36 / 48
36
しおりを挟む
理々子が一組の教室へ駆けている頃、圭は教室ではなく依然トイレにこもったままだった。
(ヤベェ治まんねぇ……クソッ!大体エロすぎんだよ!あんなの反則だろっ)
本当に慰めたいそこは葛藤するまでもなく自分で触れようとは思わなかった。
男としての矜持、それに理々子だけと決めている。
じっとして治まるのであれば良かったが、そんな軽度なものであれば専用の抑制剤なんて存在しないだろう。
少しでも熱を発散させようと仕方なく前を構っていたわけだが、吐きすほどに理々子に触れられたい欲求が高まるばかりで悪循環に陥っていた。
助けを求めたい相手は今の自分にとって劇薬にしかならない。
発情のせいで感情が思うように生魚できず泣きそうになる。
気を緩めたら漏れそうになる声を必死に抑え再びそこへ手を伸ばそうとした時だった。
「東、お前いつからこんな“下品な匂い”振り撒くようになったわけ?」
(…………嘘だろ)
自分の事情を知ってなお理解を示してくれる相手が薬を持って来てくれる、なんて都合の良い期待をしていたわけではない。
それと同様こんな最悪な事態も想像していなかった。これは何の罰だろうかと思わずにおれない。
「仕方がないか、そりゃ隠したいよねこんな状況。でも何でだろうな?そこにいるのが東だって判っちゃうんだよ。あ、もしかして俺達“運命の番”だったりし、」
「お前じゃねぇっ!!」
「……へぇ?」
黙っているべきとわかっていても否定しないという選択肢はなかった。
個室にこもっているのがせめてもの救いか。しかし追い詰められていることに変わりはない。
声の位置からして朝桐はドアの前にいるのだろう。姿こそ見えないが、確実に朝桐も“正常”ではない。
個人差はあれどαはΩの発情時の匂いに惹かれるもの。
普段からαにしては静かなほうの朝桐だが、今の穏やかすぎる声は不気味でしかなかった。
「東さ、知ってるよね。俺さぁβ以上にΩってクソが付くほど嫌いなんだよ」
「…………」
「これは言ったことないから知らないだろうけど俺東に憧れてたんだよ。それがどうよ……お前どうしてくれんの?俺を騙して楽しかったかよ?」
勝手な期待の押し付け。
しかし理々子に出会う前の自分はαだと信じて疑わず誇りにすら思っていた。
朝桐とつるむようになった切っ掛けも、そういう共通思想があったからだ。
朝桐からしてみれば今の自分は立派な裏切り者でしかないのだろう。
発情状態で通常時より思考が回らないと言っても、こんな危機的状況になれば嫌でも冷静さを取り戻す。
(少し落ち着いた……でも無理だ、力入んねぇ……)
「ねぇ、さっきすぐ否定したね。もしかしなくても“運命の番”に会っちゃった?それで最近おかしかったとか?」
(クソッ既に勘付いてやがる……下手な誤魔化しは煽りにしかなんねぇな)
「無言ってことは正解なんだろ?同学じゃないとしたら一年か二年のα?東って授業終わったらすぐ帰っちゃうから全然気付かなかったよ。放課後は運命のお相手と猿みたいにヤッてんだ?気色悪いな……Ωって何で存在してんだろうな?マジで消えてくんないかなぁっ!!!」
「っ!?」
急変した朝桐の声と同時にドアがガチャガチャと激しい音を立てる。
普段であれば迎え撃つこともできただろうが、今はまるで力が入らない。
「開けろよ!どうせその体持て余してんだろ?俺が有効活用してやるからよ!!」
(クソッ嫌だ!理々子っ……理々子!!)
男である自分が男に犯されるかもしれないと怯えるなど屈辱以外の何物でもないがどうすることもできない。
ただ開くなと祈ることしかできなかった。
(ヤベェ治まんねぇ……クソッ!大体エロすぎんだよ!あんなの反則だろっ)
本当に慰めたいそこは葛藤するまでもなく自分で触れようとは思わなかった。
男としての矜持、それに理々子だけと決めている。
じっとして治まるのであれば良かったが、そんな軽度なものであれば専用の抑制剤なんて存在しないだろう。
少しでも熱を発散させようと仕方なく前を構っていたわけだが、吐きすほどに理々子に触れられたい欲求が高まるばかりで悪循環に陥っていた。
助けを求めたい相手は今の自分にとって劇薬にしかならない。
発情のせいで感情が思うように生魚できず泣きそうになる。
気を緩めたら漏れそうになる声を必死に抑え再びそこへ手を伸ばそうとした時だった。
「東、お前いつからこんな“下品な匂い”振り撒くようになったわけ?」
(…………嘘だろ)
自分の事情を知ってなお理解を示してくれる相手が薬を持って来てくれる、なんて都合の良い期待をしていたわけではない。
それと同様こんな最悪な事態も想像していなかった。これは何の罰だろうかと思わずにおれない。
「仕方がないか、そりゃ隠したいよねこんな状況。でも何でだろうな?そこにいるのが東だって判っちゃうんだよ。あ、もしかして俺達“運命の番”だったりし、」
「お前じゃねぇっ!!」
「……へぇ?」
黙っているべきとわかっていても否定しないという選択肢はなかった。
個室にこもっているのがせめてもの救いか。しかし追い詰められていることに変わりはない。
声の位置からして朝桐はドアの前にいるのだろう。姿こそ見えないが、確実に朝桐も“正常”ではない。
個人差はあれどαはΩの発情時の匂いに惹かれるもの。
普段からαにしては静かなほうの朝桐だが、今の穏やかすぎる声は不気味でしかなかった。
「東さ、知ってるよね。俺さぁβ以上にΩってクソが付くほど嫌いなんだよ」
「…………」
「これは言ったことないから知らないだろうけど俺東に憧れてたんだよ。それがどうよ……お前どうしてくれんの?俺を騙して楽しかったかよ?」
勝手な期待の押し付け。
しかし理々子に出会う前の自分はαだと信じて疑わず誇りにすら思っていた。
朝桐とつるむようになった切っ掛けも、そういう共通思想があったからだ。
朝桐からしてみれば今の自分は立派な裏切り者でしかないのだろう。
発情状態で通常時より思考が回らないと言っても、こんな危機的状況になれば嫌でも冷静さを取り戻す。
(少し落ち着いた……でも無理だ、力入んねぇ……)
「ねぇ、さっきすぐ否定したね。もしかしなくても“運命の番”に会っちゃった?それで最近おかしかったとか?」
(クソッ既に勘付いてやがる……下手な誤魔化しは煽りにしかなんねぇな)
「無言ってことは正解なんだろ?同学じゃないとしたら一年か二年のα?東って授業終わったらすぐ帰っちゃうから全然気付かなかったよ。放課後は運命のお相手と猿みたいにヤッてんだ?気色悪いな……Ωって何で存在してんだろうな?マジで消えてくんないかなぁっ!!!」
「っ!?」
急変した朝桐の声と同時にドアがガチャガチャと激しい音を立てる。
普段であれば迎え撃つこともできただろうが、今はまるで力が入らない。
「開けろよ!どうせその体持て余してんだろ?俺が有効活用してやるからよ!!」
(クソッ嫌だ!理々子っ……理々子!!)
男である自分が男に犯されるかもしれないと怯えるなど屈辱以外の何物でもないがどうすることもできない。
ただ開くなと祈ることしかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる