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東にとうとうストレートな告白をかまされた翌日、最近習慣になりつつある早い時間に学校へと来ていた。
というのも、電話を切った後で自分も自覚してその勢いのままメールを送ってしまったためだ。
“直接伝えたい事があるから明日の早朝に学校で”と。
色気も何もないそんなメールを送信した後でやってしまったと思いはしたが、取り消す気にはならなかった。
ただ東と直接会いたい、その想いのほうが遥かに上回っていた。
東から一度だけ着信があったが、あの時は混乱極まれり何を口走るか不安だったため応じなかった。
直接会ったら会ったで何かしら暴走するかもしれないが、東に伝えようとしていることは電話やメールで済ませたくなかった。
これまでの自分が急速に本能に侵されている気はするが、やはりそれを不快とは思わない。
そんなことを含め、すでに狂っているのだとしても最低限の理性を保てているのならば構わないとすら思っている。
それに大部分が本能によるものだとしても、全てというわけではない。
私は確実に東に惹かれている。
(ヤバイ、落ち着かない、心臓、ヤバイ)
チラッと一組を覗いてみたが、東はまだ来ていなかった。
数分後にまた覗くとして、一先ずは自分の教室へ入り腰を落ち着ける。
しかし時間が経つにつれ心臓の音がバクバクと大きくなっていく。
早く来てほしいようなそうでないような。
案外緊張しているのか手が冷たい。
朝練をしている生徒の声を聞きながら数分、微かに足音が聞こえたような気がして教室からコッソリと顔を出す。
(あ、)
視線の先に求めてやまない相手がいた。
心臓はいよいよかと爆音を奏で始めたが、それは急速に萎んでいった。
(あれは……田中先生?)
一組の前にいたのは東だけではなかった。
一組の担任である田中先生と何やら話している。
東は面倒かつ不機嫌を隠しもせずにいたが、田中先生がふと体を近付けて何事かを囁くと顔色を変えた。
顔色を悪くした東は、歩き出した田中先生の後に大人しく続く。
そんな二人を呆然と眺め姿が見えなくなっても固まっていると、後ろから軽く肩を突かれ思わず飛び跳ねそうになった。
「うわっ、ごめん……そんな驚くとは思わなくて」
「……志帆か、おはよう。早いね」
「つい早く来ちゃって失敗したなと思ったけど理々子普通にいるから吃驚したよ。何か用事?」
「そのはず、だったんだけどね」
「あ、もしかして東君?田中先生に連れてかれちゃったね」
「うん」
「多分アレのことについてだよね」
「多分ね……」
恐らく担任である田中先生にも東がΩであることが伝えられたはずだ。
確かに一組を受け持つからには本人と色々と話しておきたいこともあるだろう。
そうは思うのだが、あの二人を見てから胸が変に騒いで落ち着かない。
モヤモヤとしたものを抱きながら隣を見ると、志帆もまた東達が消えた方を見ながら眉をひそめていた。
「私の見間違いかもなんだけどさ……何か田中先生嬉しそう、じゃなかった?」
「嬉しそう……」
東にばかり気を取られて田中先生の顔は全く見ていなかった。
志帆の言葉を受けてモヤモヤは嫌な予感へと形を変える。
「志帆、私ちょっと」
「うん。何かあったら呼んでよ」
「ありがと」
私の言わんとしていることがわかったのか、志帆は頷いて送り出す。
携帯を上着のポケットに突っ込み東達の消えた方向へ歩き出す。
足は自然と速度を上げていった。
というのも、電話を切った後で自分も自覚してその勢いのままメールを送ってしまったためだ。
“直接伝えたい事があるから明日の早朝に学校で”と。
色気も何もないそんなメールを送信した後でやってしまったと思いはしたが、取り消す気にはならなかった。
ただ東と直接会いたい、その想いのほうが遥かに上回っていた。
東から一度だけ着信があったが、あの時は混乱極まれり何を口走るか不安だったため応じなかった。
直接会ったら会ったで何かしら暴走するかもしれないが、東に伝えようとしていることは電話やメールで済ませたくなかった。
これまでの自分が急速に本能に侵されている気はするが、やはりそれを不快とは思わない。
そんなことを含め、すでに狂っているのだとしても最低限の理性を保てているのならば構わないとすら思っている。
それに大部分が本能によるものだとしても、全てというわけではない。
私は確実に東に惹かれている。
(ヤバイ、落ち着かない、心臓、ヤバイ)
チラッと一組を覗いてみたが、東はまだ来ていなかった。
数分後にまた覗くとして、一先ずは自分の教室へ入り腰を落ち着ける。
しかし時間が経つにつれ心臓の音がバクバクと大きくなっていく。
早く来てほしいようなそうでないような。
案外緊張しているのか手が冷たい。
朝練をしている生徒の声を聞きながら数分、微かに足音が聞こえたような気がして教室からコッソリと顔を出す。
(あ、)
視線の先に求めてやまない相手がいた。
心臓はいよいよかと爆音を奏で始めたが、それは急速に萎んでいった。
(あれは……田中先生?)
一組の前にいたのは東だけではなかった。
一組の担任である田中先生と何やら話している。
東は面倒かつ不機嫌を隠しもせずにいたが、田中先生がふと体を近付けて何事かを囁くと顔色を変えた。
顔色を悪くした東は、歩き出した田中先生の後に大人しく続く。
そんな二人を呆然と眺め姿が見えなくなっても固まっていると、後ろから軽く肩を突かれ思わず飛び跳ねそうになった。
「うわっ、ごめん……そんな驚くとは思わなくて」
「……志帆か、おはよう。早いね」
「つい早く来ちゃって失敗したなと思ったけど理々子普通にいるから吃驚したよ。何か用事?」
「そのはず、だったんだけどね」
「あ、もしかして東君?田中先生に連れてかれちゃったね」
「うん」
「多分アレのことについてだよね」
「多分ね……」
恐らく担任である田中先生にも東がΩであることが伝えられたはずだ。
確かに一組を受け持つからには本人と色々と話しておきたいこともあるだろう。
そうは思うのだが、あの二人を見てから胸が変に騒いで落ち着かない。
モヤモヤとしたものを抱きながら隣を見ると、志帆もまた東達が消えた方を見ながら眉をひそめていた。
「私の見間違いかもなんだけどさ……何か田中先生嬉しそう、じゃなかった?」
「嬉しそう……」
東にばかり気を取られて田中先生の顔は全く見ていなかった。
志帆の言葉を受けてモヤモヤは嫌な予感へと形を変える。
「志帆、私ちょっと」
「うん。何かあったら呼んでよ」
「ありがと」
私の言わんとしていることがわかったのか、志帆は頷いて送り出す。
携帯を上着のポケットに突っ込み東達の消えた方向へ歩き出す。
足は自然と速度を上げていった。
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