東証バトルロワイヤル

人妻あず。

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エピローグ

東証バトルロワイヤル

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「で、ナイトメアさんはどうするんだ?」
ソウマが闘技場の隅、瓦礫の影に立つ仮面の男に問いかけた。

「我……悲観を食らうのみ……悲観なき今に用はない……希望の前に一旦退こう……」
低く、重たい声。

「させねぇよっ!!」
ソウマがチャートブレードを構え、赤い光の軌跡を描く。
「ソウマ!」
あたしは悲鳴を上げた。

バシュッ!!

確かに斬った——はずだった。
だが、ローブと仮面だけが宙を舞い、男の姿は霧のように消えた。

「なっ……なんだこいつ……幻影か?」
ソウマが呆然と立ち尽くす。

「ナイトメアは……一応、国に認可された“合法カルト”みたいなもんだ。一人倒しても、また現れる」
レイが静かに言った。
「正面から敵に回すな。生き延びたいなら、な」

リン先生が肩をすくめて笑う。
「ま、細かいことは後で。首輪が外れたんだし、みんなで帰りましょう」

「……はい!」
「おう!」
「帰ろう」


数日後――。

あの嵐のような戦いが嘘みたいに、空はどこまでも澄んでいた。
町のホログラムニュースには、
《日経平均+1000円!》《景気は回復基調!》《本日S高続出!》
なんて浮かび上がってる。

「ねぇ、レイ。S高って……ストップ安の逆で、買えないくらい上がること?」
「そうだ。よく勉強したな、サキ」
レイの大きな手が、わしゃわしゃとあたしの頭を撫でる。

「も、もうっ! 犬じゃないんだから!」
「でも、可愛いぞ?」
「なっ……!」
思わず顔が真っ赤になる。

「サキ」
「なに?」

「……首輪、取れて本当に良かった」
レイが静かに笑った。

「……うん。ありがとう」

ほんの数秒、目が合う。
日経の風(トレンド)がゆっくり頬をなでていった。

「で、これからどうする?」
レイが少し真面目な顔で尋ねる。
「それで……サキはこの後どうするんだ?前も言ったようにインデックスの町に行ったり、戦わない選択肢もあるんだぞ」

あたしは小さく息を吸い、彼をまっすぐ見た。

「戦うよ」

「……また、危険な目に遭うかもしれないぞ」

「大丈夫。だって、レイが教えてくれるんでしょ? あたしが飽きるまで、戦い方をさ」

あたしはレイの手をぎゅっと握った。
驚いたように目を見開いた。

「まずは生き残れ。儲けるのはそれからだってね」

「ああ……」

ロイ町長があのとき決済してくれていたおかげで、
あたしの損益は――プラス50万。
彼はちゃんと利益を確定してくれていた。なぜそんなことをしたのかは今となっては知る由もない。

「借金返済と奨学金分! あたし、もっと稼ぐ!」
空に拳を突き上げた。

「できるさ。生きていれば、何度だってリトライできる」
レイはあたしの手を強く握り返す。

生きてさえいれば、心が折れなければ何度だってリトライできる。

まずは生き残れ。儲けるのは、それからだ。
あたしの東証バトルロワイヤルはまだ始まったばかり!

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