみたいだが…」

二階堂がオリエリンを鋭く睨むと、彼女はため息を吐いて口を開く。

「ハァ、主戦力が三人もいなくなっちゃったし、今回は大人しく引き下がってあげようかしら…

 …なんて言うと思った?」

オリエリンは目をカッと開き、全アンデットの群れに命令を下した。

「防壁へのダメージは十分よ!!このまま全軍王都内部に侵攻しなさい!!
 休む間も与えず、絶え間なくアンデットを送り込んでやるわ!!」

彼女の声を合図に、アンデットの群れは王都の防壁へと、一目散に進軍した。

「あなた達残念だったわね、いずれにせよ王都は滅びる運命よ。
 アンデットで埋め尽くされた地獄の中で、永遠の苦痛を味わうがいいわ!!」

オリエリンは天高く空を飛び、戦場から離脱してしまった。

二階堂が拳を握りしめ、防壁を攻めるアンデットの群れに突撃しようとすると、
背後の地面から、震えた鈍い声が聞こえて来る。

『オ…オイラハ…』

「っ!!おい!オーク!!」

『ハハ…コウナッテ…トウゼンダ…オイラハ…
 キミノ…ナカマニ…ヒドイコトヲ…』

意識が途切れそうになるオークの手を掴み、二階堂は呼びかけた。

「お前の仇は絶対に討ってやる!!己の持つ魂すらも穢して利用した、
 あのオリエリンを必ず倒してやる!!だからオーク!むこうで待っていてくれ…!」

『ハ…ハハ…オイラヲ……オーク…ッテ…イッテクレル…ノ…カ…」

オークの瞳から光が消え、穢れたアンデットの魂が、天に浄化されていった。
彼の無念に打ち震える二階堂の拳から、不思議と力が滲みてくる。

異界の異能力者と元オークの間には、奇妙な友情が芽生えていた。

その場で佇む二階堂の元に、ノアの肩を担いだ鬼灯とエットが近づいてくる。

「アイツが目当てのオリエリンか」

「国の平和を守るためにも、彼女を止めなくちゃ」

鬼灯とエットが口を開くと、二階堂も応じて言葉を送った。

「ああ、奴は絶対に討たなきゃならない。
 全てに決着をつけるには、それしか方法はない」

するとノアの肩を担ぐ鬼灯が、攻め込んでくるアンデットの群れを見て、考えを閃いた。

「…なあ、アンデット達は、王都の防壁へ進軍して来てるよな。
 なら進んでくるアンデットの群れを辿れば、コイツらの本拠地に着けるんじゃねえか?」

「た、確かに!!攻め込んで来てる方向は一方からだけ!
 もし逆にこっちから出向くことが出来れば、根本からアンデットの進軍を止められるかもしれない!!」

希望を見出した三人の中心で、ノアが目を細めてアンデットの来る先を睨む。

「あ、あの方向は…私の住んでた屋敷のある方よ!!
 コイツらアンデットは、屋敷からここまで進軍してるんだわ!!」

「じゃあオリエリンはノアの屋敷を根城に、死霊術網羅書を使ってるってのか!
 よっしゃあ!!そうと分かったら早速突撃すんぜ!!二階堂!!」

「待て!!防壁に居るアンデット達を無視はできない!!ひとまず騎士団へ加勢しに行くぞ!」

二階堂がアンデットの群れへ視線を向けると、四人は勢いよく間合いを詰めた。
すると防壁のアンデット達を阻むように、突如氷の壁が聳え立ち、王都の防壁を防御する。

「治療してて遅くなった、今から私も加勢する」

ロスがアンデット達の進軍を抑えると、地面から立ち上がったアスファルトが、
斧を大きく振り回して、群れを一網打尽にする。

「けっ!!オラァまだまだやれるぞゴラァ!!」

二人が王都防衛に死力を尽くすと、アンデットの群れをかき分け、
武装の施された馬車が、勢いよく二階堂達の元に近づいてきた。
すると御者席からエドナが降りてきて、周辺を警戒しながら馬車の扉を開ける。

「エドナさん!?どうしたのこの馬車は!?これって王宮の戦車よね!?」

「言ったでしょうノアさん、王宮は勇者隊を全力で支援すると。
 …さあ、どうぞ外へお降り下さい」

戦車の中から姿を現したのは、真剣な眼差しをするベレア王女だった。

「向かうべき道を見定めたようですね、勇者隊の皆様。
 私も皆様が、アンデットと戦っているというのに、黙って王宮で見ているわけにはいきません。
 皆様お互い近づいて下さい、私の魔法で怪我を癒して差し上げます」

身を寄せ合った四人にベレアは回復魔法をかけると、受けた傷やダメージを全回復させた。

「私が皆様にして上げられる数少ない支援です。敵の本拠地に到達する術として、
 王宮の戦車を持っていって下さい。これで戦況が少しでも変わるならば幸いです」

「し、支援感謝するが、防壁のアンデット達がまだ…」

すると迫り来るアンデットの群れを見つめ、エドナは構えて口を開いた。

「ここは我々に任せておけ。騎士団の誇りにかけて、奴らは王都に入れさせん!」

アンデット達に立ち向かう勇猛な英傑達を背に、ベレアは二階堂達へ言葉を送った。

「私も貴方達共に、敵の本陣へ乗り込みます。
 王国の存続を影から見ているだけなど、私には出来ません」

「べ、ベレア!!ダメだよ!!君はここの…!」

焦るエットの肩を叩き、二階堂は優しくベレアに語る。

「王女様、あなたはこの国欠かせない人だ。
 アンデット達の群れへ立ち向かう勇敢な奴らと共に、王都を支えてあげてくれないか?」

二階堂の言葉を耳に入れ、説得されたベレアは、彼を強く信頼した。

まるでその言葉は、今回の騒動だけに限らず、勇者隊として自身らを信頼してほしいとの意味も
込められていたように聞こえたベレアは、二階堂達に王国の命運を託す気持ちになった。

「…分かりました、皆様の覚悟を、私は心に刻みます。
 どうかこの王都を、この王国を、よろしくお願いします!」

ベレア王女から、勇者隊としての誇りを託された二階堂達は、
戦車に乗り込んでアンデット達にゆっくり近づいた。

「いい?向かうは敵の本拠地、かつて私の居た屋敷よ!!」

「その中でオリエリンが死霊術網羅書を使ってやがる。
 思いを託してくれた人達のためにも、奴は絶対止めなきゃならねえ!!」

ノアは手綱を思い切り引き、アンデット達の来る先へ戦車を走らせた。
二階堂らの行手を阻むように、群れの中からアンデット達が飛びついてくる。

「エット!鬼灯!戦車の上に乗れ!遠距離からアンデットを迎撃するんだ!!」

二階堂の指示の元、二人は戦車の上に登り、すかさず攻撃を繰り出した。

「うぉおおおおお!!!!近寄んじゃねええ!!!」

鬼灯の火炎が近づいてくるアンデットを焼き払う。
すると彼女の背後から飛びかかるアンデットを、エットの鋭い矢が貫いた。

「周りのアンデットは僕達に任せて、ノアちゃんは屋敷まで戦車を走らせて!」

群れをなすアンデットを蹴散らしながら、四人を乗せた戦車は敵陣へと進軍した。
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