男とか女とか

N

文字の大きさ
10 / 48

10

しおりを挟む
 用がないとわかり、教室へ戻ろうと背を向けたらまたしても腕を掴まれ引き止められた。
匂いのせいか感情が制御できず振り払う手に力が入ってしまう。
肌がぶつかり思った以上に大きな音が鳴る。
さすがに悪く思い振り返ると東が片方の手を押さえていた。
血は出ていないものの手の甲を引っ掻いてしまったようだ。

「ってぇな」
「…………ごめん」
「許してほしいなら逃げんなよ」

 ニヤリと笑う東にほとほと嫌気が差す。
こんなにも人に対して面倒だと思ったのは恐らく初めてだ。
もう東の機嫌を気にするのも疲れてしまった。もういいやと投げやりな気持ちだった。

「許さなくていいです。もう話しかけてこないでください」
「は?」
「どうせ昨日から私が気になってるんですよね?それ気のせいなんで」
「いや、気のせいなわけ、」
「気のせいなんですよ。本能だろうがなんだろうが私にとっては気のせいなんです」
「お前もやっぱりわかって、」
「君とどうこうなるつもりもないので近寄らないでください。君もそうしたほうが都合がいいでしょう?“αの”東君?」
「……っ!」

 自分は何を言っているんだろうと他人事のように思う。これはきっと東の地雷だ。
でも口から次々と出てくる言葉は紛れもない本音であった。

「今後また同じように来られたら面倒なんで教えときますけど、私は後天性αです。昨日あんな風になってしまったのはたまたまでしょう。オススメはしないけど周りいる“お友達”に近寄れば同じようになると思いますよ」
「…………」

 東の周りにはいつだってαが集っている。
これから東はその友人らに苦しまされることになるのかもしれない。
静かになった東もまたこれからのことを憂いているのだろうかと顔を見れば、目に涙をためておりギョッとした。

「何で……何でそんなこと言うんだよ」
「え、だって、本当のことでしょう……」
「お前だけじゃないの?なぁ、お前だけだよな?」
「な、何のこと……」

 動揺している中、再び腕を掴まれ引き寄せられたかと思ったら両の二の腕を強く掴まれる。
こんな至近距離では当然匂いも一層濃くなり体が熱に犯され思うように力が入らない。
逃げようと身を捩っていると頬に何かが当たる。
ぽつぽつと止めどなく私の顔に落ちてくるそれは東の涙だった。
同年代の泣き顔なんて初めて見るもので、抵抗もやめ呆然と見入ってしまう。
だが、掠れる声で呟いた東の言葉に鈍器で頭を殴られたかのような衝撃に襲われた。

「お前は、俺の……“つがい”なんだろ?」

 番、その言葉が頭の中で氾濫する。
混乱と東の発する匂いで朦朧とする頭では思考が上手く回らない。
否定したい。けど言葉が出てこないのは何故なのか。
私に向けられている東のその目は雄弁だった。肯定しろと言っていた。

「俺、お前がいい……理々子……」

 普段の強気な東とは同一人物とは思えないほど、耳元で囁かれたその声は酷くか細いものだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...