男とか女とか

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 自分は何もできずただ悶々と体を持て余している中、理々子は着々と地盤を固めていた。
周囲に悟られぬよう、そして理々子に気付かれないよう密かにずっと見ていた。
羽宮高等学校はα・βに限らずΩも富裕層が多い。
と言うより、わざわざαが集まる学校を選ぶ中流階級のΩはまずいないだろう。
ここに通うΩは家柄の関係で泊付けのため親に逆らえず嫌々という者が多い。
αは全員がもれなく名のある家の者だ。
そんな中、理々子だけが一般家庭のαということになる。
特にβの富裕層はそういったレッテルを気にする傾向にあり、一般家庭の者を見下す者が少なからずいる。
にも関わらず、理々子は今までが嘘のように圧倒的存在感をもって周囲に自分を知らしめ受け入れられていく。
学校というある種閉鎖的な環境で、かつαの話題ともなれば興味を示さない者など極少数。
つまり日に一回は理々子の話題が嫌でも耳に入る。

(クソっ……)

 屋上で理々子と約束を交わしてから一週間経っただろうか。
日が経つにつれ遠目で見るだけでは満たされなくなっていくことに嫌でも焦りを覚える。
約束では連絡のみで実際に会うのは卒業後まで控えようと理々子は言った。
かなり渋ったが、現状それが一番無難な策だと了承した。
というより、学校以外で会えば問題ないと思ったのだ。
少し考えればわかるだろう事でも理々子が近くにいると平常時の思考能力などないに等しい。
自分がαとして通すことができれば全て解決する話だが、理々子を前にして普段通りでいられるのは精々保って数分程度だろう。
ともなれば会うとするなら個室に限られるが、実家以外でとなれば両親の目が厳しくなる。
当然実家に理々子を招くなどできない。
理々子と番うと決めているからいずれ招く日が来るだろうが、自分がΩと判明してから両親は殊更過保護になっている。
そんな中、理々子を紹介していい方向に話が向くとは思えない。

(マジで卒業後……いや、社会人になるまで会えねぇんじゃ……)

 普通に婚姻を結ぶにしても大抵は金銭・社会的に独り立ちできている状況が好ましい。
まだ理々子という人間を深く理解するに至っていないが、それでも真面目であるということはこれまでの態度で嫌でもわかる。
そんな理々子が学生であるうちに婚姻を結ぶだろうか。
しかも自分に至っては大学進学は必須である。
今まで親の会社の後継として育てられてきたし、何より自分もそうなりたいと望んでいる。
少なくとも卒業後からも四年、我慢しないといけない。
それ以外にも色々とまだ問題はある。

(はぁ?無理だろっ、今でこれだぞ……)

 会えない時が育むのは愛もあるだろうが、それ以上に汚い欲が多い。
理々子と初めて会った時はもちろん、これまで顔を会わせた一時全てが色褪せることなく記憶に刻み込まれ昨日のことのように思い出せる。
その中でもやはり色濃く刻まれた屋上での記憶は、まるで体を蝕むように疼きを酷くさせる。
もう幾度となく思い出し一人寂しく欲を吐き出した。
それでも後孔はどうしても手を出せなかった。
一際疼くのは腹の奥で、そこは己では満たすことができないと本能が知っている。
一層酷くなるとは理解していても先程から握り締めていた携帯、一文だけが表示されたメール画面の送信ボタンを押さずにいれなかった。
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