男とか女とか

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 東が恋する乙女。言い得て妙だと思ってしまった自分を殴りたい。

「ちょっと、その表現はヤメテ」
「聞いた感じだとそうとしか思えないんだけど?いくら本能とは言っても理性がぶっ飛んでたらそういう言葉は出てこないと思うけどなぁ」
「それは志帆の願望でしょう」
「バレましたか!」

 てへへとわざとらしく舌を出す志帆に怒る気も起きない。
むしろ涙を流す東を思い出す度、そんなふうに見えてきてしまい否定できなくなる。

「小学校の保体で習いはしたけどさ、実際αとΩの問題でβは蚊帳の外だよね」
「……蚊帳の外にいたかった」
「それで?実際どうなんですか?」
「…………」
「そんなに話したくないの?!」

 志帆が驚くほど顔に感情が出てしまったらしい。
別に話すことなど多くはない。ただ一つだけだ。
αとなった私も例に漏れずΩである東に発情した。
それだけのことであるが、私にとってはそれだけと済まされることではなかった。
話さずともこの症状は小学校の保体で習うのだから志帆もわかっているだろう。
それでも自分の口から東に発情しただなんて言いたくなかった。

「まぁそうだよね……どう説明しようが発情したってことなんだもんね」
(結局言っちゃうし)
「いや、理々子が発情とか全然想像できないし理々子くらいになるとΩのフェロモンも跳ね飛ばしちゃいそうだなって」
「志帆はいったい私を何だと思ってるの……」

 志帆の場合全く悪意がないぶん質が悪い。
それにもしそうであったならまだ良かったのにと思う。

 αとΩには“運命の番”という、これまた余計な本能的システムがある。
生きている間に出会える確率は当然ながらかなり低い。だから運命とも言われるのだろう。
αは運命の番以外のΩの匂いで発情することはあまりない。
し難いと言うだけで発情するαも稀にだがいる。
それに対しΩは視界に入れてなくとも、近くにαがいれば匂いを感じ取ることができてしまう。
ゆえに、Ωは番でなくともαの匂いにより発情する可能性が高いという難儀な生き物だ。
ただΩにとっても番とは特別なもので、番でないαに対する発情とは比べ物にならないという。
全てにおいて個人差はあるだろうがそれは微々たるもので、どのαとΩにも共通することに変わりはない。

「なっちゃったものはしょうがないしアレだよ、美味しい点を考えてこうよ!ほら、えこ贔屓って言われても結局αってだけで就職とか有利になるじゃん?」
「まぁ、それは思ったけど……そういうの考えられる余裕があったらの話でしょ」
「東君のことをスルーしちゃう理々子は想像しやすいけどね」
「…………」
「それができたらそんな悩んでないってことだね!わかったから睨まないで理々子さん!」

 こうも明け透けに言われるとその気楽な立場にいる志帆が恨めしくなってくる。
そんな私を不憫に思ったのか、志帆が思い切った提案をしてきた。

「そもそも二人きりってのがよくないと思うんだよね。だから次は私を挟んでお話をしよう!」
「それなら志帆に言付けるだけでよくない?」
「それだとつまんな……じゃなくて、こういうのは本人同士で決着つけるべきだしさ」
「……はぁ」

 結局は今の状況を楽しむ方向らしい志帆に怒りよりも脱力感が襲う。
志帆の言い分には同意せざるを得ないし、何よりその明るさに助けられているぶん言い返すこともしなかった。
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