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Ⅰ 入学
優しい怪獣と意地悪な怪獣 4
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「なんか、全然入学式に参加してる感ないよね……」
わたしは体育館の屋根の上に設置してあるスマホサイズのモニターに視線をやりながら、呟いた。まあ、スマホサイズといっても、わたしたちにとってのスマホくらいのサイズだから、実際の大きさは一般生徒用の教室の壁くらいデカい画面なんだろうけど。
画面の中では校長先生が眠たくなりそうなテンポのスピーチを続けていた。なんかいろいろ喋ってるけど、スピーカーの音量が小さくてよく聞こえないし、退屈だった。朝早く起きたのもあって眠たくなってきたから、のんびりとあくびをしていてると、小鈴ちゃんに肩を叩かれて注意されてしまった。
「ちゃんと聞かないとダメでしょ!」
「全然聞こえないし、わたしたち参加する意味あるのかな?」
「せっかく学校側がわたしたちが普通の学校生活送れるようにみんなと一緒に合同で入学式してくれてるのに、文句言わないの」
「はーい」
小鈴ちゃんに注意されて、わたしはまた画面に向き合う。
「でも、変な感じだよね」
「何が?」
「今画面に映ってることが、この小さな箱の中で起きてるって」
画面越しだから、一見すると、どこか遠い場所でのできごとが映し出されていると錯覚するけれど、目の前にある段ボール箱くらいのサイズの体育館で、画面内のことが実際に起きているのだ。
「別に変じゃないでしょ。カメラ撮影して画面に映してるだけなんだし」
小鈴ちゃんは冷静だ。あまりわたしの言いたいこと伝わってないみたい。
「この体育館揺らしたら、画面の中も揺れるってことだよね?」
わたしは冗談半分で体育館を両手で持ってみようと思ったけれど、小鈴ちゃんがわたしの手首を持った。
「ほんとにやめなさいよ?」
「冗談だよ?」
「月乃には実際にやりそうな怖さがあるのよ」
「わたしのことなんだと思ってるのさ……」
真面目な小鈴ちゃんに免じてつまらない校長先生のスピーチを聞いてあげようかと思ったけれど、やっぱり退屈だった。うーん、と伸びをしてからまた画面に向き直った。
「だいたい、これ画面小さいし、何言ってるかわかんないし、つまんないよ」
「そんなことないでしょ。2人で見るんだし、これで充分よ」
「そうかなぁ……」
ジッと見ていると壇上に立っているのは校長先生から生徒会長に変わっていた。背のスラリと高い、髪の毛をポニーテールにした美人さんだった。
「ねえ、これ画面で見ないで直接見た方が楽しいんじゃない?」
「直接?」
「そう、直接」
「窓から覗くとか?」
そう言うと、小鈴ちゃんは窓から中を覗き出した。すると、画面の中でざわざわとした声や小さな悲鳴が聞こえてきていた。
「生徒の人たちと目あっちゃったわ」
小鈴ちゃんがため息をつく。
「窓からいきなり巨大な目だけ出てきたら、怖すぎるんじゃないかな……」
窓から溢れんばかりの巨大な瞳は、いくら可愛らしい小鈴ちゃんでも怖いと思う。特に、元々ドール人形みたいに目がぱっちりしていて大きな小鈴ちゃんだから尚更だと思う。
「だって、月乃が直接見るなんて言うから……」
「目だけ見たら怖いだけだから、体育館の天井をパカって開けて、上から2人で覗いた方がいいよ」
「そんなお弁当箱みたいなノリで言わないでよ……。てか、体育館の天井いっぱいに巨人の顔があるって怖すぎでしょ……」
「お弁当箱かぁ。確かに摘んで食べるのにはちょうど良い一口サイズかもしれないけど――」
その瞬間、スマホ画面から悲鳴が聞こえてきたから、わたしたちは会話を止めた。
「どうしたんだろうね」
「ねえ、もしかしてこの会話体育館の中にまでバッチリ聞こえてたんじゃないかしら……」
まるで遠くの映像を画面越しで流しているみたいに錯覚するけれど、実際は防音してるわけでもない目の前にある体育館で式が行われているわけだし、そりゃ聞こえるか……。おかげで、中からは次々と声が上がっていた。画面には壇上の生徒会長が怯えた目で天井の方を見つめている様子が写っている。
『食べるんだって』
『わたしたちのこと食べ物としてみてるのかしら』
『さっき校舎を踏み潰そうとしてた子だし、もしかして……』
『小さい方は優しそうだけど、大きい方はちょっとヤバい人なのかも』
あれ? わたし入学早々要注意人物になってない……?
「とりあえず、謝っときなさい! あんたこれからみんなから怖がられ続けちゃうわよ!」
小鈴ちゃんに促されて、わたしは体育館に向かって頭を下げる。
「えっと……。変なことを言って申し訳ございませんでした……。本当に食べる気はまったくありませんし、わたしには食人趣味はございませんから。えっと、わたしが好きなのは、マグロ丸々使った美味しいお寿司と――」
わたしがあたふたと見えない体育館の中の人に向かって謝罪をしていると、「春山ぁ!!」という大きな声がお尻の近くから聞こえてきた。
「また人騒がせなことしてるわね!」
萩原先生が苛立った声で叫んでいた。
「いやぁ……」とわたしたが曖昧に声を出す。
「とりあえず、入学式終わったら厳重注意するからね!」
入学早々担任の先生からも要注意人物扱いされてしまったみたい。これは困ったね、ほんと……。
わたしは体育館の屋根の上に設置してあるスマホサイズのモニターに視線をやりながら、呟いた。まあ、スマホサイズといっても、わたしたちにとってのスマホくらいのサイズだから、実際の大きさは一般生徒用の教室の壁くらいデカい画面なんだろうけど。
画面の中では校長先生が眠たくなりそうなテンポのスピーチを続けていた。なんかいろいろ喋ってるけど、スピーカーの音量が小さくてよく聞こえないし、退屈だった。朝早く起きたのもあって眠たくなってきたから、のんびりとあくびをしていてると、小鈴ちゃんに肩を叩かれて注意されてしまった。
「ちゃんと聞かないとダメでしょ!」
「全然聞こえないし、わたしたち参加する意味あるのかな?」
「せっかく学校側がわたしたちが普通の学校生活送れるようにみんなと一緒に合同で入学式してくれてるのに、文句言わないの」
「はーい」
小鈴ちゃんに注意されて、わたしはまた画面に向き合う。
「でも、変な感じだよね」
「何が?」
「今画面に映ってることが、この小さな箱の中で起きてるって」
画面越しだから、一見すると、どこか遠い場所でのできごとが映し出されていると錯覚するけれど、目の前にある段ボール箱くらいのサイズの体育館で、画面内のことが実際に起きているのだ。
「別に変じゃないでしょ。カメラ撮影して画面に映してるだけなんだし」
小鈴ちゃんは冷静だ。あまりわたしの言いたいこと伝わってないみたい。
「この体育館揺らしたら、画面の中も揺れるってことだよね?」
わたしは冗談半分で体育館を両手で持ってみようと思ったけれど、小鈴ちゃんがわたしの手首を持った。
「ほんとにやめなさいよ?」
「冗談だよ?」
「月乃には実際にやりそうな怖さがあるのよ」
「わたしのことなんだと思ってるのさ……」
真面目な小鈴ちゃんに免じてつまらない校長先生のスピーチを聞いてあげようかと思ったけれど、やっぱり退屈だった。うーん、と伸びをしてからまた画面に向き直った。
「だいたい、これ画面小さいし、何言ってるかわかんないし、つまんないよ」
「そんなことないでしょ。2人で見るんだし、これで充分よ」
「そうかなぁ……」
ジッと見ていると壇上に立っているのは校長先生から生徒会長に変わっていた。背のスラリと高い、髪の毛をポニーテールにした美人さんだった。
「ねえ、これ画面で見ないで直接見た方が楽しいんじゃない?」
「直接?」
「そう、直接」
「窓から覗くとか?」
そう言うと、小鈴ちゃんは窓から中を覗き出した。すると、画面の中でざわざわとした声や小さな悲鳴が聞こえてきていた。
「生徒の人たちと目あっちゃったわ」
小鈴ちゃんがため息をつく。
「窓からいきなり巨大な目だけ出てきたら、怖すぎるんじゃないかな……」
窓から溢れんばかりの巨大な瞳は、いくら可愛らしい小鈴ちゃんでも怖いと思う。特に、元々ドール人形みたいに目がぱっちりしていて大きな小鈴ちゃんだから尚更だと思う。
「だって、月乃が直接見るなんて言うから……」
「目だけ見たら怖いだけだから、体育館の天井をパカって開けて、上から2人で覗いた方がいいよ」
「そんなお弁当箱みたいなノリで言わないでよ……。てか、体育館の天井いっぱいに巨人の顔があるって怖すぎでしょ……」
「お弁当箱かぁ。確かに摘んで食べるのにはちょうど良い一口サイズかもしれないけど――」
その瞬間、スマホ画面から悲鳴が聞こえてきたから、わたしたちは会話を止めた。
「どうしたんだろうね」
「ねえ、もしかしてこの会話体育館の中にまでバッチリ聞こえてたんじゃないかしら……」
まるで遠くの映像を画面越しで流しているみたいに錯覚するけれど、実際は防音してるわけでもない目の前にある体育館で式が行われているわけだし、そりゃ聞こえるか……。おかげで、中からは次々と声が上がっていた。画面には壇上の生徒会長が怯えた目で天井の方を見つめている様子が写っている。
『食べるんだって』
『わたしたちのこと食べ物としてみてるのかしら』
『さっき校舎を踏み潰そうとしてた子だし、もしかして……』
『小さい方は優しそうだけど、大きい方はちょっとヤバい人なのかも』
あれ? わたし入学早々要注意人物になってない……?
「とりあえず、謝っときなさい! あんたこれからみんなから怖がられ続けちゃうわよ!」
小鈴ちゃんに促されて、わたしは体育館に向かって頭を下げる。
「えっと……。変なことを言って申し訳ございませんでした……。本当に食べる気はまったくありませんし、わたしには食人趣味はございませんから。えっと、わたしが好きなのは、マグロ丸々使った美味しいお寿司と――」
わたしがあたふたと見えない体育館の中の人に向かって謝罪をしていると、「春山ぁ!!」という大きな声がお尻の近くから聞こえてきた。
「また人騒がせなことしてるわね!」
萩原先生が苛立った声で叫んでいた。
「いやぁ……」とわたしたが曖昧に声を出す。
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