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用がないとわかり、教室へ戻ろうと背を向けたらまたしても腕を掴まれ引き止められた。
匂いのせいか感情が制御できず振り払う手に力が入ってしまう。
肌がぶつかり思った以上に大きな音が鳴る。
さすがに悪く思い振り返ると東が片方の手を押さえていた。
血は出ていないものの手の甲を引っ掻いてしまったようだ。
「ってぇな」
「…………ごめん」
「許してほしいなら逃げんなよ」
ニヤリと笑う東にほとほと嫌気が差す。
こんなにも人に対して面倒だと思ったのは恐らく初めてだ。
もう東の機嫌を気にするのも疲れてしまった。もういいやと投げやりな気持ちだった。
「許さなくていいです。もう話しかけてこないでください」
「は?」
「どうせ昨日から私が気になってるんですよね?それ気のせいなんで」
「いや、気のせいなわけ、」
「気のせいなんですよ。本能だろうがなんだろうが私にとっては気のせいなんです」
「お前もやっぱりわかって、」
「君とどうこうなるつもりもないので近寄らないでください。君もそうしたほうが都合がいいでしょう?“αの”東君?」
「……っ!」
自分は何を言っているんだろうと他人事のように思う。これはきっと東の地雷だ。
でも口から次々と出てくる言葉は紛れもない本音であった。
「今後また同じように来られたら面倒なんで教えときますけど、私は後天性αです。昨日あんな風になってしまったのはたまたまでしょう。オススメはしないけど周りいる“お友達”に近寄れば同じようになると思いますよ」
「…………」
東の周りにはいつだってαが集っている。
これから東はその友人らに苦しまされることになるのかもしれない。
静かになった東もまたこれからのことを憂いているのだろうかと顔を見れば、目に涙をためておりギョッとした。
「何で……何でそんなこと言うんだよ」
「え、だって、本当のことでしょう……」
「お前だけじゃないの?なぁ、お前だけだよな?」
「な、何のこと……」
動揺している中、再び腕を掴まれ引き寄せられたかと思ったら両の二の腕を強く掴まれる。
こんな至近距離では当然匂いも一層濃くなり体が熱に犯され思うように力が入らない。
逃げようと身を捩っていると頬に何かが当たる。
ぽつぽつと止めどなく私の顔に落ちてくるそれは東の涙だった。
同年代の泣き顔なんて初めて見るもので、抵抗もやめ呆然と見入ってしまう。
だが、掠れる声で呟いた東の言葉に鈍器で頭を殴られたかのような衝撃に襲われた。
「お前は、俺の……“番”なんだろ?」
番、その言葉が頭の中で氾濫する。
混乱と東の発する匂いで朦朧とする頭では思考が上手く回らない。
否定したい。けど言葉が出てこないのは何故なのか。
私に向けられている東のその目は雄弁だった。肯定しろと言っていた。
「俺、お前がいい……理々子……」
普段の強気な東とは同一人物とは思えないほど、耳元で囁かれたその声は酷くか細いものだった。
匂いのせいか感情が制御できず振り払う手に力が入ってしまう。
肌がぶつかり思った以上に大きな音が鳴る。
さすがに悪く思い振り返ると東が片方の手を押さえていた。
血は出ていないものの手の甲を引っ掻いてしまったようだ。
「ってぇな」
「…………ごめん」
「許してほしいなら逃げんなよ」
ニヤリと笑う東にほとほと嫌気が差す。
こんなにも人に対して面倒だと思ったのは恐らく初めてだ。
もう東の機嫌を気にするのも疲れてしまった。もういいやと投げやりな気持ちだった。
「許さなくていいです。もう話しかけてこないでください」
「は?」
「どうせ昨日から私が気になってるんですよね?それ気のせいなんで」
「いや、気のせいなわけ、」
「気のせいなんですよ。本能だろうがなんだろうが私にとっては気のせいなんです」
「お前もやっぱりわかって、」
「君とどうこうなるつもりもないので近寄らないでください。君もそうしたほうが都合がいいでしょう?“αの”東君?」
「……っ!」
自分は何を言っているんだろうと他人事のように思う。これはきっと東の地雷だ。
でも口から次々と出てくる言葉は紛れもない本音であった。
「今後また同じように来られたら面倒なんで教えときますけど、私は後天性αです。昨日あんな風になってしまったのはたまたまでしょう。オススメはしないけど周りいる“お友達”に近寄れば同じようになると思いますよ」
「…………」
東の周りにはいつだってαが集っている。
これから東はその友人らに苦しまされることになるのかもしれない。
静かになった東もまたこれからのことを憂いているのだろうかと顔を見れば、目に涙をためておりギョッとした。
「何で……何でそんなこと言うんだよ」
「え、だって、本当のことでしょう……」
「お前だけじゃないの?なぁ、お前だけだよな?」
「な、何のこと……」
動揺している中、再び腕を掴まれ引き寄せられたかと思ったら両の二の腕を強く掴まれる。
こんな至近距離では当然匂いも一層濃くなり体が熱に犯され思うように力が入らない。
逃げようと身を捩っていると頬に何かが当たる。
ぽつぽつと止めどなく私の顔に落ちてくるそれは東の涙だった。
同年代の泣き顔なんて初めて見るもので、抵抗もやめ呆然と見入ってしまう。
だが、掠れる声で呟いた東の言葉に鈍器で頭を殴られたかのような衝撃に襲われた。
「お前は、俺の……“番”なんだろ?」
番、その言葉が頭の中で氾濫する。
混乱と東の発する匂いで朦朧とする頭では思考が上手く回らない。
否定したい。けど言葉が出てこないのは何故なのか。
私に向けられている東のその目は雄弁だった。肯定しろと言っていた。
「俺、お前がいい……理々子……」
普段の強気な東とは同一人物とは思えないほど、耳元で囁かれたその声は酷くか細いものだった。
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